報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“戦う社長の物語” 「アメイジング・グレイス」

2018-02-23 19:04:36 | アンドロイドマスターシリーズ
[1月7日10:00.天候:晴 埼玉県さいたま市大宮区]

 アリス:「あんまり無理しちゃダメよ?あなたは、じー様の形見なんだから」
 シンディ:「はい」

 シンディのバッテリー交換をするアリス。
 エミリー大損傷という情報にショックを受けたシンディは、バッテリー1つを焼いてしまった。

 アリス:「エミリーは……ちょっと分からないね。後期型ボディは、あの平賀教授が造ったわけだから、あんまり期待はできないかも……」
 シンディ:「そんな……!」
 アリス:「前期型のエミリーは南里博士が造ったからいいけどね」
 シンディ:「南里博士の……設計図通りに作ったと聞いていますが……」
 アリス:「どうだかねぇ……」

[同日同時刻 天候:晴 宮城県仙台市青葉区国分町]

 平賀:「何だろう?どこかで自分の悪口言われてるような……?」

 ザックザックと雪山を掘る敷島。
 その後ろを付いて行く平賀。

 平賀:「敷島さん、もうやめましょうよ!不毛ですって!」
 敷島:「エミリー!いたら返事してくれー!!」
 平賀:「いや、だから!シャットダウンされてるから無理ですって!」

 ズズズ……。

 平賀:「!?」

 何か変な音がした。
 雪の音だろう。

 平賀:(何だろう?)

 尚、雪崩でホテルの入口が塞がれてしまったが、そこはまた敷島が掘って出口は確保していた。
 敷島はそこから分岐して、エミリーがいたと思われる箇所まで掘り進めているのである。

 平賀:「敷島さん、陸上自衛隊員も真っ青の行軍ぶりですよ?」
 敷島:「こう見えても私は、『不死身の敷島』ですから」
 平賀:「これが週刊少年ジャンプの漫画だったら、今頃あなたの戦闘力数値はインフレを起こしているところでしょうね」
 敷島:「それは平賀先生、あなたも同じですよ」
 平賀:「そんなことは……」

 ドドドド……!

 平賀:「!?」

 また何か音がした。

 平賀:「敷島さん、やっぱりその……引き返しましょう。何かおかしいですよ」
 敷島:「あとちょっと……あとちょっとなんです。あとちょっとで、エミリーがいた所……」
 平賀:「あれ、ここ電波入る。……ってか、ナツから着信か。……どうした?……ああ、エミリーな。ちょっと事故があって、そっちで受信できないだろう?……いや、だから、雪が融けるまで待って……。ん?雪が融けるまで!?」

 その時、平賀は思い出した。
 今日は昨夜の大雪が嘘みたいにカラッと晴れている。
 太陽光に雪が反射して、それはもう美しいほどだ。

 平賀:「!……敷島さん、やっぱ危険だ!雪が融け始めてる!このままだと埋まりますよ!!」
 敷島:「待ってください!もうちょっと!」

 ズドドドン!ドドーン!!と大きな鈍い音を立てて、水気を含んだ雪の壁が崩れ始める。
 

 平賀:「やっぱり!早く逃げましょう!!」
 敷島:「ま、待ちなさい!今、黒いロボットの残骸が……!」
 平賀:「街中で遭難する気ですか!」

 平賀は敷島を羽交い絞めにして、ホテルの入口まで逃げ出した。
 と、同時にそれまで掘り進めていたトンネルが『落盤』した。

 従業員:「お客様方、大丈夫ですか!?」
 平賀:「はぁ、はぁ……!し、死ぬかと思った!」
 敷島:「くそーっ!あとちょっとだったのに!!」

 敷島はガンッとスコップを地面に叩き付けた。
 と、その時だった。

 ズシャァァァァァッ!と現れたロボット達。

 B4-4:「オ困リノヨウデスネ?」
 B4-457:「マルチタイプ8号機のアルエット御嬢様ヨリ、御下命賜リマシタ!」
 B4-108:「直チニ、エミリー様ノ捜索ヲ始メマス!」
 平賀:「お前らは記念館警備のバージョン達!?……え、なに?アルエットが命令しただ!?」
 B4-48:「ハハッ!最上位機マルチタイプの御命令ハ絶対!」
 敷島:「アルエットのヤツ、何ちゅう奴だ……!」

 手持ちの火炎放射器で雪を融かし、或いはスコップでザックザックと掘り進めるバージョン4.0の集団。

 平賀:「アルエットは、やる時はやりますよ。7号機のレイチェルにとどめを刺したのも、アルエットです」
 敷島:「確かに……」

 敷島は端末を起動した。
 それを使って、アルエットと通信する。
 敷島の知らせに、アルエットは驚いていた様子だった。

 アルエット:「ええっ!?あれ、本当に通じてたんですか?!」

 といった感じだ。

 敷島:「お前の通信機器、エミリー達より精度がいいのを使ってることをすっかり忘れてたよ」

 何もかもが最新基軸のアルエットとされているが、そもそもマルチタイプ自体がオーバーテクノロジーである。

 敷島:「科学館も大変なことになってるだろうけど、頑張ってくれよ?」
 アルエット:「わっかりましたー!私にお任せ!」
 敷島:「何やってるんだ?」
 アルエット:「雪かきです!バージョン400に乗って!」
 敷島:「ブッ!……あ、イベント用にレストアしたヤツか……」

 バージョン400はバージョン4.0を巨大化したものである。
 もちろん外見がそうだというだけで、他にも色々違う所はある。
 大きな違いは、まるで特撮の合体ロボのように頭部に搭乗して手動操縦できるという所である。
 もちろん、他のバージョン同様に自動も可。
 アルエットは通常の4.0では担ぎ上げられて、400においては自分が乗り込んで操縦するのが好きだった。
 巨大ロボがガイノイドに操縦されて駆動する様は、何ともシュールである。

 それから1時間後……。

 B4-4:「平賀博士!エミリー様ヲ発見シマシタ!」
 平賀:「何だと!?」

 平賀はたまたま1階のフロントで、延泊についての話をフロントスタッフとしていた。
 本来なら、もうチェックアウトの時間をとっくに過ぎている頃である。
 もちろん状況が状況だけに、フロントスタッフは延泊を認めた。
 それまでの宿泊客はチェックアウトしたくても今日はまず無理だし、今日の新規客も来られず、ほぼ確実にキャンセルだろう。
 そんな時、バージョン4.0の初期型4号機が飛び込んで来た。

 平賀:「どこだ!?」
 B4-4:「今、コチラニ運ンデオリマス」
 平賀:(敷島さんは……今、仮眠室か)

 連泊の場合でも清掃の為、昼間はカプセルホテルの客室フロアは出ないといけない。
 その為、敷島はサウナの仮眠室に移動していた。
 さすがに疲れたのである。
 少しして、他のバージョン達がエミリーを運んできた。

 平賀:「うわ……手とか足とかはさすがにバラバラか……。でもまあ、頭部は無事か。それなら……」
 B4-4:「如何致シマショウ?」
 平賀:「取りあえず、中に運んでくれ。車が動けばいいんだがな……」

 平賀はバージョン達に命令すると、そのまま中には入らず、煙草に火を点けたのだった。
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“戦う社長の物語” 「エミリーの安否」

2018-02-23 16:02:17 | アンドロイドマスターシリーズ
[1月7日09:00.天候:晴 埼玉県さいたま市大宮区]

 関東も関東で、平野部にも関わらずメートル単位の雪が降り積もっていた。
 シンディは周辺に稼働するバージョン4.0(以下、B4と略す。Versionではなく、Barsionという製品名の為)をかき集め、除雪や孤立者の救助活動に当たっていた。

 シンディ:「モタモタするんじゃないよ!これも贖罪活動の一環なんだからねっ!」

 シンディは電気鞭片手にバージョン達に指示を出していた。

 B4-17:「シンディ様、雪デ孤立シタオ年寄リ2名ヲ救助シマシタ」
 シンディ:「すぐに救助隊に引き渡しなさい!」
 B4-17:「ハハッ!」
 シンディ:「こっちでは停電が無いから良かったものの、姉さん達は大丈夫なのかしら……」

 東京では井辺が会社に泊まり込み、ボーカロイド達を駆使して除雪作業に当たらせているらしい。
 因みにテレビで今、それが話題になっている。

 シンディ:「ん!?……姉さんの反応が消えた?」

[同日同時刻 天候:晴 東京都江東区豊洲 敷島エージェンシー]

 KAITO:「プロデューサーは中にいてください。このままでは雪焼けしてしまいます」
 井辺:「昨日とは打って変わって、カラッと晴れています。何かおかしいですね。まあ、いいでしょう。一応、日焼け止め塗ってきますので、その間、雪かきの方お願いします」
 MEIKO:「分かったから、早くプロデューサーは戻って。事務所に誰もいないとマズいでしょう?」
 井辺:「一海さんがいますが、取りあえず一旦戻ります」

 井辺はビルの中に入ると、エレベーターで事務所の階に上がった。
 ここも停電はしていなかった。

 井辺:「一海さん、今日の予定は全てキャンセルです。この雪では、そもそも交通機関が……」

 一海はメイドロイドから改造された事務員ロイドである。

 一海:「プロデューサーさん、大変です。社長室から警報が……!」
 井辺:「ええっ!?」

 井辺が社長室に向かうと、確かに中からアラームが聞こえた。

 井辺:「これは端末の警報音!」

 社長室に入り、その裏にあるロイド監視のサーバールームに入る。

 井辺:「エミリーさんが!?」

『重大な損傷が発生しました。強制シャットダウンします』

 井辺:「エミリーさんに何かあった!?」

[同日同時刻 天候:晴 宮城県仙台市青葉区国分町]

 平賀:「いけません、敷島さん!危険ですよ!?」
 敷島:「エミリーを助けに行かないと!何かの爆発に巻き込まれたんです、きっと!」
 平賀:「エミリーならグレネードの直撃を受けても壊れない設計になっています!たかだかロボットの自爆装置くらいで壊れるわけが無いですから!」
 敷島:「私の端末には、『重大な損傷が発生しました。強制シャットダウンします』とありますよ!?」

 社長室にあるサーバーが親機だとすると、敷島の持っているのは子機である。
 要は携帯端末ということだ。
 ここではノートPC型だったりする(タブレット型も別にあって、状況に応じて使い分けている)。

 平賀:「ですが……!」

 尚、エミリーに起きた『重大な損傷』によって『強制シャットダウン』した場合、端末からでは再起動ができない。
 直接本人を助けて、ボディから再起動の操作をしなければならない。

 平賀:「最悪、雪が融ければ……」
 敷島:「いつですか!?こんな3メートルも4メートルも一気に積もっちゃって……!」

 と、そこへシンディから通信が出て来た。

 シンディ:「社長、シンディです!」
 敷島:「ああ、シンディか。そうか。お前の電波なら、直接通信できるか」

 この雪害は停電こそ免れたものの、電話はパンクしており、非常に繋がりにくい状態になっていた。
 マルチタイプならネット回線でも何でも使える。
 敷島は手持ちのノートPCのカメラとマイクに向かって喋った。
 但し、こちらからはシンディの顔は見えない。
 代わりに彼女の目(カメラ)とリンクさせて、シンディが今見ている光景を見ることはできる。
 やはり、さいたま市も相当な状況であるようだ。

 シンディ:「姉さんのGPSが消えたんだけど、何かあったの!?」
 敷島:「そ、それなんだが……」
 平賀:「シンディ!こちらにも黒いロボットが現れた!一機はエミリーに確保してもらって調査中だが、自爆装置を持っている。どうやら、それに巻き込まれた恐れがある!」
 シンディ:「黒いロボットが!?」
 平賀:「そうだ!そちらにもお前達を狙って、黒いロボットが向かっていた可能性は十分ある。除雪や救助活動は大いに結構だが、黒いロボットに気をつけろ!中途半端に攻撃すると、自爆する恐れがある!」
 シンディ:「で、姉さんは?」
 敷島:「奴らの爆発の影響で雪が崩れて、その下敷きに……!人間なら……100%死亡の……」
 シンディ:「私、そっちに行きます!」
 敷島:「どうやってだ!?この雪で新幹線も高速道路も全面ストップだぞ!?お前のジェットエンジンでは、仙台まで届かない!」
 平賀:「“鉄腕アトム”のヤツだったら、海外までも行けるというのに……」

[同日同時刻 天候:晴 埼玉県さいたま市西区 DCJロボット未来科学館]

 警備室では偉い騒ぎであった。

 警備員A:「……分かりました。科学館は今日は臨時休館ということで……はい。……はい」
 警備員B:「……そうなんです。職員さんどころか、うちの警備員の交替要因も出勤できない有り様で……。はい……はい……」
 警備員C:「外部センサーが発報しまくりだ!」
 警備員D:「もういい!防犯センサーは電源切れ!」

 アルエットと萌は警備室の外から、その騒ぎを見ていた。

 萌:「臨時休館だって」
 アルエット:「う、うん……」
 萌:「あーあ……。今日は井辺さんがMEGAbyteの御三方を連れて、ここに遊びに来てくれる約束だったのに……」
 アルエット:「井辺プロデューサーさんは遊びにじゃなくて、お仕事で来てるんだよ?」

 アルエットは新型マルチタイプ。
 旧型のエミリーやシンディとは、フルモデルチェンジのデザインとなっている。
 が、表向きは同型機となっているので、もちろん通信に関しては相互にできる。

 アルエット:「ああっ!?」
 萌:「どうしたの!?」
 アルエット:「お姉ちゃんが……!エミリーお姉ちゃんが……!!」

 アルエットの電子頭脳に、エミリーの最後の記憶が飛び込んで来た。
 そこが新型ならではの機能でもあるのだが、当の本人にとっては……。

 アルエット:「バージョン!仙台にいるバージョンは、エミリーお姉ちゃんを助けて!!」

 フルモデルチェンジとはいえ、アルエットも最上位機種である。
 それからの咄嗟の命令が、意外な展開を呼ぶ。
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