[7月1日20時15分 天候:雨 群馬県吾妻郡東吾妻町某所 ペンション『いたち草』1階ロビー]
斉藤元社長が立ち去った後、私はロビーの公衆電話で善場係長に電話を掛けた。
愛原「もしもし、善場係長ですか!?」
私は斉藤元社長に先ほどまで会ったことを話した。
そして、今はタクシーで逃走した事を話した。
善場「かしこまりました!通報ありがとうございます!至急、手配を行います!斉藤容疑者との会話内容は覚えてますでしょうか?」
愛原「一応、ボイスレコーダーを仕掛けておきました。後で、録音状況を確認したいと思います」
善場「ありがとうございます。因みに斉藤元社長は、どちら方面に逃げたか分かりますか?」
愛原「そうですねぇ……。ペンションの前は国道から入って、基本的には一本道なんです。まあ、未舗装の林道に入る道もあったりはしますが、舗装された道という意味では……。で、斉藤さんは普通のタクシーで逃走しましたから、それがこんな大雨の中、未舗装の林道に入るとは思えません。ここは素直に、国道方面に向かって逃げたものと思われます」
善場「国道というのは145号線ですね?」
愛原「そうです!」
善場「かしこまりました。幸い所長方のいらっしゃる○×地区には、駐在所もありますから、警察への通報はこちらからしておきます」
公安調査庁の職員には、直接的な逮捕権は無い。
こういう場合は、ライバルの警察に任せるようだ。
まあ、委託業者たる私が有力な情報を捕まえたというだけでも、善場係長達の手柄になるのだろう。
愛原「BSAAには通報しないのですか?」
善場「今、そちらの天候はどんな感じですか?大雨、暴風警報が出ているようですが?あとは洪水注意報と雷注意報も出てますね」
愛原「あ、はい。今、かなり大雨が降っていて、雷もドッカンドッカン鳴っている状態です。今、外に出るのは危険ですね。斉藤さん、よくこんな中、逃げたもんだ」
善場「天候が悪いと追跡も難しいですから。そんな状態では、ヘリコプターなんか飛ばせませんね?」
愛原「あー、そうか」
善場「最後に、元社長が乗ったタクシー会社やナンバーとかは覚えてますか?」
愛原「あ、はい」
私はここの地元のタクシー会社であることと、車のナンバーを伝えた。
善場「ありがとうございます!所長、これからの御予定は?」
愛原「五十嵐元社長と会う予定です。デイライトさん的に、五十嵐元社長は、あまり警戒していないんですよね?」
善場「法的には今のところ何の問題もありません。五十嵐も社長は懲役5年の実刑判決を受けましたが、それまで警察の留置施設や拘置所に収容されていた期間を差し引きまして、2年ほどで出所してますね。それ以降、特に法的問題を起こしているわけではないので、そこは斉藤容疑者よりも問題はありません。ただ、彼は全てを話したという感じは全くしませんので、できればそこの辺り、情報を引き出して頂ければと思います」
愛原「分かりました。頑張ってみます。では、失礼します」
私は電話を切った。
すぐに通報するということだったが、案外長電話してしまった感はある。
恐らく、善場係長はデイライトの事務所辺りにいて、電話もスピーカーホンにしていたと思われる。
で、すぐ近くにいる同僚や部下に私の通話内容を聞いてもらって、代わりに警察機関に通報したのだろう。
しかし、どうして斉藤元社長は、まだ逃走を続けようとするのだろう?
各製薬会社に入り込んだという“コネクション”のスパイは、全員炙り出しに成功し、それをもって司法取引を計るということだが、逃走してしまっては意味が無いのではないか?
私がそんなことを考えていると……。
執事「愛原様」
後ろから執事に声を掛けられた。
執事「御主人様がお会いになるとのことです。御案内させて頂きますが、準備の方は宜しいでしょうか?」
愛原「あ、はい」
リサ「その前に、トイレに行きたい」
執事「かしこまりました。御案内致しましょう」
ついでに私も行ってこようかな。
愛原「じゃあ、俺も行こう」
私も執事の後ろをついて行った。
階段を回り込んで、1階の奥に行くと、共用トイレがあった。
どうもこの辺りは薄暗い。
シックな雰囲気を出す為に、わざと薄暗い照明を使っているというわけではなく、本当に暗いのである。
トイレ前の廊下、更に奥に続いていて、そこなんか真っ暗である。
だが、よく目を凝らしてみると……。
愛原「エレベーターだ」
エレベーターらしき物が見えた。
それも、扉が鉄格子になっているタイプ。
静岡県富士宮市郊外の、斉藤元社長の隠し別荘にあった物と似たタイプであった。
だが、稼働していないようだ。
執事「エレベーターでございます。……そうですね。御主人様は3階にいらっしゃいますし、あのエレベーターで参りましょうか」
愛原「動くんだ!?」
執事「はい。今は電源を落としているだけでございます。電源を入れて参りますので、先にお手洗いの方を……」
愛原「あ、ああ」
さすがにトイレは男女別になっている。
トイレの中は、もう少し明るかったが、それでも……。
何か古くて、やっぱり陰気臭いトイレなのだった。
トイレはリニューアルしていないようだ。
そんなことを考えながら、未だに水洗が押しボタン式の小便器の前に立って用を足していると……。
リサ「ぎゃあああああっ!!」
リサの悲鳴が聞こえた。
愛原「な、何だ!?」
私は急いで用を足し終わると男子トイレを飛び出し、女子トイレのドアをノックした。
愛原「リサ!リサ!何があった!?」
リサ「先生!入っちゃダメーっ!!」
愛原「な、何だって!?何があったんだ!?」
リサ「わたしがいいって言うまで入って来ないで!!」
愛原「んん!?」
私が首を傾げていると、女子トイレから水を流す音が聞こえた。
その音からして、こっちの女子トイレもリサの嫌いな和式らしい。
しばらくして、忌々しさの表情を浮かべたリサがトイレかに出て来た。
愛原「リサ、いくら和式だからって、そんな叫ばなくても……」
リサ「違うの!これ見てよ!」
リサが私を誰もいない女子トイレに招き入れる。
やはりこっちの女子トイレも昭和時代のままの古いトイレだったが、個室の1つがガラス張りになっていた。
しかも、便器も一段高くなっており、これで外から排泄している状況が丸見えだ。
ん!?これって……。
リサ「アンブレラの研究所にあったヤツと同じ!」
そ、そうだ。
リサ達は実験と称して、『日本版リサ・トレヴァーの排泄観察』と銘打った、羞恥プレイをさせられていたのだ。
まだ年端も行かぬ少女達をガラス張りの和式トイレで排泄させ、それを多くの研究員(もちろん男)が観察するという実験。
この時既にBOW化していたリサですら、恥ずかしさのあまり、死にたいと思ったらしい。
そのトラウマが今でも残っているのだ。
リサ「用を足していたら、いきなりガラス張りになったの!」
愛原「ええっ!?」
やはりここは、日本アンブレラの施設だったのだと改めて思い知らされる。
すると、エレベーター前の照明を点灯させた執事が申し訳なさそうにやってきた。
執事「実は電源を復旧する作業をしていたのですが、その際に誤ってトイレの操作盤に触れてしまいまして……」
どうやらリサに起きた現象は、執事のミスらしい。
リサは鬼化すると、瞳を赤く鈍く光らせた。
そして、牙を剥いて……。
リサ「殺してやろうか……!?」
愛原「リサ、やめなさい」
リサ「だって……」
愛原「執事さんだってワザとじゃなかったんだから」
執事「誠に、申し訳ございません」
愛原「ほら、謝ってるんだしさ」
リサ「むー……!」
執事「エレベーターのご用意ができました。これで3階まで参りましょう」
執事はそう言うと、上のボタンを押して、鉄格子状の扉を開けた。
乗り込んでみると、富士宮の別荘のそれよりも広く、扉は自動で開閉した。
エレベーターの中は明るい。
執事「それでは3階へ参ります」
執事はエレベーターボーイの如く、扉を閉めた。
そして、レバーを操作する。
扉は自動開閉でも、昇降機の捜査は手動のようだ。
愛原「まるで、日本橋高島屋のエレベーターみたいだな……」
私はそう呟いた。
ただ、高島屋のエレベーターはもう少し動きが速いのに対し、こちらは少し遅い。
駆動方式が違うのだろうか。
そして、先ほどまで夕食会が行われていた3階に到着した。
斉藤元社長が立ち去った後、私はロビーの公衆電話で善場係長に電話を掛けた。
愛原「もしもし、善場係長ですか!?」
私は斉藤元社長に先ほどまで会ったことを話した。
そして、今はタクシーで逃走した事を話した。
善場「かしこまりました!通報ありがとうございます!至急、手配を行います!斉藤容疑者との会話内容は覚えてますでしょうか?」
愛原「一応、ボイスレコーダーを仕掛けておきました。後で、録音状況を確認したいと思います」
善場「ありがとうございます。因みに斉藤元社長は、どちら方面に逃げたか分かりますか?」
愛原「そうですねぇ……。ペンションの前は国道から入って、基本的には一本道なんです。まあ、未舗装の林道に入る道もあったりはしますが、舗装された道という意味では……。で、斉藤さんは普通のタクシーで逃走しましたから、それがこんな大雨の中、未舗装の林道に入るとは思えません。ここは素直に、国道方面に向かって逃げたものと思われます」
善場「国道というのは145号線ですね?」
愛原「そうです!」
善場「かしこまりました。幸い所長方のいらっしゃる○×地区には、駐在所もありますから、警察への通報はこちらからしておきます」
公安調査庁の職員には、直接的な逮捕権は無い。
こういう場合は、ライバルの警察に任せるようだ。
まあ、委託業者たる私が有力な情報を捕まえたというだけでも、善場係長達の手柄になるのだろう。
愛原「BSAAには通報しないのですか?」
善場「今、そちらの天候はどんな感じですか?大雨、暴風警報が出ているようですが?あとは洪水注意報と雷注意報も出てますね」
愛原「あ、はい。今、かなり大雨が降っていて、雷もドッカンドッカン鳴っている状態です。今、外に出るのは危険ですね。斉藤さん、よくこんな中、逃げたもんだ」
善場「天候が悪いと追跡も難しいですから。そんな状態では、ヘリコプターなんか飛ばせませんね?」
愛原「あー、そうか」
善場「最後に、元社長が乗ったタクシー会社やナンバーとかは覚えてますか?」
愛原「あ、はい」
私はここの地元のタクシー会社であることと、車のナンバーを伝えた。
善場「ありがとうございます!所長、これからの御予定は?」
愛原「五十嵐元社長と会う予定です。デイライトさん的に、五十嵐元社長は、あまり警戒していないんですよね?」
善場「法的には今のところ何の問題もありません。五十嵐も社長は懲役5年の実刑判決を受けましたが、それまで警察の留置施設や拘置所に収容されていた期間を差し引きまして、2年ほどで出所してますね。それ以降、特に法的問題を起こしているわけではないので、そこは斉藤容疑者よりも問題はありません。ただ、彼は全てを話したという感じは全くしませんので、できればそこの辺り、情報を引き出して頂ければと思います」
愛原「分かりました。頑張ってみます。では、失礼します」
私は電話を切った。
すぐに通報するということだったが、案外長電話してしまった感はある。
恐らく、善場係長はデイライトの事務所辺りにいて、電話もスピーカーホンにしていたと思われる。
で、すぐ近くにいる同僚や部下に私の通話内容を聞いてもらって、代わりに警察機関に通報したのだろう。
しかし、どうして斉藤元社長は、まだ逃走を続けようとするのだろう?
各製薬会社に入り込んだという“コネクション”のスパイは、全員炙り出しに成功し、それをもって司法取引を計るということだが、逃走してしまっては意味が無いのではないか?
私がそんなことを考えていると……。
執事「愛原様」
後ろから執事に声を掛けられた。
執事「御主人様がお会いになるとのことです。御案内させて頂きますが、準備の方は宜しいでしょうか?」
愛原「あ、はい」
リサ「その前に、トイレに行きたい」
執事「かしこまりました。御案内致しましょう」
ついでに私も行ってこようかな。
愛原「じゃあ、俺も行こう」
私も執事の後ろをついて行った。
階段を回り込んで、1階の奥に行くと、共用トイレがあった。
どうもこの辺りは薄暗い。
シックな雰囲気を出す為に、わざと薄暗い照明を使っているというわけではなく、本当に暗いのである。
トイレ前の廊下、更に奥に続いていて、そこなんか真っ暗である。
だが、よく目を凝らしてみると……。
愛原「エレベーターだ」
エレベーターらしき物が見えた。
それも、扉が鉄格子になっているタイプ。
静岡県富士宮市郊外の、斉藤元社長の隠し別荘にあった物と似たタイプであった。
だが、稼働していないようだ。
執事「エレベーターでございます。……そうですね。御主人様は3階にいらっしゃいますし、あのエレベーターで参りましょうか」
愛原「動くんだ!?」
執事「はい。今は電源を落としているだけでございます。電源を入れて参りますので、先にお手洗いの方を……」
愛原「あ、ああ」
さすがにトイレは男女別になっている。
トイレの中は、もう少し明るかったが、それでも……。
何か古くて、やっぱり陰気臭いトイレなのだった。
トイレはリニューアルしていないようだ。
そんなことを考えながら、未だに水洗が押しボタン式の小便器の前に立って用を足していると……。
リサ「ぎゃあああああっ!!」
リサの悲鳴が聞こえた。
愛原「な、何だ!?」
私は急いで用を足し終わると男子トイレを飛び出し、女子トイレのドアをノックした。
愛原「リサ!リサ!何があった!?」
リサ「先生!入っちゃダメーっ!!」
愛原「な、何だって!?何があったんだ!?」
リサ「わたしがいいって言うまで入って来ないで!!」
愛原「んん!?」
私が首を傾げていると、女子トイレから水を流す音が聞こえた。
その音からして、こっちの女子トイレもリサの嫌いな和式らしい。
しばらくして、忌々しさの表情を浮かべたリサがトイレかに出て来た。
愛原「リサ、いくら和式だからって、そんな叫ばなくても……」
リサ「違うの!これ見てよ!」
リサが私を誰もいない女子トイレに招き入れる。
やはりこっちの女子トイレも昭和時代のままの古いトイレだったが、個室の1つがガラス張りになっていた。
しかも、便器も一段高くなっており、これで外から排泄している状況が丸見えだ。
ん!?これって……。
リサ「アンブレラの研究所にあったヤツと同じ!」
そ、そうだ。
リサ達は実験と称して、『日本版リサ・トレヴァーの排泄観察』と銘打った、羞恥プレイをさせられていたのだ。
まだ年端も行かぬ少女達をガラス張りの和式トイレで排泄させ、それを多くの研究員(もちろん男)が観察するという実験。
この時既にBOW化していたリサですら、恥ずかしさのあまり、死にたいと思ったらしい。
そのトラウマが今でも残っているのだ。
リサ「用を足していたら、いきなりガラス張りになったの!」
愛原「ええっ!?」
やはりここは、日本アンブレラの施設だったのだと改めて思い知らされる。
すると、エレベーター前の照明を点灯させた執事が申し訳なさそうにやってきた。
執事「実は電源を復旧する作業をしていたのですが、その際に誤ってトイレの操作盤に触れてしまいまして……」
どうやらリサに起きた現象は、執事のミスらしい。
リサは鬼化すると、瞳を赤く鈍く光らせた。
そして、牙を剥いて……。
リサ「殺してやろうか……!?」
愛原「リサ、やめなさい」
リサ「だって……」
愛原「執事さんだってワザとじゃなかったんだから」
執事「誠に、申し訳ございません」
愛原「ほら、謝ってるんだしさ」
リサ「むー……!」
執事「エレベーターのご用意ができました。これで3階まで参りましょう」
執事はそう言うと、上のボタンを押して、鉄格子状の扉を開けた。
乗り込んでみると、富士宮の別荘のそれよりも広く、扉は自動で開閉した。
エレベーターの中は明るい。
執事「それでは3階へ参ります」
執事はエレベーターボーイの如く、扉を閉めた。
そして、レバーを操作する。
扉は自動開閉でも、昇降機の捜査は手動のようだ。
愛原「まるで、日本橋高島屋のエレベーターみたいだな……」
私はそう呟いた。
ただ、高島屋のエレベーターはもう少し動きが速いのに対し、こちらは少し遅い。
駆動方式が違うのだろうか。
そして、先ほどまで夕食会が行われていた3階に到着した。
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