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ちゃんとした歌詞も知らないのに、何だか知ったような気になっていたのは、NHKの「みんなの歌」で取り上げられたからでしょうか(1973)。
それとも、どこかで聞くチャンスがあったのかどうか? たぶん、ないから、とにかくテレビで学習したんでしょう。テンポがいいのは、それなりの作曲家が作ったからだし、30番まであるというのは、それなりの作詞家が作ったからでした。
荻昌弘さんの本から、ところどころ抜き書きしながら、チャッキリ節のことを書いてみます。そういえば、大阪の音曲漫才でチッャキリ娘という芸人さんグループがありましたね。あれは、「チャッキリむすめが、とびだーしーた」というフレーズだけが「チャッキリ節」をなぞっていて、あとは特に曲へのオマージュみたいなのはなかったかな。
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静岡県の静岡市と清水市を結ぶ鉄道がありました。清水市は静岡市と合併したので、静岡市内中心部から、三保の松原とか、海側の観光地へ行く時、たとえば、草薙球場とか、県立美術館とか、ガンダムの公園みたいなところとか、そういうところに行こうと思うと、静岡鉄道に乗らなくちゃダメなんだと思います。
ガンダムなら、東海道線の方が近いんでしょうか? いい加減なことを書いてるけど、とにかく、東海道線ではすぐそばまで行けないところがあるみたいです。
登呂遺跡は、バスしか行けないのかな。ずっと昔に登呂遺跡も行ったような記憶はありますが、写真を撮ってないし、行ったかどうかもわからないですね。仕事だったかな? とにかく、静岡鉄道(しずてつ)です。
1927年(S2)、静岡市近郊に開園した狐ヶ崎遊園地(後の狐ヶ崎ヤングランド 1993年閉園)のコマーシャルソングを作るために、当時の静岡電気鉄道が当時の作詞の大家の北原白秋さんに依頼したということでした。
奮発して、偉い人に声をかけたそうです。清水の舞台から飛び降りる気分でお願いしたんでしょう。
当初、「一地方の詩をつくるヒマなぞないよ」とダダをこねていた白秋は、やっと承諾して静岡に招かれてみると、大名のようなもてなされ方であることに気づいた。すっかり好い気分になった詩人は、連日のように会社の接待で呑みまわり、宿も自分の気に入った料亭に移し、遊郭にも足をのばして呑み続けたうえ、昼間は、ハイヤー(高級タクシー?)に酒や菓子を積み込ませ、芸者連れで気の向くままドライブに出かけた。
そんな話もあるもんなんですね。そういうことができる人がいいものを作れるのかもしれないけど、私にはできない遊びです。
この豪遊は、さすがのスポンサー、静岡鉄道社内にも、若干の〝批判〟をうんだらしいことが、「ちゃっきりぶし民謡碑建設委員会」発行の小冊子にも記されている。が、ともあれ、そのようなある夕べ、白秋が二丁目遊郭「宝莱楼」で盃を傾けているとき、田の面から湧き上るような蛙の啼き声に、土地の老妓がつと立って障子をあけ、「きゃあるがなくんで雨ずらよ」と空を見上げて独語した。
さあ、有名なフレーズが出てきましたよ。静岡と山梨では、今でも語尾につける「ズラ(だよ)」が生きているのかどうか、少し不安だけど、確かに昔は生き生きとこの言葉は使われていたようです。
生の「……ずら」って、聞きたくなりますね。だったら、東海道線に乗るしかないのか。新幹線では聞けないですよね。愛知の豊橋あたりからずっとチャンスはあるはずなんだけど、今は聴きに行けないな。
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さあ、どうなるんでしょう?
突然、白秋は、盃をおろし、宿から鞄をもってこさせ、やがて届いた原稿用紙に、人が変わったようにペンを走らせた。「ちゃっきりぶし」三十章の歌詞は、このなかから後日、白秋が整理したもので……とあるのが、この小冊子の記述である。
その他のいくつかの関係者の話が微妙に違っていて、いつの間にか伝説になってしまったということでした。
でも、インスピレーションというか、歌詞が降りてくるのは、こういう時なんでしょうね。それまでの飲酒と遊興と女遊びは無駄ではなくて、すべて歌につながっていたということでした。
おもしろいなあと思って、メモしてみました。
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