彼はK原Yえちゃんが好きだったそうです。淡白なつくりの顔の彼だから、コッテリした顔の女の子が好きだったようです。
同級生のボクが、「キミは女性の趣味が悪いよ! もっとキミに合う女の子は他にいるだろう。たとえば、イワサキヒロミちゃんとか、サクラダジュンコちゃんとか、お姉さんたちでもいいんじゃないの?」
とか言ってあげたらよかったんだけど、彼は趣味を変えなかった。
そりゃ、いろんなタイプの女の子が好きでもいいのです。でも、和風であっさりしていて、鼻だけがとんがっているというのか、わし鼻になっている、やけに鼻が主張している彼は、どこか洋風テイストの女の子が好きだったようです。Yえちゃんが洋風というわけでもないですけど……。
何を書いているかというと、またも帰りのクルマでラジオを聞いていて、「春なのに、お別れですか……」というセンチメンタルな、演歌なのか、フォークなのか、歌謡曲なのか、よくわからないナツメロを耳にしたからでした。
そして、同級生のHくんの趣味の悪さを思い出したんでした。でも、それは人の趣味なんだから、いろんな人がそれぞれに誰かを好きになるから世の中はうまくいっているわけであって、たくさんの人が1人の人を好きになったら、世の中はパニックになってしまうわけだから、人それぞれでいいんだけれど、どういうわけだか、彼の好みは許せなかった。
たぶん、Hくんとボクは、よく似ているとか、何かの拍子で言われることとかあったから、私は全く彼なんか問題にしていないし、彼だって私なんかを「だれだそいつは」と思うはずなんだけど、私のまわりの人たちは、Hくんと私を同じように見る時があって、とにかく私は彼を意識するところがあったんでしょう。
Hくんもボクも、二人ともチンチクリンの小男です。少しだけ小太り。足も短い。手足も短い。頭は私の方がうすいかもしれない。昔はそんなに変わらない坊ちゃん刈りだったかな。
他には共通点は? 長男、弟の方がデカイ、弟の方があれこれできる、くらいかな。
あまり共通点はないんだけど、パッとしないところが似ていたのかもしれない。
だから、ボクはHくんのことを意識していて、女の子の趣味は、最悪のYえちゃんはやめてくれ! と、ついつい願っていたのです。
ボクの方が彼よりも先に結婚して、彼はかなり遅れて、大柄のYえちゃんによく似たインテリの女の子と結婚をした。
その事実を知って、Hくんは本当に、自分ちの血統が嫌で(?)、自分ちとは違う雰囲気の女の子と結婚したかったんだなと思いました。
まあ、そこまで自分の意志を貫いたんならいいかと、心のどこかで納得していたりしました。どういうわけか、彼の結婚相手にはあれこれ文句がいいたい気分であったみたい。
そして、彼の結婚生活も四半世紀続いたんですね。たいしたもんだ。祝福してあげなくちゃ。
さて、人の結婚生活を心配する前に、自分ちの夫婦関係もちゃんとしなくちゃ。でも、もうすぐ旅立ってしまうしな。家族を置いて……。
80年代、石野真子さん、松田聖子ちゃん、小泉今日子ちゃん、まだカラオケも普及していないけど、勝手に宴会では歌ってましたね、私は。私のアイドル好きもHくんと変わらなかったのかもしれない。彼はたまたまYえちゃんだったんだ。