賢治さんと保阪嘉内(ほさかかない)さんとが友だちだというのは、いつごろ知ったのだろう。知らない間に自然と知りました。
その二人の書簡を集めた展示を、去年の夏、山梨文学館というところで見てきました。図録も買ったので、今朝も少し広げてみてみました。
賢治さんのこと、知ったつもりでいたけれど、亡くなったのは九月の二十一日で、父の命日のすぐそばでした。そうするとすぐに、賢治さんと父とが何か関係があるような気がしてしまうけれど、それは単なる偶然で、何もつながりはありません。
私は父の命日の度に、父の姿を思い描いて、こうして今自分がいるのをありがたく思わねばならないし、ぜひそうしようと思っています。
でも、賢治さんが亡くなった日と父の命日が近いからといって、何も関係はないのです。そんなのはわかる。でも、何かつながりがあってうれしい感じがします。つまらない私のこじつけです。
同じようなことで、アメリカに1995年ころに行き、ドジャースで活躍していた野茂英雄さんとありました。
「よくやるなあ」とは思っていましたが、そんなに思い入れはありませんでした。むしろそれよりも、野茂さんがアメリカに行ってから、折角の衛星放送のメジャーの放送が、すべてドジャーズシフトになってしまって、他の球団が見られなくなって、がっかりしたものでした。
それがある時、野茂さんの誕生日が自分と同じと知り、急に親近感がわいて、少しだけ彼を応援したくなったのは、本当にいいかげんな私らしいことで、もう他の球団はどうでもいいから、野茂君にがんばってもらおうとか思ったようです。
うちの奥さん、彼女は、映画監督の小津安二郎さんと誕生日が一緒です。彼女と小津監督に何のつながりもないけれど、小津監督に突然の親しみがわいたのは確かで、これまたいいかげんな私らしい。
そうこうして、私たちは、ささやかなきっかけをもとにして、人に対してつながりを感じ、気にするようになります。
うちの奥さんがちっともおもしろくないというNHKの朝ドラの「わろてんか」も、確かにおもしろくない感じだけど、私は、徳永エリさんが出ていると、ドキッとするのです。
これまた、父が入院していたころ、父のお見舞いに行き、母がしばらく席を外していて、父はお話をするのも面倒だから、横になっていたようで、私はそのそばでテレビを見ていました。
NHKの地方局がドラマを作る時があって、別府を舞台にした大分発のドラマに徳永エリさんは出ていました。堀北真希ちゃんの朝ドラで初めて見た徳永エリさんでしたが、大分局の作ったドラマでは、髪は茶髪で、所在なげで、とりあえず一生懸命にやっている感じでした。
ですから、全くドラマを見ない私ですけど、ひまだったので、どういう内容だか忘れたけれど、その時は必死になって見ていました。
突然、父が起きだして、何か言うのですが、「お父さん、ボクは今テレビ見たいんだけど」とは言わないで、「どうしたの?」と訊きました。
父は、母がいないのを確認したのか、そのまままた寝込んでしまいます。
今思うと、もっと父にあれこれ話しかけたらいいのに、私は家族に話をするというのをしていません。
この徳永エリさんのことだって、愛する奥さんにも言っていません。言っても仕方のないことだから言わないのか、ひそかに徳永エリさんを応援しているのがばれたら困るのか(そういうことはないんですけど……)、たぶん、めんどくさいから話さないだけかな……。
というわけで、そんなに好きというわけではないけれど、何となく懐かしいやら、頑張ってほしいやらで、今朝、テレビの「わろてんか」でエリさんを見て、自分の中では何だかホッとしたところがありました。
それもこれも、みんなデタラメなこじつけと思い上がりです。
それでも私たちは、それを頼りに生きていくことでしょう。それが私たちの暮らしのアクセントやら、とっかかりにはなるような気がします。
賢治さんが好きで、エリさんは応援している。小津監督は三重県にとって大事な人だけど、最近はあまり個人的には見ていない。野茂くんは独自の活動をしているけれど、あまり知らない。
さて私は? ドライブに行きたかったけれど、もうこんな時間になるのに、グダグタしている。二日酔いではないけれど、頭はボサボサで、とんでもない状況です。
ああ、今この時間も、北朝鮮の木造船は日本海をさまよっていますか。どうしたらいいんだろう。海は広いし、たくさんの恵みを与えてくれるけれど、人と人とを遠ざけてしまう厳しい存在ではあります。
それでも、私たちはまた今日も、明日も生きていかなくては!
たくさんの海や山を乗り越えて、それは簡単にはできないし、ひとりでは無理なこともいっぱいあるから、みんなの力で、海や山を乗り越えられたらと思います。暴走してはいけなくて、のろのろとちっとも進まないような感じたけれど、少しでも前に進まなくては!
権力者の一存に負けてはならない。権力者に対抗するには、みんなの連帯が必要です。
そんなのは何の役にも立たない、かもしれないけれど、人のつながりを使って生きていく方法を考えたいです。私にはプランはないけど、意気込みだけはあります。
以上、「こじつけと思い上がり」でした。