鉄橋の写真を撮るためだけに、鳥取に泊まり、朝一番で駅に降り立ちました。
雨は止んで、風は少々、時折青空も見えたりしました。でも、日本海側の冬って、もっと厳しいはずです。これはボクが与えてもらった天の恵みというべきか。
この時、ダウン着てたかな? 違うぶ厚い服を着てた気がするけど、どんな服だっのか、記憶にありません。自分はどうだってよかったのです。とにかく、鉄橋と街の雰囲気を撮れればそれでよかった。
ボクって、写真家? いえ、ただの、つまらないオッサンですけど、カメラもポンコツですけど、何でもかんでも、闇雲に撮るのが好きなだけで、特にめざしているものはなくて、ただ風景を撮りたいだけです。それが何の意味があるのかなんて、考えていません。おもしろいものが撮れればいい。なかなかそんなの撮れないけど!
町も歩いてみました。でも、取りつく島がなくて、落ち着くところもなくて、もちろんコンビニもなくて、道路は駆け抜けていくクルマが過ぎていくだけです。クルマは本当に人が乗っているのか、それさえ定かではありません。人間の姿はどこにもないのです。
どんなにあこがれの鉄橋でも、同じところで何十枚も撮れるわけではないから、動き回らなきゃいけないし、港を抜けて、半島の方にずっとつながっている道があったから、それはどんどん坂をのぼっていくみたいなんだけど、橋が違う角度で見えるから、いいんじゃないのと、歩いてみました。
海は茫漠としています。水面は分かります。空も何となく明るい。半島はどこまでつづいているのか。こちらはクルマは来なくて、幹線道路ではないようです。
海が広がって見えたら、もう橋は視界から消えていました。
鉄橋も見えない。クルマも走らない。坂道は続いている。海からの風は、それほどではないけれど、そんなに優しいものではない。足元では、ずっと波はくだけています。それは、見ていても飽きないものではあります。
いろんな表情を見せている。
押し寄せ、くだける。行き場もないから、波も引いていくから、一度フラットになってみる。でも、ムックリ、何ものかがいるみたいにして、波がよみがえり、下からも湧きあがり、波を呼ぶ、そうすると、また押し寄せる。
そんなことが繰り返されています、休みなく。
ボクは、何をしに来たんでしたっけ。お正月、家族とも一緒にいないで、どうして知らない土地の、海に向かう半島への道でボンヤリしているんです?
何だか、海に魅入られそうな気配がしました。
何かヤバイ、ではないな。とにかく、ここから引き返さなくちゃ! とは思ったのです。少し怖くなった。全く変な気持ちはないけれど、淋しいのは確かで、街へ戻らなくてはと思いました。
波は同じようで、同じでなくて、何度も寄せては砕けてを繰り返していました。
もう、海はいいかな。鉄橋を見なくちゃ。街を見なくちゃ。と、スゴスゴと引き返したんです。
1 半島へ道は坂道 冬の海
2 冬の海 魅入られそうな波また波
3 冬の海 北風真っすぐ押し寄せる
こちらは、2022年の夏、鉄橋あと公園の上から餘部の町を撮りました。みんな真っ黒な瓦でした。知りませんでした。石州瓦?