年末ですので、庭仕事もしなきゃいけないのに、NHK-BSの「映像の世紀」を見てしまった。いつもなら、妻に「そんなの見ないで(戦争ものは味気ないから)」と言われるところが、今回は愛がテーマだったから、見せてくれるかなとそのまま見ていました。
作戦は成功して、全部見ることができた。年末なんだから、好きなことをさせてもらえた。みんな忙しいですもんね。そういう時なのに、ヘソマガリでナマケモノの私は、グダグダとテレビを見ていました。
冒頭は、60年代アメリカで、白人男性と黒人女性の結婚が認められたという話が取り上げられていました。
戦後の日本で、あれだけたくさんの日本人女性を連れ去ったアメリカの兵士たちは、それから20年経っても、国内では人種をまたぐ結婚は許さない、ということだったそうです。まあ、日本においての行動は、旅先での蛮行であり、国内に連れてこなければOKということだったのかもしれない。
アメリカにおいても、60年代まで黒人差別がはっきりと残っていたようでした。
それから50年以上経過してやっと、いろんな愛が新たに認められつつあり、LGBTなどもそれぞれを認めていこうという現在につながっているようです。
愛って、何だろうなあ。それがなければ生きていけないし、そんなつまらないことに私たちはいのちをかけて頑張ったりするわけですが、何だか不思議です。
イングリッド・バーグマン、グレース・ケリー、エルトン・ジョンなど、有名な人たちの愛を取り上げていましたが、私が耐えられなかったのは、ゲッペルスさんとマグダさんという、ナチス・ドイツの中枢にいたご夫婦の話でした。
ゲッペルスさんは、職人さんの息子さんで、小さい時の病気か何かで足がお悪いようだし、ドイツの人からすると小柄な男の人でした。
彼がどんな風にして、権力をつかむようになるのか、表に出なくなったヒトラーの代わりを務めるくらいに、大きな存在になっていくわけですから、そこに運命のいろいろなことがあったのだと思われます。
改めて振り返ってみると、ヒトラーだけが大きな存在としてあるけれど、親衛隊の大将のルドルフ・ヘス、彼はイギリスに亡命して1987年まで生きたとか、砂漠のキツネとされ、名将ともいわれたエルヴィン・ロンメル、彼は軍人としてのキャリアを積み重ねてのし上がってきた人でしたが、英米の大戦車軍団に敗走せざるを得ず、最後はヒトラー暗殺の容疑を掛けられ、毒殺を受け入れたということですし、ナチス内部には、それはもういろんな人たちがいたようです。
私が興味を持たなかっただけでしたが、宣伝省というプロパガンダを担当したのが、小男のゲッペルスだったそうです。宣伝を任されるくらいだから、人々を煽ったり、抑えたり、いろいろ駆け引きのできる人だったのかもしれません。
プロパガンダは、ナチスの大事な部分ではあるので、わりとヒトラーの身近な存在として、おそばに仕えていたそうです。そして、そういう男を見込んで、ヒトラーのそばに行きたい女のマグダという人が現れます。
バツイチの女性だったそうで、彼女の元夫は、これまたナチスに近づいたおかげで大儲けをしたそうですけど、どれもこれも、うたかた(バブリー!)みたいなものでした。
マグダさんは、ヒトラーさんが好きだった(そうです)。でも、ヒトラーさんは女を近づける気配はない。だったら、いつもそばにいたいからと、そばにいる男のゲッペルスさんと結婚して、二人の間には何人もの子どもたちが生まれていました。
マグダさんは、ゲッペルスさんと夫婦の関係ではあった。そこに愛があったのか、当事者でない私たちにはわかりません。番組では、マグダさんはヒトラーさんを愛していたということになっていました。ゲッペルスさんとの結婚は、彼女のヒトラー愛を実現するための方便であったみたいに語られます。
とりあえず、マグダさんのしあわせな時間がありました。けれども、ナチス・ドイツの崩壊とともにしあわせは崩れていき、逃亡することも可能であったにもかかわらず、マグダさんの命により娘さんたち全員のいのちは絶たれたということでした。
ご丁寧に番組でも、連合軍の兵士たちがマグダさんたちを並べている姿が映されていました。ああ、なんというむごい運命と虚しい映像であることか! 近代ではなくて、日本の戦国時代の落城での全員の死みたいで、信じられなかった。
娘さんたちの人生なんて考えなくて、ただヒトラーへの愛を貫いた女という扱いになっていたけれど、今思うと、本当にそんなことがあったのか、まだ信じられない感じです。そして、夫のゲッペルスさんも同じころには亡くなっていますけど、どうしてそんな破滅に向かっていくのか、後の人間として私は耐えられなかったのです。
たぶん、今もどこかで、破滅に向かっているところはあるような気がする。後の人の目からしてみると、それを避ける方法があったのではないの? と、思うけれど、たぶん当事者にはそれは考えられないことで、そのまま運命の示すとおりに、全員で破滅を選んでいったことでしょう。
人間って、そういうことをしてしまう生き物だということ、忘れずに記憶していきたいと思いました。すぐに忘れてしまうけれど、転がっている時には、そこでは止まれない生き物であるみたいです。どんどん転がってしまうらしいのです。