[8月27日15:40.天候:曇 埼玉県さいたま市大宮区吉敷町 MOVIXさいたま]
〔「……タカオ、どうするの?これから」「もちろん、家に帰るさ。帰りのグレイハウンドバスのチケットは既に確保している」「社長、さすがにもうバス特攻はやめてくださいね?」「今度はニューヨーク市の市営バス1台弁償しなきゃいけなくなるなぁ!ハッハッハ!」「そういう問題じゃありません」〕
主人公の敷島家を乗せたヘリコプター、昇り始めた朝日に向かって消えて行き、そこで映画は終わる。
あとは壮大なBGMと共に、エンドロールが流れた。
稲生:「おお〜……!」
マリア:「…………」
そして場内が明るくなる。
稲生:「いやー、ホラーもいいですけど、たまにはこういうSFアクションも面白いですね」
マリア:「私の人形にもAIを搭載したら、もっと完璧に動くようになるかしら?」
稲生:「ダメですよ、それは」
マリア:「そうかな?」
稲生:「マリアさんの魔法で十分です」
マリア:「そ、そう?」
稲生達はシアターの外に出た。
上映が終わると、トイレが混雑するのはベタな法則。
男子トイレですら並ぶほど。
稲生:「SFも観たから、次は魔法を扱った作品でも観たいですね」
マリア:「また今度ね」
稲生:「先生に頼んで、“魔女の宅急便”でも再生してくれないかなぁ?」
マリア:「主人公がホウキ乗りで薬師系という時点で、何かムカつくからいいや」
多分、エレーナのことだろう。
マリア:「ハリーポッターの方がいい」
稲生:「ハリーポッターねぇ……」
マリア:「主人公が男という時点で、勇太みたいだ」
稲生:「でも僕、眼鏡は掛けてませんよ?」
マリア:「そんなのは些事だから」
稲生:「魔法列車というより、冥鉄電車なら既に何度も乗ってますが?」
マリア:「いや、だからそこじゃない」
MOVIXの外に出る。
稲生:「今ならマルチタイプやボーカロイドについて語れそうですね。どうです?ちょっと近くのカフェにでも……」
マリア:「そうだな。……ていうか……」
稲生:「はい?」
マリア:「何か、雨が降りそうなんだが?」
稲生:「そういえば、随分湿っぽいですね。あれ?ゲリラ豪雨が降るのは夜のはずじゃ?」
マリア:「タイミングがズレたかなぁ……?ここは1つ、もう帰った方がいいかもしれない」
稲生:「うー……」
マリア:「まだ休暇は続くんでしょ?多分明日は晴れるだろうから、明日にしよう」
稲生:「分かりました」
マリア:「家庭用プロジェクター、是非見てみたいからなぁ」
稲生:「あ、それは忘れてなかったんですね」
マリア:「もちろん」
ホームシアターのことである。
まあ、マリアの屋敷には、それこそミニシアターを作っても良さそうな部屋はあるのだが。
[同日16:00.天候:雨 埼玉県さいたま市中央区]
稲生達が足早に家に向かっている時だった。
ついに稲生の頭に大粒の雨が当たった。
稲生:「うわっ!?家まであとちょっとなのに!」
マリア:「Damn it!Too fast!(ちくしょう!やっぱタイミングずれてた!)」
走る2人。
空はどんどん暗くなり、雷鳴が轟き始めた。
稲生:「マリアさん、今のセリフ!」
マリア:「Huh?What?(え?なに?)」
稲生:「さっきの映画のアリス敷島と同じこと言ってましたよ!?ほら、黒いロボットに囲まれるシーン!」
マリア、自動通訳魔法が切れたことに気づいたか、ペンダントの魔法石を握る。
マリア:「アメリカ人と一緒にするな!私の英語の方が発音正しい!」
稲生:「日本語は似たようなものですって!」
雨もどんどん強くなってきた。
そして、ようやく家に辿り着く。
稲生:「ふぇーっ!エラい目に遭った!」
マリア:「いや、全く!」
因みに映画の中で、アリスなどが英語で喋るシーン(その際は字幕あり)があったので、今の稲生達のやり取りがあるのだ。
稲生:「早く中に入りましょう」
稲生は持っていた家の鍵で玄関のドアを開けた。
そして、中に入ると……。
稲生:「あっ!?」
マリア:「なに?」
玄関にブーツがあった。
それはイリーナのだった。
稲生:「イリーナ先生、来てたんだ」
マリア:「ええっ?」
するとリビングの方からイリーナがやってきた。
イリーナ:「お帰り、2人とも。お邪魔させてもらってるよー」
イリーナはにこやかな顔になっていた。
稲生:「先生、いつ来られたんです?言ってくれれば、お迎えに行きましたのに」
イリーナ:「あなた達が映画観てる間だよ。せっかくの映画デートを邪魔しちゃ悪いと思ってね」
家は全て施錠されているはずなのだが、イリーナほどの大魔道師になれば侵入可能である。
イリーナ:「それより、降って来たねぇ」
稲生:「ええ。急いで帰って来ました」
イリーナ:「それでもずぶ濡れね。早いとこ着替えておいで」
稲生:「はい」
実はブーツはもう1つある。
リビングからもう1人、魔道師が顔を出した。
マルファ:「本当だ!ずぶ濡れ!マリアンナちゃん、かわいいピンクのブラだね!」
それはイリーナとは1つ階級下である、ハイマスターのマルファ。
弟子は1人も取っていない。
稲生:「えっ!?」
稲生は男の本能として反射的にマリアの方を見た。
マリアも慌てて胸を隠したが、稲生の方が一瞬早かった。
うむ。正しい男の反射神経である。
イリーナ:「いいから、アンタはジュースでも飲んでな」
稲生:「マルファ先生もおいでで。後でお茶のお代わりを……」
マルファ:「うんうん。ありがとう」
イリーナ:「いいから、着替えてきて。この自由人は私がリード繋いでおくから」
稲生:「はーい」
マリア:「Yes,sir.(はいはい)」
マリアは着替えのある客間に、稲生は2階の自分の部屋に向かった。
そこで気づく。
マルファの容姿が白い肌の白人である上、金髪のショートボブであることを。
〔「……タカオ、どうするの?これから」「もちろん、家に帰るさ。帰りのグレイハウンドバスのチケットは既に確保している」「社長、さすがにもうバス特攻はやめてくださいね?」「今度はニューヨーク市の市営バス1台弁償しなきゃいけなくなるなぁ!ハッハッハ!」「そういう問題じゃありません」〕
主人公の敷島家を乗せたヘリコプター、昇り始めた朝日に向かって消えて行き、そこで映画は終わる。
あとは壮大なBGMと共に、エンドロールが流れた。
稲生:「おお〜……!」
マリア:「…………」
そして場内が明るくなる。
稲生:「いやー、ホラーもいいですけど、たまにはこういうSFアクションも面白いですね」
マリア:「私の人形にもAIを搭載したら、もっと完璧に動くようになるかしら?」
稲生:「ダメですよ、それは」
マリア:「そうかな?」
稲生:「マリアさんの魔法で十分です」
マリア:「そ、そう?」
稲生達はシアターの外に出た。
上映が終わると、トイレが混雑するのはベタな法則。
男子トイレですら並ぶほど。
稲生:「SFも観たから、次は魔法を扱った作品でも観たいですね」
マリア:「また今度ね」
稲生:「先生に頼んで、“魔女の宅急便”でも再生してくれないかなぁ?」
マリア:「主人公がホウキ乗りで薬師系という時点で、何かムカつくからいいや」
多分、エレーナのことだろう。
マリア:「ハリーポッターの方がいい」
稲生:「ハリーポッターねぇ……」
マリア:「主人公が男という時点で、勇太みたいだ」
稲生:「でも僕、眼鏡は掛けてませんよ?」
マリア:「そんなのは些事だから」
稲生:「魔法列車というより、冥鉄電車なら既に何度も乗ってますが?」
マリア:「いや、だからそこじゃない」
MOVIXの外に出る。
稲生:「今ならマルチタイプやボーカロイドについて語れそうですね。どうです?ちょっと近くのカフェにでも……」
マリア:「そうだな。……ていうか……」
稲生:「はい?」
マリア:「何か、雨が降りそうなんだが?」
稲生:「そういえば、随分湿っぽいですね。あれ?ゲリラ豪雨が降るのは夜のはずじゃ?」
マリア:「タイミングがズレたかなぁ……?ここは1つ、もう帰った方がいいかもしれない」
稲生:「うー……」
マリア:「まだ休暇は続くんでしょ?多分明日は晴れるだろうから、明日にしよう」
稲生:「分かりました」
マリア:「家庭用プロジェクター、是非見てみたいからなぁ」
稲生:「あ、それは忘れてなかったんですね」
マリア:「もちろん」
ホームシアターのことである。
まあ、マリアの屋敷には、それこそミニシアターを作っても良さそうな部屋はあるのだが。
[同日16:00.天候:雨 埼玉県さいたま市中央区]
稲生達が足早に家に向かっている時だった。
ついに稲生の頭に大粒の雨が当たった。
稲生:「うわっ!?家まであとちょっとなのに!」
マリア:「Damn it!Too fast!(ちくしょう!やっぱタイミングずれてた!)」
走る2人。
空はどんどん暗くなり、雷鳴が轟き始めた。
稲生:「マリアさん、今のセリフ!」
マリア:「Huh?What?(え?なに?)」
稲生:「さっきの映画のアリス敷島と同じこと言ってましたよ!?ほら、黒いロボットに囲まれるシーン!」
マリア、自動通訳魔法が切れたことに気づいたか、ペンダントの魔法石を握る。
マリア:「アメリカ人と一緒にするな!私の英語の方が発音正しい!」
稲生:「日本語は似たようなものですって!」
雨もどんどん強くなってきた。
そして、ようやく家に辿り着く。
稲生:「ふぇーっ!エラい目に遭った!」
マリア:「いや、全く!」
因みに映画の中で、アリスなどが英語で喋るシーン(その際は字幕あり)があったので、今の稲生達のやり取りがあるのだ。
稲生:「早く中に入りましょう」
稲生は持っていた家の鍵で玄関のドアを開けた。
そして、中に入ると……。
稲生:「あっ!?」
マリア:「なに?」
玄関にブーツがあった。
それはイリーナのだった。
稲生:「イリーナ先生、来てたんだ」
マリア:「ええっ?」
するとリビングの方からイリーナがやってきた。
イリーナ:「お帰り、2人とも。お邪魔させてもらってるよー」
イリーナはにこやかな顔になっていた。
稲生:「先生、いつ来られたんです?言ってくれれば、お迎えに行きましたのに」
イリーナ:「あなた達が映画観てる間だよ。せっかくの映画デートを邪魔しちゃ悪いと思ってね」
家は全て施錠されているはずなのだが、イリーナほどの大魔道師になれば侵入可能である。
イリーナ:「それより、降って来たねぇ」
稲生:「ええ。急いで帰って来ました」
イリーナ:「それでもずぶ濡れね。早いとこ着替えておいで」
稲生:「はい」
実はブーツはもう1つある。
リビングからもう1人、魔道師が顔を出した。
マルファ:「本当だ!ずぶ濡れ!マリアンナちゃん、かわいいピンクのブラだね!」
それはイリーナとは1つ階級下である、ハイマスターのマルファ。
弟子は1人も取っていない。
稲生:「えっ!?」
稲生は男の本能として反射的にマリアの方を見た。
マリアも慌てて胸を隠したが、稲生の方が一瞬早かった。
うむ。正しい男の反射神経である。
イリーナ:「いいから、アンタはジュースでも飲んでな」
稲生:「マルファ先生もおいでで。後でお茶のお代わりを……」
マルファ:「うんうん。ありがとう」
イリーナ:「いいから、着替えてきて。この自由人は私がリード繋いでおくから」
稲生:「はーい」
マリア:「Yes,sir.(はいはい)」
マリアは着替えのある客間に、稲生は2階の自分の部屋に向かった。
そこで気づく。
マルファの容姿が白い肌の白人である上、金髪のショートボブであることを。