La Ermita の記録

メキシコ隠遁生活の私的記録と報告
 @ユカタン半島。

終わらせた工事 ②

2024年06月30日 | 新築

続きまして、彼らが帰ったときの状態についても、記録しておく。仕上げ段階の品質と引き渡しのための清掃について。前の記事に書いたように、「もうやらんでいい、ラッキー」と帰っていったんで、彼らにとっても何らかの「作業を終えていない状況」ではあるが、いつまでやらせておいても大した違いはないだろうと思われる。

 

 ゴミ拾い。

この写真は21日のもので、親方に言われて1人の青年が工事瓦礫と自分たちのゴミを片付けていた。終わった後はもちろん、日本人なら「まだ全然きれいになってないだろ!」というレベルであった。屋内も同様。

 リビング。

 廊下。

  寝室。

という感じで、使った材料の残り入っていた袋や、足場にしたブロックや、どの工程で使ったのかも不明な木片が散らばっている。

 床タイルのモルタル。

工事中に飛び散ったモルタルやコンクリのセメントがタイルにこびりついて固まっている。

 ゴミの残ったキッチン。

 埃だらけのガスコンロ。

 タイルを切った粉がついたカウンター。

 高さが揃ってない蛇口。

キッチンカウンターの下。将来的にシャワーの水圧を上げたかったらポンプをかますための蛇口。見えないところなんで、思いっきりテキトーに付けている。

 いらないものは置きっ放しの脱衣場。

ペットボトルに入っているのは、型枠作業をしていた頃に拾っていた使用済みの釘で、すでに錆び始めている。こういうのは消耗品なんでしょうがないが、新品の余りは持って帰っていた。

 ウェスがそのままの玄関。

 トイレになぜかブロック。

 

…というわけで、この状態で引っ越した。もう一度書くが、彼らにとって時間切れはあまり関係ない。まあこれよりは少しマシかもしれないが、日本人が期待する竣工引き渡しには程遠いのは確実である。

海辺の家のときは、Lさんが「いい家建ててやる!」と張り切っていたので、彼なりにきれいな新築の家を引き渡してくれた。まだドア枠屋がいるのに掃除部隊のおばさんが来たりして「一回作業すればいいってもんじゃなくて、きれいにして引き渡すための掃除なんだが…」と思ったりしたが、マヤ人とは全然違う。Lさんがしてたことは、メキシコ人と日本人の感覚の違いはあっても、フツーに普通の家を建てる土建屋の普通の仕事だったのだ。

どうしてこんなに汚すのか、どうしてこんな品質の仕上げなのかと、最近ずっと考えていた。どうして汚すのかというと、食べた後の皮や骨など、別にその辺に投げてあっても構わない生活をしているからである。放し飼いの犬が食べるか、土の肥やしになる。思うに、現代マヤ人の文化を「自然と共生している」などと称えるメリダ人はあまり意味わかってなくて、「緑や野生動物を大切にしながら暮らしている」程度の認識しかない。わたしもそうだった。実際は、基本的にゴミは出ないか出てもその辺に投げていい生活。

そこへプラスチックやコカコーラやブロック造の家など近代的なものが入り込んできたが、投げ捨てる文化は変わらないのである。「しつけがなってない、教育レベルが低い」と言うメキシコ人は多いが、親がどうとか学校がどうとかいう話ではないと思う。

ちょっと話がずれるが、日本では貝塚が発見されたじゃないですか。メキシコの何とか文明以前の「ヒトが住んでいた証拠」ってな話を読んでても、貝塚という言葉は使われていない。「貝殻を放置した跡」と書いてある。まとめて棄てたのでなく、その辺にポイっと捨ててたんじゃなかろうか。

話戻ってどうしてこんな品質の仕上げなのかというと、マヤの家やブロックを積んだだけの未完成の家に住んで、細かいところなんか気にしたことないからである。この暑さでは何かを整えるためにちまちま作業するなんてことは考えられない。厳しい自然の中でできるようにしかならない環境、遠く離れた半島という地理的条件で、何かを外へ売って儲けるには大変な苦労をする。苦労するのはやめて、自分たちさえよければ今あるものでいいという考え方。

ユカタン半島のジャングルでずっと自分たちの暮らしを続けてきて、スペイン人に侵略されて独立後も奴隷扱いされてきた数百年の歴史のせいか分からないが、マヤ人には「不便だ、改良しよう!」とかいう感覚がない。もちろん個人差はあるんで、人によってはメリダやカンクンへ出て行くが、平均像、一般的にという話です。が、アメリカの「一旗上げるぞ」文化や、最近の日本の「何でも改良、より便利に」文化は基本的にない。虐げられた時間が長すぎて(さらに焚書などで過去を抹殺され)、「いいから放っておいてくれ、自分たちは自分たちのやり方でしかできません、やりませんから」的な感覚がどんどん強まったんじゃないかと思う。社会学?とかの専門家じゃないんで分からないけど、工事に関係ないことも含めて、半年暮らしてみて、そう感じることは結構多い。

 

・・・話が飛びましたが、そういうわけでまたしても「引越!片付けさえすれば快適!」とは程遠い、やらなければならないことてんこ盛りの新居生活が始まった。メリダから海辺の家に引っ越したときより、やることが多い分、大変じゃなかろうか。



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