甘い生活 since2013

俳句や短歌などを書きます! 詩が書けたらいいんですけど……。

写真や絵などを貼り付けて、二次元の旅をしています。

お早よう 1959 松竹 カラー

2023年12月21日 21時09分35秒 | だいたい映画、ときどきテレビ

 BSで「お早よう」という映画を見ました! 主役は佐田啓二さんで、ヒロインは久我美子さんでした。けれども、コメディなので、二人が恋愛関係になるというところまではいかなくて、三人の中学生の男の子が主役のようでした。というか、群像劇というんでしょうか。

 私は、この映画を、どこかのオールナイトで見たような気もするのですが、何も憶えていないし、初めて見たようなものでした。どんなすごい映画を見たって、私の目は何もつかめてないのです。

 とはいうものの、出ている人たちは何度も何度も見ている人たちでした。あまりになじみがありすぎて、この人たちがドラマをしているなんて、何だか物語に入り込めないくらい、なじみのある人たちでした。
(ということは、若い人には、誰が誰やらまるでつかめなかったでしようね)

 久我美子さんは、笠智衆さんと三宅邦子さんご夫婦の家に居候しています。三宅さんの妹さんということでした。物語の中に出て来る人たちは、わりと淡々と日時用生活を送っていきます。劇的な事件は何も起こらない。
(だから、今の若い人たちが見たら、盛り上がりのない、何が言いたいのかわからない映画ということになるはずです。その通りなんだけど……)

 私は、そんな映画の中で何を見つけたというんでしょうか?



 杉村春子さんと田中春雄さんが夫婦で、姑として助産婦(産婆さん)をしているお婆さんがいて、ここにも中学生がいる。

 長岡輝子さんと東野英二郎さんのご夫婦は、東野さんが定年間際で、就職に困っている。再就職先として見つけたのが電気屋さんの外交で、その仕事始めに笠智衆さんは東野さんからテレビを購入する、そういう結末に至るまでの物語です。

 そう、この映画で大きなカギを握っているのは、テレビでした。郊外の新興住宅地で、ベビーブームの中で生まれた子どもたち、この子らは、テレビが見たくてしようがなくて、近所では大泉滉さんの家にしかなくて、ここの少し派手なお仕事をしている雰囲気の奥さんに迎えられて、近所の中学生たちが集まり、相撲中継を見ているようでした。彼らとしては、自分の家でテレビを見るという大きな夢がありました。

 けれども、大人たちには、その子供の夢をかなえたくても、簡単に手が出せない、ものすごくハードルの高い買い物であったのです。それに、テレビがどうして必要なのか、そこまで必要性を感じていなかったようです。

 だから、家族は、夕食が終われば、思い思いの時間を過ごすことになりました。雑誌を見たり、お茶を飲んだり、ぼんやりしたり、たまに近所の行きつけの店でお酒を飲んでみたり、そういう何ものにも縛られない、ゆったりとした時間があったようです。

 でも、笠さんの中学生は、とうとうテレビ欲しさにお父さんにまで反抗し、ここで叱らなくてはと判断した笠さんは、彼の手をとらえたり、「どうしてききわけがないのか」と教えたり、家の事情を伝えるしかありませんでした。

 叱るにしても、殴ったり、大声を出したり、子どもを否定したり、そんなことはしなくて、とても紳士的に叱っていた。こんな時代に、こんな叱り方ができてたなんて、なんてすごい家庭なんだろう、と私は、笠さんの父親としての態度に感心してしまいました。私なら、つい手を出してたかもしれない。

 子どもたちは、自分たちの要望が、家の存在に関わる大きな問題提起ではあるものの、主張を貫くために無言ストライキ、半分家出、夕方の失踪などをして、ここで家庭教師をしてあげていた佐田啓二さんが活躍して、子どもたちを駅前で見つけて(駅前で街頭テレビを見ていたということでした)、家に帰し、笠さんちの騒動は落ち着く、しかも東野さんの再就職先からナショナルのテレビを購入し、みんな落ち着くところに落ち着く、そんな映画でした。



 何か見つけた?

 私は、郊外の新興住宅地とはいえ、人々がとても密接につながってた時代のひとこまを見せてもらった気がしました。これらはたぶん、今は失われつつあります。あるのかもしれないけど、とても希薄になっている。

 それを再現しろと言われても、人は命令されてやるものではないから、自然とお互いが協力し合い、時にはいがみ合い、近所の余計なうわさ話を流し、トラブルも起きて、騒動しながら生きていく、そういうコミュニティをできれば作って、簡単にはできないから、装置としてそんなのが存在する住宅みたいなのを考えて、都市部の中に展開していく、そういうのを考えて欲しいな、なんて思ったのでした。


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