La Ermita の記録

メキシコ隠遁生活の私的記録と報告
 @ユカタン半島。

反面教師② チュクムなど

2023年08月04日 | 新築

メキシコでは、敷地境界いっぱいのところに建てた外壁そのものを塀がわりにすることがよくある。隣の土地側の表面は法的には仕上げる必要がなく、ブロックを積んだ状態か下地モルタルを塗った状態のままになる(見苦しい)。

おばさんの外壁のこちら側は相棒が手を入れた庭だったので仕上げまでしてくれるとのことで(ありがたい)、内外壁の仕上げが始まった頃、3色(黄色と青とネズミ色っぽいベージュのうちのどれがいいかと聞かれた。

 3色。完成後の写真。

一瞬、ペンキの色の話だと思ったんだが、マヤの素材でベージュのやつはプールにも使うという。

それで、あるご近所さんが以前プールを造るときにマヤのだなんだと話していたのを思い出した。あと、以前FBの売ります買いますで「マヤの仕上げ用モルタル」という投稿を見て、へぇいいじゃんと思ったのも思い出した。

 見たのと別だがこれみたいな広告。

柔らかい色といい「マヤの…」ってな点といい、印象がよかったのである。おばさんやるじゃんと思っていたら、そのうちにその「マヤの素材」が搬入された。普通のセメントより小さい袋に粉が入っていて、水と混ぜるという。が、施工されていくのを見てると、なんか違う。ベージュの色合いも微妙に違うし、考えてみれば昔見た広告にはどぎつい青とか黄色のオプションなんかなかった。

ちなみにその「マヤの…」という仕上げ材、チュクムという。左官工事で仕上げる。プールに使えて、漆喰のように呼吸をするので内装材としてもいいという。防水?でかつ湿度調整するってのが分かるような分からないような。いっぱいに吸うとそれ以上吸わないんで貯めとけるってことか?

とにかく、その正体はユカタンに生えてる木の樹液で、樹皮を煮出した汁とセメント(それも厳密にはユカタン半島産の原始的なセメント)を混ぜて使う。

  こんな木。

ってか、この系統のマメ科の木、めっちゃくちゃ多い。食べられるものも結構あるし、きれいな花が咲くのもある。そこいらにいろいろ生えてるんで、見ても違いが分からないと思う。(c) CICY

マヤの…とはいえ、今も南部に行くとあるマヤ人の家なんかでは使われていない。おそらく遺跡のどこか(何か)で見られるんじゃないかと思う。あるいは、ピラミッドとかはチュクムが使われていたために風化が遅くて遺っているから今我々が見ることができる…とか。スペイン人侵攻以降、建築材料としてどうやって生き残ってきたのか、残念ながら調べても資料がすぐには見つからない。

でもってそのチュクムが、今オシャレな現代建築で人気なのである。広告を見た6年くらい前はそうでもなかったが、今はプールから街中の家から何から何まで、ユカタンに家を建てるってな人たちに大人気なのである。こんな感

 プールに使うとこんな感じ。

水の色がなんともきれいなエメラルドグリーンになる。

 おばさんちのプール。

 一回水を張ったあとの状態

剥がれている。ご近所さんは絶賛してたんで、この時点で何か違う、これチュクムじゃないんじゃないか?と疑問が湧いた。ネットで調べたり、メリダにある本物のチュクムの生産&施工業者のところにも行ってみた。なんと、メリダに数社しかない。実はそのくらい希少だったのである。

結論を言うと、こういう流れ。本物のチュクムと似たような仕上げが売りの人工モルタルができて使い分けられるようになった。ガイジンの家とかで使われた本物の写真がネットに出て、素敵だと注目されて人気が上がるにつれ、ユカタン内外の建築士も知るようになった。ところが人工のものも特別なものヅラして売られるようになり、ネットの写真じゃ本物と区別つかない…というか、人工のをチュクムだと思って使う人が増えた。そうすると、オサレな家、オサレな仕上げとしてどんどん拡散され、チュクムとチュクム風の区別がつかなくなってきたのである。もちろんきちんと調べればわかるんだが、混同しているアホな建築士もいるし(ほらメキシコ人ってただでさえすぐ「わかった!わかった!」だし)、スペイン語がわからないガイジンも多いんで。

おばさんの建築士もそういう「ホントはわかってない」1人だったか、予算を言われて本物を除外したか、ルイス・バラガン風にする(ひとつ前の記事)ためには色が豊富な人工のほうがよかったか。

実際のところ、材料費だけだと平米単価は大して変わらない(ユカタンにしかないので、他の地域で使うと輸送費で結構いく)。一瞬、水と混ぜる人工のほうが施工がラクに思えるが、そうでもない。粉と液体を混ぜる、つまり普通のモルタルと同じなんで、下地の準備とか施工後の表面の均し方とか、逆に細かいことを気にしなくなるリスクがある。で、ちゃんとしないと、本物同様不具合が出る…と。後からわかったんだが、おばさんのプールもその辺をテキトーにした上、水を張るタイミングを誤った模様。どうせ人工ならどうにかしたれよと思うが、バケ学の話なんでしょうがないんでしょうか。

 プール脇の外壁。

業者んとこで見たのと仕上がりが全然違う。本物のチュクムは表面をきれいに均すと磁器みたいになる。つるっつる。硬いものを強くぶつけたりしたら別だが、そんな簡単に傷にならないし、普通のモルタルとはいろいろ違う点に気をつけて施工するんで、簡単に剥がれたりしない。

というわけで近い将来、本物のチュクムを使う予定なんだが、このブログでは後のお楽しみにとっておくw。

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 玄関前の地面を削っている。

砂利などを搬入してモルタルやコンクリを混ぜていたところ。数日前まではずいぶん盛り上がっていた。引越しの土曜日(前の記事参照)を過ぎて、ここんとこおばさんと作業員の両方が出入りしてわけわかんなくなってる。それに乗じておばさんが監督に泣きを入れ、予算がなくて削ったはずの外構で作業させられている。セメント混じりの硬い地面をツルハシを振るって崩し、「掘ったんだけど使わないことになった貯水槽」跡の穴に入れていた。追加工事費をもらってるのかどうか知らないが、なんともかわいそう。。。

 



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