報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“戦う社長の物語” 「敷島エージェンシーの仕事始め」 1

2018-02-02 20:01:31 | アンドロイドマスターシリーズ
[1月4日06:38.天候:晴 JR大宮駅・新幹線ホーム]

〔14番線に、“なすの”252号、東京行きが10両編成で参ります。この電車は途中、上野に止まります。グリーン車は9号車、自由席は1号車から8号車と10号車です。まもなく14番線に、“なすの”252号、東京行きが参ります。黄色い線まで、お下がりください〕

 高架ホームに朝日が差し込んでくる。
 東北新幹線上り列車を待つ場合、その朝日に背を向けることになる。

 敷島:「随分と地味な年末年始になったな。次回はもっとド派手な過ごし方でもしようかな」
 シンディ:「家族旅行に行かれるのが良いと思います」
 敷島:「家族旅行ねぇ……」
 シンディ:「あ、私と姉さんは留守をお預かりしておきますよ?」
 敷島:「いや、まあまだ先の話だ」

〔「14番線、ご注意ください。“なすの”252号、東京行きの到着です。お下がりください。9号車のグリーン車以外、全部自由席です」〕

 東北新幹線では古参のE2系電車が入線してくる。
 唯一の小山始発ということもあり、車内はガラガラの状態だった。
 メインは東京駅からの折り返し列車で、回送で向かうついでに客扱いするだけなのかもしれない。

〔「おはようございます。大宮、大宮です。14番線の電車は“なすの”252号、東京行きです」〕

 近距離利用の敷島達はグリーン車ではなく、先頭の1号車に乗った。
 尚、第一秘書のエミリーが一緒でないのは、エミリーは月初めにオーバーホールを受けることになっているからである。
 この場合は第二秘書のシンディが代理を務める。
 本来は週末に受ければ良いのだろうが、外資系のDCJは平日しかアフターサービスを行っていないからだ。

 敷島:「こうして、ボーッと景色を見ながら通勤するのも1つの楽しみだったんだがな」
 シンディ:「ハイヤーでもできますよ」

 車両の外から無機質な電子ベルが聞こえてくる。
 仙台駅などは発車メロディだが、大宮駅は電子ベルのままである。
 大宮駅で発車メロディが流れないのは、新幹線ホームとニューシャトルのホームだけになっていた。

〔14番線から、“なすの”252号、東京行きが発車致します。次は、上野に止まります。黄色い線まで、お下がりください〕

 発車メロディの後で、客終合図が微かに聞こえてくる。
 それだけ車内が静かだということだ。
 朝一の始発でもそれなりに乗客は乗っているのだが、皆が皆通勤客だからだろう。
 車内にインバータの音が響いて来て、それが流れ始めた景色と共に列車が出発したことを教えてくれる。
 JR東海や西日本が導入しているタイプのインバータ音は、それはもう眠気を誘うような音色である(作者の主観。JR東海373系や西日本207系、西日本223系など)。

 シンディ:「ハイヤー通勤になれば、列車の時差通勤などもせずに済みます。御朝食も、自宅で取れますよ」
 敷島:「それはそうなんだけどねぇ……」

 新幹線通勤の敷島は、車内でエミリーもしくはシンディの作った軽食の弁当を食べている。

 シンディ:「とにかくエンタープライズ本社からの指示ですので、来月よりハイヤー通勤に切り換えてください」
 敷島:「いや、そこは来年度だろう。4月からでいいさ」
 シンディ:「ダメです。昨日、会長も仰ったではありませんか」
 敷島:「あの爺さん、覚えてるかな?」
 シンディ:「覚えてると思いますよ。井辺プロデューサーも心配してましたからね」
 敷島:「井辺君も外面的なことを気にするようになったなぁ……」
 シンディ:「井辺さんは今や総合プロデューサー。つまり、敷島エージェンシー営業部門の責任者なんです。当たり前ですよ」
 敷島:「固い所があって、どらかというと総務向きかなと思ったんだが、何とか成長してくれたみたいだ」

 敷島はカツサンドを頬張りながら頷いた。

[同日07:04.天候:晴 JR東京駅]

 JR東日本の大宮以南は徐行区間である。
 これは線形が悪いことも去ることながら、住宅密集地を通る為に騒音対策ということにもなっている。
 但し、これのせいでダイヤが過密状態になり、ちょっとのダイヤ乱れですぐ渋滞してしまうという現象の元にもなっている。
 上野駅新幹線ホームは新幹線駅の中でも珍しい地下ホームだが、これを抜けるとすぐに東京駅である。

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。まもなく終点、東京です。東海道新幹線、東海道本線、中央線、山手線、京浜東北線、横須賀線、総武快速線と京葉線はお乗り換えです。お忘れ物の無いよう、お支度ください。本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございました〕

 東京駅ホーム入線直前、進行方向左手には三菱地所の再開発地区がある。
 既に取り壊しが行われている旧・JXビル。
 取り壊されて無くなった今だから白状するが、このビルが作者の数年前まで防災警備先として派遣されていたビルである。
 尚、東京決戦で敷島がバスでバージョン軍団の包囲網の突破口を開ける為に突っ込んだビルのモデルではない。
 場所は大手町ということになっているが。
 呉服橋交差点に乗り捨てられていた都営バスを無断拝借して、JRのガード下を占拠していたバージョン軍団に特攻した。

 敷島:「……東京決戦の思い出もあるから、新幹線通勤は止められなかったのにぁ……」
 シンディ:「ちょうどこの真下でしたわね。社長がバスで突入したのは」
 敷島:「旧式の3.0だけで良かったよ。4.0がいたら、突っ込む前にバスごと吹っ飛ばされていただろうなぁ……」
 シンディ:「社長の場合、4.0が迎撃しても生き残ってそうな何かを感じます」
 敷島:「ロイドのお前が?」
 シンディ:「ええ」

 ややもすれば人間型大量破壊殺戮兵器としての用途もできるマルチタイプだが、何故かどう計算しても敷島を殺害できる確率が低めに計算されてしまうのだそうだ。
 例えばこうして横に座っているのだから、いきなりナイフでブスリと、或いは銃で頭を素早く打ち抜くなんてことも、やろうと思えばできるだろう。
 その成功率が敷島に関してだけは、どうしても低く出てしまうのだそうだ。
 ロイドは自分で出した計算の答えには絶大な自信を持つ。
 それが低く出るということは、そもそも最初からそのような行動はしないということだ。

〔「ご乗車ありがとうございました。終点、東京、東京です。車内にお忘れ物の無いよう、ご注意ください」〕

 上りの始発列車が東京駅に到着する。
 敷島とシンディは他の乗客達と共にホームに降りた。

〔「……20番線に到着の電車は、折り返し7時16分発、“はやて”111号、盛岡行きとなります。……」〕

 折り返し列車を待つ乗客達は、長い列を作っていた。

 敷島:「この足で都営バスの乗り場に行って、豊洲駅行きか深川車庫行きに乗っていたものだが……」

 今は長蛇の列を作る都営バスの乗り場を横目にタクシー乗り場に行き、そこからタクシーに乗るようになった。

 敷島:「都営バスならWi-Fiがあるのになぁ……」
 シンディ:「別に、スマホくらいパケット通信でもいいじゃないですか」

 タクシーの中にもWi-Fiを搭載している車もあるのだが、必ずというわけではない。
 敷島達が乗ったのは黒塗りのセダンだったのだが、Wi-Fiは完備していなかった。

 シンディ:「豊洲のアルカディアビルまでお願いします」
 運転手:「はい、ありがとうございます」

 東京駅八重洲口から出る際は、タクシーもバスも一緒の交差点に並ぶ。
 だから、タクシーが前後脇の3方向をバスに固められるということも多々あるわけだ。
 尚、タクシーにはカーナビがあって、GPSで位置情報を提供しているわけだが、シンディなどのロイドもまたGPSで位置を管理されているのである。
コメント (2)
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“戦う社長の物語” 「敷島家の年始」

2018-02-02 10:12:52 | アンドロイドマスターシリーズ
[1月3日09:30.天候:晴 埼玉県さいたま市大宮区 敷島家(賃貸マンション701号室)]

 シンディ:「お餅が焼けました」
 エミリー:「お雑煮でございます」
 敷島:「おっ、ありがとう。お餅三昧も、今日で最後か」
 アリス:「美味しかったんだからいいじゃない」
 敷島:「いや、別に文句は無ェよ」
 シンディ:「年末年始なのに、お2人はどこかに旅行とかされなかったんですね」
 敷島:「実家や両親のいる人達はそこに帰省したり、あと金のある学生さん達は旅行に行ったりするんだろうがな、俺らはどっちにも当てはまらないから」
 アリス:「アタシもこっちでロイドやロボットの相手してる方がいいわ」
 二海:「お坊ちゃま、朝食の時間ですよー」
 トニー:「あー」
 敷島:「トニーが大きくなったら、家族旅行でも行くか」
 アリス:「いいね!」
 敷島:「取りあえず、初詣と初売りは行ったんだからいいだろ。ロボット博士の行く初売りは、やはり電器屋か」
 アリス:「新しい発明のアイディアの宝庫だからね」
 敷島:「で、何かネタあった?」
 アリス:「取りあえず防犯用に、センサー式のギロチンなんか考えてる。あっという間に首と胴体が切り離されるような……」
 敷島:「死亡トラップオンリーの某映画のパクりは止めような?」

 ピンポーン♪

 敷島:「おや、誰か来た?」
 シンディ:「私が出ます」

 シンディが玄関に出た。
 そして……。

 シンディ:「社長、峰雄会長がお見えです!」
 敷島:「はあ!?」
 峰雄:「よお、明けましておめでとう」
 敷島:「一昨日、年始の挨拶に行きましたよ!?」
 峰雄:「今度は私が挨拶に来る番」
 敷島:「何だそりゃ!」
 峰雄:「具体的にはキミ達に会いに来たのではない」
 敷島:「う……ということは……?」
 トニー:「じーじ、じーじ。ぐらんぱ」
 峰雄:「おー、坊!明けましておめでとう!日本語と英語の両方覚える気、満々だな!わははははは!!」
 敷島:「『孫love暴走で息子夫婦の家に押し入ってくる爺の図』」

 実際は峰雄は敷島孝夫の上の伯父に当たる。
 とはいえ社長の俊介とは年が10歳くらい離れているから、峰雄から見れば孫同然の年の差である。

 峰雄:「お年玉を渡しに来たぞ!」
 敷島:「何か、嫌な予感……」
 峰雄:「ほら、受け取れい!子供のうちからケチはいかんぞ!」

 峰雄、スーツの内ポケットからレンガを1つ出した。
 もちろん、本物のレンガなわけではなく……。

 敷島:「だから、何で札束が出てくるの!子供相手に!」
 峰雄:「私の英才教育だ。子供の、それも敷島家の男子たる者、ケチな男に育ってはいかん」
 敷島:「“お坊ちゃまくん”の御坊亀光みたいなこと言って……」
 アリス:「G-Grand-pa.その……私からも、さすがにお札束はどうかと思いますが……」
 敷島:「そうだよ」
 峰雄:「何じゃい。2人してケチなことを言うな。トニーの教育が心配だ」
 アリス:「どうしてもお札束が良いというのであれば……」
 敷島:「ん?(まあ、子ども銀行のオモチャのヤツなら、遊びながらお金の計算の勉強もできていいのか?)」
 アリス:「ドル札でください!」
 敷島:「お前が欲しいだけだろ!」
 峰雄:「む!確かに、今から外貨の扱い方を学ばせておくのも良いかもしれんな」

 峰雄は自分のスマホを出した。

 峰雄:「あー、私だ。至急、私のレンガ1つを米ドルに交換……」
 敷島:「しなくていい!アリスも何言ってるんだ!」
 峰雄:「では孝夫は、トニーのお年玉をどうすれば良いというのかね?」
 敷島:「まだ子供なんだから、そんな高額紙幣じゃなく、硬貨でいいんですよ」
 峰雄:「おー、そうだったか。それは大変失礼した」

 峰雄はポンと自分の手を叩いた。

 峰雄:「ほれ、坊。お年玉だ」

 ドンとベビーベッドの上に、大量の500円玉をカジノの勝負師のように積み上げた。
 恐らく100万円分あるのだろう。

 峰雄:「いいか、坊?このコインの積み方にはコツがあってな……。家族旅行は私がラスベガスに連れて行ってやるからな」
 敷島:「俺、頭痛くなってきた……」
 アリス:「会長。今、ラスベガスは下火ですわ。今はむしろマカオの方がいいかもしれません」
 峰雄:「む、マカオか。確かにここ最近、行っとんなぁ。孝夫もこの嫁さんに負けず、スロットで大勝を狙うくらいの……」
 エミリー:「社長、バファリンです」
 敷島:「うん……」
 峰雄:「何とだらしない」
 アリス:「そうなんですよ。アタシが『2人目は女の子がいい』と言っても、てんでこれでして……」
 峰雄:「む!孫娘か!孝夫、この私が『製造許可』を出す!」
 孝夫:「何言ってんだよ……」
 峰雄:「メイドと秘書のキミ達も協力しなさい。家族が増えれば、キミ達の相続先がそれだけ増えるということになる」
 シンディ:「おおっ、確かに!」
 エミリー:「仰る通りです」
 敷島:「おい!……いいから、お餅でも食べて行けば?」
 エミリー:「そうですね。まだお餅がございますよ」
 峰雄:「そうか。あと、どのくらい残っているんだ?」
 シンディ:「5個ですね」
 峰雄:「5個だと?」

 峰雄の眉がピクッと動く。

 シンディ:「何か、問題ですか?」
 峰雄:「お餅6無い。出直して参れ」(面白くない。出直して参れ)
 敷島:「なに昔のRPGのネタ使ってんだ!」

 ↑すいません、これがやりたかっただけですw

 お昼過ぎになって、ようやく峰雄は帰ることにした。

 峰雄:「いやー、楽しい年始じゃったわい」
 孝夫:「それはそれは大変結構なことで」

 マンションの入口には、黒塗りのセンチュリーが止まっていた。
 もちろん、運転手もスタンバイしている。
 そこまで見送る敷島一家。

 峰雄:「遠慮せんと、連休どこにも行く所が無いのなら、私の家に遊びに来てくれ」
 孝夫:「そのうちね」
 峰雄:「アリスさん、日本の家族の団らんというものがお分かり頂けたかな?」
 アリス:「はい!」
 敷島:「いや、あれは特殊!」

 運転手が恭しくドアサービスをする。
 峰雄が乗り込むと、パワーウィンドウを開けた。

 峰雄:「社員旅行は行くんだろ?」
 敷島:「ええ、まあ。何とか独自に……」
 峰雄:「いいことだ。それじゃ」
 敷島:「お気をつけて」
 峰雄:「じゃあな。坊、またな」

 峰雄はアリスに抱っこされているトニーの小さな手を握った。
 そして、颯爽と走り去って行った。

 敷島:「全く。ぶっ飛んだ爺さんだ」
 シンディ:「最高顧問の血筋だと理解できますね」
 敷島:「ああ、まあな。寒い寒い。早く中に入るぞ」

 こうして、敷島家の年末年始は無事に終了したのである。
 尚、トニーが峰雄のヅラを外して遊ぶというトリッキーなことをしていたのだが、この時は峰雄も笑っていただけだったという。
コメント (1)
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