私たちにとって難しいことの一つ、人に譲るということ。どうしてできないんでしょうね。もちろん損得勘定もあるだろうな。自己顕示欲もあります。人に負けるのも嫌だ、というのもあるかもしれない。
なかなか、私たちは自分を抑えるということができないらしいのです。
何事にも入りたたぬさましたるぞよき。よき人は、知りたることとて、さのみ知り顔にやは言ふ。
何事についても、深く立ち入って知っているふりをしないでいるのが、よいものである。教養のある、立派な人は、よく知っていることであっても、そうむやみに知ったかぶって言うであろうか。
私はなかなか人とつきあうことが少なくて、人というのはあれこれ思いのたけを聞いてもらいたいものなのだ、と理解しています。だから、聞きかじりであろうが、ついつい生半可な知識を振りかざしてしまう(自分規準でものを見るのは私の悪いクセですけど)。
片田舎よりさし出でたる人こそ、よろづの道に心得たるよしのさしいらへはすれ。
これに反して、片田舎から都に出てきたばかりの人は、あらゆる方面に精通している様子の返答をするものである。
何だか兼好さん、少しイジワルな感じがするけど、どうなんだろう。まあ、私みたいな知ったかぶり、お調子者、いっちょかみは、「田舎臭い」というのか、「うるさい」というのか、「わずらわしい」というのか。ああ、センス良く黙っていることって、なかなか難しい。そんなおしゃれな人になりたいです。私は、調子に乗ってるか、たいていはボンヤリしたマヌケ面かのどちらか。ものすごくオンオフの落差があります。
センス良く黙っている。ポイントはしっかり押さえておく。そんなのできないよ。それより、ゆったりした関係で、じっと黙ってても責められないし、意見する時は聞いてくれる、そういう空間を作ってくれないの? そういう仲間がいないと無理ですね。
されば、世に恥づかしき方もあれど、自らもいみじと思へる気色、かたくななり。
それゆえ、聞いているこちらが非常に恥ずかしさを感じることもあるけれど、その本人が自分でもえらいと思っている様子は、見苦しいものである。
自分でも私は「いみじ(すごいんだ)」だと思っている本人の姿は、「かたくな(何だか素直じゃない、意固地だ、心が開かれていない感じ)」という風に見えるということだそうです。
だから、
よくわきまへたる道には、必ず、口重く、問はぬ限りは言はぬこそいみじけれ。〈79段〉
よくよく事情を知りぬいている方面のことについては、必ず、物の言い方を慎重にして、人が尋ねない限りは発言しないでいるのが立派なのである。
身の処し方って、なかなか難しいです。ついついやりすぎてしまったり、じっと自分らしさを出せなかったり、適当な加減というのが見つけられない。適当なバランス、ほどよい感じ(中庸)を見つけるのは簡単ではないみたいです。
☆ 古文単語の勉強です! 次のことばの意味は?
1・入りたつ 2・心得たるよし
1・入りたつ 2・心得たるよし
3・さしいらへ 4・恥づかし
5・いみじ 6・かたくな
[意味] ア・すばらしい イ・応答、返事
ウ・精通する エ・分かったぶり
オ・見苦しい カ・こちらが恥ずかしくなる
☆ 損得勘定ではなく、「口重く、問はぬ限りは言はぬ」人の方がステキだ、という価値観の問題でした。「田舎者(かたくなな人)」とは、住む場所のことではなく、心の問題なのだ、ということでした。まさにその通り、中枢にいても、「知らない」「関係ない」「責任はない」「支払いなどしない」と自己の利益を必死に守ろうと「かたくな」な人はいます。どうしようもできないけど、困ったなあ、とんでもないなあと思うばかりです。なのに、また彼らは凱旋して「バンザイ」を叫ぶつもりでしょう。薬はないですね。
☆ 損得勘定ではなく、「口重く、問はぬ限りは言はぬ」人の方がステキだ、という価値観の問題でした。「田舎者(かたくなな人)」とは、住む場所のことではなく、心の問題なのだ、ということでした。まさにその通り、中枢にいても、「知らない」「関係ない」「責任はない」「支払いなどしない」と自己の利益を必死に守ろうと「かたくな」な人はいます。どうしようもできないけど、困ったなあ、とんでもないなあと思うばかりです。なのに、また彼らは凱旋して「バンザイ」を叫ぶつもりでしょう。薬はないですね。
☆ [ことばの意味の答え]
1・ウ 2・エ 3・イ 4・カ 5・ア 6・オ