報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“アンドロイドマスターⅡ” 「臨時列車は定期列車の折り返し」

2019-05-01 20:24:59 | アンドロイドマスターシリーズ
[4月27日12:28.東京都千代田区丸の内 JR東京駅・東北新幹線ホーム]

〔「22番線に停車中の列車は12時28分発、“はやて”337号、盛岡行きです。まもなくの発車となります。ご利用のお客様は、車内でお待ちください」〕

 16両編成の列車が発車を待つホーム。
 但し、東海道新幹線のそれと違い、10両編成と6両編成を繋いだものである。
 敷島達は10両編成側(E5系)の方に乗っていた。
 東海道新幹線ホームと違い、こちらは発車ベル(電子電鈴)が流れる。

〔22番線から、“はやて”337号、盛岡行きが発車致します。次は、上野に止まります。黄色い線まで、お下がりください〕

 東北新幹線ホームには安全柵(ホームドア)が無い。
 これは東海道新幹線と違って、車両規格が統一されておらず、ドアの位置が形式によってバラバラになるからである。
 また、編成も6両編成から17両編成までバラバラだ。
 これでは安全柵など設置できないだろう。
 “はやて”337号もフル規格のE5系と在来線規格のE6系という規格違いの編成になっている。

〔「22番線、ドアが閉まります。ご注意ください」〕

 ピー!という客終合図のブザーと共にドアが閉まる。
 全車両指定席の臨時列車ということもあってか、駆け込み乗車は無かったようである。
 新型のインバータの音を響かせて、列車は定刻通りに発車した。

 シンディ:「社長、食後のコーヒーはありませんから」
 敷島:「あ、何だって?」
 シンディ:「臨時列車には車内販売はございませんことよ」
 敷島:「アリスだな!」

 もっとも、定期列車とて車内販売の営業は縮小傾向にある。
 東海道新幹線では“こだま”の車販営業は全廃となったが、東北新幹線でも定期列車の“はやぶさ”“こまち”“つばさ”以外では行わなくなったようである。
 ただ、それに関しては作者も文句は言えまい。
 ここ最近は車販係に声を掛けるのも億劫になり、売店で買う方が楽だと感じるようになっていた。
 恐らく、そういう人間が増えたのだろう。
 スマホアプリで注文できるというのなら、車販の利用者も確保できるのだろうが、恐らくJR的にはそこまでの投資価値が見出せなかったのかもしれない。
 そもそも作者自身が鉄道よりもバスにシフトしつつあるというのもある。

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。この電車は、東北新幹線“はやて”号、盛岡行きです。次は、上野に止まります。全車両指定席で、自由席はございません。お客様に、お願い致します。……〕

 敷島達はグリーン車に乗っている。
 さすがにグランクラスは本社の重役クラスくらいでないとダメであろう。
 本社の役員としては末席、いくつもある子会社のうちのたかが1つの責任者というだけでは、グリーン車がせいぜいである。
 シンディなどは立場上、敷島の護衛として、ボーカロイドの鏡音リン・レンは今や敷島エージェンシーの稼ぎ手ということでこの車両の乗車が許されている。
 今回のゴールデンウィークのイベントやライブ出演のギャランティだけで、【お察しください】。
 『スター1人抱えるだけでビルが建つ』というのは芸能界の名言だそうだが、敷島エージェンシーの場合は既に6機も抱えている。
 ただ、どうしても人間よりは低く見積もられてしまうのが実情だ。
 しょうがないので、敷島エージェンシーとしては他に量産型のボーカロイドを投入せざるを得ないのである。
 しかし、彼女らには人件費が掛からない代わり、整備費用は掛かる。
 まだ、大型車並みの整備費用で済んでいるからいいようなものの……。
 また、アイドルとして活動する以上、衣装代とかも掛かる点においては人間と変わらない。
 更には他の事務所もボーカロイドを投入する所が出始めており、けして敷島エージェンシーだけのオリジナルでは無くなっているのも頭の痛い所だ。

 敷島:「よし!今度は飛行機で移動しよう!」
 シンディ:「私達が護衛できなくなりますので、恐らく許可はされないかと」
 敷島:「くそ……!ごちそうさま!」

 敷島は昼食の駅弁を平らげた。

 シンディ:「食後のお茶のお代わりはございます」
 敷島:「ペットボトルじゃねーかよ。お前もモデルの仕事受けてくれよ?」
 シンディ:「用途外でございますので、お受け致しかねます」
 敷島:「全く……。メイドの仕事はやるくせに」

 アリスにこの辺を改良してくれるよう頼んだ敷島だったが、どうもロックが掛かっていてダメらしい。
 製作者のウィリアム・フォレスト博士でないと分からないらしく、しかもそれは前期型のシンディの暴走に巻き込まれて死んでいる。

 鏡音リン:「わたしも、ご馳走様」

 リンは座席の肘掛けの下にあるコンセントから、充電用のプラグを引き抜いた。

 敷島:「リンのバッテリーは、まだ98%もあるだろ」
 リン:「『甘い物は別腹』だYo?しゃちょー」
 敷島:「たかが電気だろうが」

 新幹線車両から供給される電気は、リンにとってスイーツなのだろうか。

[同日12:53.天候:曇 埼玉県さいたま市大宮区 JR大宮駅・東北新幹線ホーム]

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。まもなく、大宮です。大宮の次は、仙台に止まります〕

 列車が大宮駅に接近する。
 自動放送が簡素なのは、全車両指定席の列車で、その利用者が大宮駅で降りることはないとされるからだ。
 これは東京〜大宮間では指定席の発売を行わないことを意味する。
 列車が大宮駅17番線に入線し、ドアが開くと見慣れた顔が乗り込んで来た。

 エミリー:「社長、お疲れ様です」
 アリス:「シンディ、ご苦労さん」
 敷島:「はは、よう!」
 シンディ:「恐れ入ります」

 シンディはサッと立って、敷島の隣席をアリスに譲った。
 鋼鉄姉妹は鏡音リン・レンの前に席を移動した。

 鏡音リン:「おー、トニー君!大きくなったねぇ!」
 鏡音レン:「変わらないのは僕達くらいか」

 大宮駅の停車時間は短く、すぐに発車した。

 リン:「こっちに来てお姉ちゃん達とゲームしよーYo~!」

 こういう時、子供の相手はリン達の方が適切のようである。
コメント
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