[5月11日00:00.天候:雨 宮城県仙台市若林区連坊小路 曹洞宗保壽寺霊園]
稲生やマリアに悪霊として度々襲い掛かる河合有紗。
彼女は離婚した両親によって死後、遺骨が分祀されていた。
さいたま側の遺骨は何者かによって盗難に遭い、記憶を取り戻した稲生は仙台側の墓地を当たってみることにした。
すると、そこに骨壺があった。
いかにも、誰かに見つけて欲しいかのように。
稲生:「あった!あの骨壺だ!」
稲生は喜び勇んで骨壺に駆け寄った。
威吹:「待てユタ!何か変だ!」
威吹が、もうすぐで骨壺に手を振れそうになった稲生の腕を掴んだ。
稲生:「何だよ、威吹!?」
威吹:「何だか、あからさま過ぎる。もしかしたら罠かもしれない。よく調べてからにしないと」
稲生:「何だって?今更何を言うんだ」
威吹:「ここはボクが調べておくから、ユタはここで待っててくれ」
稲生:「う、うん」
威吹は墓石に近づき、そして骨壺に手を伸ばした。
と、その時!
背後で銃声が聞こえて来た。
威吹:「うわっ!?」
少し遅れて威吹に被弾した!
稲生:「威吹!?」
威吹:「痛ってぇ……」
威吹の背中に被弾したはずだが、威吹はケガをしていなかった。
それもそのはず。
威吹の着ている着物にも妖力が施されており、並みの鎧以上の耐久力を持っているのだった。
このように銃弾でさえも、石が当たった程度にしかダメージを受けない。
もっとも、魔王城決戦の時は更にこの上から胸当てや腰当てを着けるなどの万全の態勢を取っていたが。
稲生:「威吹、大丈夫か!?」
稲生が駆け寄ろうとすると、また銃声。
今度は威吹の袴に当たったが、袴も上の着物と同じだ。
マリア:「遠くから狙撃されている!?」
そして、また発砲。
稲生:「ぎゃっ!?」
今度は稲生の頭に当たった。
威吹:「ユタ!?」
マリア:「いや、大丈夫だ。ローブの上からなら、ヘルメット着用と同じだから……」
だが、それでも鈍器で殴られたくらいの衝撃はあったのだろう。
稲生は前のめりに倒れ込み、意識を失った。
それを受け止めてやる威吹。
威吹:「くそっ!鉄砲とは卑怯な!どこから撃って来てる!?雨のせいで鼻が利かない!」
また発砲音。
今度は威吹が着物のゆったりとした袖で受け止めた。
マリア:「あそこだ!……パペ、サタン、パペ、サタン、アレッペ!……ルゥ・ラ!」
マリアだけが瞬間移動で飛び去った。
威吹:「お、おい!オレ達を置いて行く気か!?」
ライフルの狙撃音が真夜中に響いたのである。
周辺の住民が気付かないわけがなかった。
威吹:「い、一旦引き上げよう」
威吹は気絶中の稲生を担ぎながら、墓地の出口に向かった。
そうこうしているうちに、パトカーのサイレンが聞こえてくる。
[同日00:15.天候:晴 同地区 保壽寺霊園から100メートルほど離れた建設中のマンション]
マリアが瞬間移動魔法でやってきた場所は建設中のマンション。
建設中とはいえ、ほぼ完成しているように見えた。
遠くからはパトカーのサイレン音が聞こえてくる。
通報されたとは思うが、それにしても早い。
恐らく、たまたま付近をパトロール中のパトカーが聞きつけてやってきたのかもしれない。
狙撃者:「……なぜ?数発は当たってるはずなのに、どうして死なないの?」
黒づくめの服を着た狙撃者が発した声は女の声だった。
マリア:「あなたが犯人か?」
狙撃者:「!?」
狙撃者は後ろから声がしたので、驚いた様子で振り向いた。
マリア:「あなたは軍人か?その暗視スコープとライフルはどこで?」
狙撃者:「どうしてここが!?」
マリア:「魔道師をナメるなよ。どうやら女のようだけど、最初に狙ったのはイブキで、次は勇太だった。この順番に意味があるとするなら、あなたの正体は……」
マリアは魔法の杖の先をライトのように照らした。
狙撃者:「くっ……!」
狙撃者は眩しさのあまりに目を細め、顔を手で覆った。
だが、その隙間から覗いた顔は……河合有紗に似ていた。
いや、正確に言えば河合有紗が成長した姿に似ていた、とした方が良いだろう。
マリア:「河合有紗の双子の姉!……名前は知らないけど」
狙撃者は暗視スコープを外すと、今度はサングラスを掛けた。
そして、手持ちのライフルをマリアに向ける。
マリア:「私を殺すの?それなら、1つだけ教えてくれる?どうして、あなたはこんなことをしてるの?」
狙撃者:「…………」
マリア:「答える気、無しか。じゃ、しょうがないかな。……パペ、サタン、パペ、サタン、アレ……」
マリアが呪文を言い終わらぬ前だった。
狙撃者がマリアの胸に向かって発砲した。
弾はマリアのローブをすり抜け、黒いブレザーのエンブレムに当たった。
マリア:「なっ……!?」
マリアは衝撃で後ろに飛んだ。
狙撃者:「ふん……。計画は台無しになったけど、また後で殺してやるわ。……あの威吹邪甲と稲生勇太……!!」
狙撃者は死んだと思っていたマリアの横を通り過ぎ、警察が集結する前にここから逃げようと思った。
だが、ドアノブに手を掛けた時だった。
マリア:「……ヴァ・シィ・ルゥ・ラ!」
狙撃者:「!!!」
マリアは一瞬、昏倒しただけだった。
すぐに目を覚まし、狙撃者に向かって魔法を放ったのだった。
狙撃者は窓ガラスを突き破り、ライフルを持ったまま霊園の入口に集結していた警察隊のど真ん中に飛ばされた。
マリア:「良かった……。このブレザーだけ、エンブレムが左胸に大きく出ているんだった……」
要はマリアの着ているブレザーもまた、魔法の力に守られているということ。
特に胸ポケットに縫い付けられているエンブレムに関しては、ライフル弾でも弾く程の耐久性を持つ。
マリア:(何故だか、このブレザーを着ていなきゃいけないような気がして……)
どうやらマリアもまた魔力が強まり、その一環として予知能力が高まったようである。
ここからではよく見えないが、猟銃用とは明らかに違うタイプの狙撃用ライフルを持って警察隊のど真ん中に落ちたら、無事では済まないはずだった。
因みに雨は尚一層強くなっており、取りあえず雨宿りの必要はあると判断した。
稲生やマリアに悪霊として度々襲い掛かる河合有紗。
彼女は離婚した両親によって死後、遺骨が分祀されていた。
さいたま側の遺骨は何者かによって盗難に遭い、記憶を取り戻した稲生は仙台側の墓地を当たってみることにした。
すると、そこに骨壺があった。
いかにも、誰かに見つけて欲しいかのように。
稲生:「あった!あの骨壺だ!」
稲生は喜び勇んで骨壺に駆け寄った。
威吹:「待てユタ!何か変だ!」
威吹が、もうすぐで骨壺に手を振れそうになった稲生の腕を掴んだ。
稲生:「何だよ、威吹!?」
威吹:「何だか、あからさま過ぎる。もしかしたら罠かもしれない。よく調べてからにしないと」
稲生:「何だって?今更何を言うんだ」
威吹:「ここはボクが調べておくから、ユタはここで待っててくれ」
稲生:「う、うん」
威吹は墓石に近づき、そして骨壺に手を伸ばした。
と、その時!
背後で銃声が聞こえて来た。
威吹:「うわっ!?」
少し遅れて威吹に被弾した!
稲生:「威吹!?」
威吹:「痛ってぇ……」
威吹の背中に被弾したはずだが、威吹はケガをしていなかった。
それもそのはず。
威吹の着ている着物にも妖力が施されており、並みの鎧以上の耐久力を持っているのだった。
このように銃弾でさえも、石が当たった程度にしかダメージを受けない。
もっとも、魔王城決戦の時は更にこの上から胸当てや腰当てを着けるなどの万全の態勢を取っていたが。
稲生:「威吹、大丈夫か!?」
稲生が駆け寄ろうとすると、また銃声。
今度は威吹の袴に当たったが、袴も上の着物と同じだ。
マリア:「遠くから狙撃されている!?」
そして、また発砲。
稲生:「ぎゃっ!?」
今度は稲生の頭に当たった。
威吹:「ユタ!?」
マリア:「いや、大丈夫だ。ローブの上からなら、ヘルメット着用と同じだから……」
だが、それでも鈍器で殴られたくらいの衝撃はあったのだろう。
稲生は前のめりに倒れ込み、意識を失った。
それを受け止めてやる威吹。
威吹:「くそっ!鉄砲とは卑怯な!どこから撃って来てる!?雨のせいで鼻が利かない!」
また発砲音。
今度は威吹が着物のゆったりとした袖で受け止めた。
マリア:「あそこだ!……パペ、サタン、パペ、サタン、アレッペ!……ルゥ・ラ!」
マリアだけが瞬間移動で飛び去った。
威吹:「お、おい!オレ達を置いて行く気か!?」
ライフルの狙撃音が真夜中に響いたのである。
周辺の住民が気付かないわけがなかった。
威吹:「い、一旦引き上げよう」
威吹は気絶中の稲生を担ぎながら、墓地の出口に向かった。
そうこうしているうちに、パトカーのサイレンが聞こえてくる。
[同日00:15.天候:晴 同地区 保壽寺霊園から100メートルほど離れた建設中のマンション]
マリアが瞬間移動魔法でやってきた場所は建設中のマンション。
建設中とはいえ、ほぼ完成しているように見えた。
遠くからはパトカーのサイレン音が聞こえてくる。
通報されたとは思うが、それにしても早い。
恐らく、たまたま付近をパトロール中のパトカーが聞きつけてやってきたのかもしれない。
狙撃者:「……なぜ?数発は当たってるはずなのに、どうして死なないの?」
黒づくめの服を着た狙撃者が発した声は女の声だった。
マリア:「あなたが犯人か?」
狙撃者:「!?」
狙撃者は後ろから声がしたので、驚いた様子で振り向いた。
マリア:「あなたは軍人か?その暗視スコープとライフルはどこで?」
狙撃者:「どうしてここが!?」
マリア:「魔道師をナメるなよ。どうやら女のようだけど、最初に狙ったのはイブキで、次は勇太だった。この順番に意味があるとするなら、あなたの正体は……」
マリアは魔法の杖の先をライトのように照らした。
狙撃者:「くっ……!」
狙撃者は眩しさのあまりに目を細め、顔を手で覆った。
だが、その隙間から覗いた顔は……河合有紗に似ていた。
いや、正確に言えば河合有紗が成長した姿に似ていた、とした方が良いだろう。
マリア:「河合有紗の双子の姉!……名前は知らないけど」
狙撃者は暗視スコープを外すと、今度はサングラスを掛けた。
そして、手持ちのライフルをマリアに向ける。
マリア:「私を殺すの?それなら、1つだけ教えてくれる?どうして、あなたはこんなことをしてるの?」
狙撃者:「…………」
マリア:「答える気、無しか。じゃ、しょうがないかな。……パペ、サタン、パペ、サタン、アレ……」
マリアが呪文を言い終わらぬ前だった。
狙撃者がマリアの胸に向かって発砲した。
弾はマリアのローブをすり抜け、黒いブレザーのエンブレムに当たった。
マリア:「なっ……!?」
マリアは衝撃で後ろに飛んだ。
狙撃者:「ふん……。計画は台無しになったけど、また後で殺してやるわ。……あの威吹邪甲と稲生勇太……!!」
狙撃者は死んだと思っていたマリアの横を通り過ぎ、警察が集結する前にここから逃げようと思った。
だが、ドアノブに手を掛けた時だった。
マリア:「……ヴァ・シィ・ルゥ・ラ!」
狙撃者:「!!!」
マリアは一瞬、昏倒しただけだった。
すぐに目を覚まし、狙撃者に向かって魔法を放ったのだった。
狙撃者は窓ガラスを突き破り、ライフルを持ったまま霊園の入口に集結していた警察隊のど真ん中に飛ばされた。
マリア:「良かった……。このブレザーだけ、エンブレムが左胸に大きく出ているんだった……」
要はマリアの着ているブレザーもまた、魔法の力に守られているということ。
特に胸ポケットに縫い付けられているエンブレムに関しては、ライフル弾でも弾く程の耐久性を持つ。
マリア:(何故だか、このブレザーを着ていなきゃいけないような気がして……)
どうやらマリアもまた魔力が強まり、その一環として予知能力が高まったようである。
ここからではよく見えないが、猟銃用とは明らかに違うタイプの狙撃用ライフルを持って警察隊のど真ん中に落ちたら、無事では済まないはずだった。
因みに雨は尚一層強くなっており、取りあえず雨宿りの必要はあると判断した。