「こころ」なんて、気軽にタイトルにしてしまったけれど、確かにあるのは知ってるんだけど、「こころ」がどんな風に動くのか、「こころ」と体はどんな関係で動いていくのか、いい年のオッサンなのに、ちっともつかめない。ましてや他人であったり、異性であったり、とにかく自分以外の人の「こころ」なんてつかめやしない。
でも、私たちは、人の「こころ」を求めてたりする。自分ひとりではイヤだし、誰かと共感したいといつも思っている。音楽を聞き、ドラマを見て、誰かにお気に入りをオススメして、誰かの琴線に触れることを期待している。
ネットの世界なんて、とてつもなく共感を求めているフィールドだろう。なかなか共感は簡単にはできないけど、「なんかいいな」と思えたら、とても幸せだ。
先日、愛知県の尾張一宮市の三岸節子美術館に行ってみた。節子さんの作品を見たかったから、暑いのに行ってみたけれど、思いつきで出かけても、簡単に全貌はわからなくて、折角だから収蔵している作品の図録を買ってみた。千四百円だったし、自分にも買えるくらいだった。
節子さんは、これから研究していきたい。
特別展の「安藤正子」さんという人は、若い作家で、陶芸やら、細密画やら、あれこれとチャレンジしている人のようであった。
水彩でいくつか、女の子たちの姿を一瞬に描き上げていて(一瞬ではないと思うけれど)、写真OKということであったので、気に入った作品を撮らせてもらった。
細密画や陶芸作品は撮らなかった。これら水彩画が愛らしかった。
タイトルは、ちゃんとメモすればよかったのだが、わからない。
「さようなら」「ここにいる!!」「ポンポン」「待っている」「ヨーヨー」「エマちゃん」「もも味」「アノサ」……
どれかなのだと思われる。でも、もうわからない。
でも、小さな女の子たちの「こころ」を、鈍感な私にポンと見せてくれた。
だから、どうなるものでもないけれど、とても貴重な、とても秘密に満ちた、大事な瞬間だったはず。本人たちは、ありふれたことだから、もう憶えていないかもしれないが、それを描きとめた安藤正子さんの絵は、もう永遠に続く。そして、それらを見ることができたものは、改めて瞬間ごとの大切さを思い知らされるのだった。