報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“アンドロイドマスターⅡ” 「仙台入り」

2019-05-03 17:41:52 | アンドロイドマスターシリーズ
[4月27日14:07.天候:晴 宮城県仙台市青葉区 JR仙台駅]

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。まもなく、仙台です。仙石線、仙山線、常磐線、仙石東北ライン、仙台空港アクセス線、仙台市営地下鉄南北線と東西線はお乗り換えです。お降りの際はお忘れ物の無いよう、お支度ください。仙台の次は、古川に止まります〕

 列車が仙台市内に入ると速度を落とし始めた。

 敷島:「ボーカロイド営業、発祥の地に到着だ」
 アリス:「マルチタイプの日本国内における活動開始の発祥でもあるわけね」
 敷島:「そういうことだな」

〔「到着ホーム11番線、お出口は右側です。仙台からのお乗り換えをご案内致します。……」〕

 敷島エージェンシー所属のボーカロイドとしては(設定年齢)最年少の鏡音リンとレンが、充電コンセントを抜いた。

 鏡音リン:「エネルギー充電100%」
 鏡音レン:「同じく」
 敷島:「ルンバが自分で充電しに行くというだけでも凄いのに、こっちはとっくにやってるからな」

 列車は下り副線ホームに入線した。
 終着というわけでもないし、速達列車に接続するというわけでもないのに、何故か本線ではなく副線に入る列車が多い。

〔「ご乗車ありがとうございました。仙台、仙台です。お忘れ物、落し物の無いようご注意ください。11番線の電車は全車両指定席の“はやて”337号、盛岡行きです。……」〕

 ここで降りる面々。

 敷島:「先にホテルに荷物を置いて行こう。もうチェックインできるはずだから」
 エミリー:「かしこまりました。それでは、こちらへ」
 リン:「ちょっと待って。トニー君、発車する所見たいんだって」
 敷島:「そうか」

 “はやて”337号は2分停車である。
 敷島達の乗ったE5系10両編成の前にはE6系6両編成が連結されている。
 これで16両編成という新幹線ならではの編成車両数を誇ってはいるが、フル規格の編成ではない。
 リンとレンがトニーをE6系の前まで連れて行った時だった。

 リン:「!」

 11号車はE6系のグリーン車である。
 そこからメイドロイドが降りて来るのが分かった。
 どうやら量産型のようである。
 誰かと一緒のようだから、付き人としての任務だろう。
 そうしているうちに、発車メロディが鳴り響く。
 “青葉城恋唄”の生演奏を録音したものである。

〔11番線から、“はやて”337号、盛岡行きが発車致します。次は、古川に止まります。黄色い線まで、お下がりください〕

 鏡音レン:「もうすぐ発車するよ」
 トニー:「おー!」

〔「11番線、ドアが閉まります。ご注意ください」〕

 ピー!という客終合図と共に、リンは背後で大きな音を聞いた。

 鏡音リン:「!!!」

 振り向くと険しい顔をしたマルチタイプ姉妹、エミリーは件のメイドロイドを抱え上げて飛び、シンディは敷島夫妻を庇うような恰好になっていた。
 エミリーのブーツに仕掛けられた超小型ジェットエンジンは大きく噴いて、駅の外へと飛び出す。
 更にエミリーは駅の上空まで高く上がると、メイドロイドを放り投げた。
 と、同時に爆発する。
 駅の上空で大きな爆発音が響いた。

[同日16:00.天候:晴 宮城県仙台市青葉区 ホテル法華クラブ仙台]

 敷島:「あれは俺達を狙ったテロだったのか?」
 アリス:「分からないわね」

 あの後、警察から事情を聞かれた敷島達だった。
 エミリー達、マルチタイプはメイドロイドの体内に爆弾が仕掛けられていたことを見抜いた。
 そして、それが起動中であったことも。
 爆発の規模からして、もしホーム上で爆発していたら、敷島達はもちろん、ホーム上や列車にまで被害が及んでいたことだろう。

 敷島:「鷲田警視に頼んで、そろそろエミリーにも表彰状出してもらうように言っておくよ」

 どうしても表彰されるのは、持ち主の敷島になってしまうのだが。

 エミリー:「私は別に結構です。社長方が御無事であれば」
 敷島:「いやいや。犬に感謝状が出るくらいだぞ?ロイドに出してやったっていいだろうが」
 アリス:「それにしても、何だか中途半端ね」
 敷島:「何が?」
 アリス:「静岡の時でもタカオが行く先で爆発したでしょ?」
 敷島:「富士宮な。新幹線が遅れて助かったよ」
 アリス:「で、今回は仙台駅のホームと」
 敷島:「そうだな」
 アリス:「やろうと思えば走行中の新幹線を爆弾テロできるのに、どうしてわざわざ新幹線を降りてから狙うようなことをするのかしら?」
 敷島:「無差別テロをする気はなく、ただ俺を狙いたいんだろう」
 アリス:「それでも静岡の時はドクター吉塚の親族が殺されたわけでしょ?」
 敷島:「もしかしたら富士宮のは、俺じゃなくてその親族殺しが目的だったのかもな。俺はついでで」
 アリス:「えっ?」
 敷島:「あの列車やホームにも、もしかしたら吉塚家の親族がいたのかもしれないぞ?」
 アリス:「そうなの?」
 敷島:「分からんが、そのついでに俺達も殺れれば万々歳的な?」
 アリス:「変なの」
 敷島:「テロリズムなんて、往々にして変なものさ」

 敷島がロビーのソファに座りながら肩を竦めると、シンディが戻って来た。

 シンディ:「お待たせしました。チェックインの手続きが終わりましたので、参りましょう」
 敷島:「おっ、ご苦労さん」

 一行はエレベーターで客室フロアへと上がる。

 シンディ:「こちらですね」

 ツインルームが2つ取られていた。
 ツインといっても、エキストラベッドを使ってトリプルにできるタイプである。

 敷島:「リンとレンはそっちの部屋を使ってくれ。俺達はこっちを使う」
 リン:「はーい」
 レン:「分かりました」

 敷島の部屋はシンディが、鏡音姉弟の部屋はエミリーが護衛に入る。

 敷島:「俺、エミリーにいてもらいたいんだけど?」
 アリス:「変な気起こしたら、シンディに電気流してもらいまいすからね」
 シンディ:「お任せを」

 シンディ、左手からバチッと火花を一瞬飛ばした。

 敷島:「マジかよ……」
 アリス:「トニーはママと寝ましょうね」
 トニー:「オラ、シンディと一緒がいい」(野原しんのすけ風に)
 敷島:「なにっ?トニーはエミリー派じゃなく、シンディ派だと?」
 シンディ:「御指名ありがとうございます。シンディです」
 敷島:「キャバ嬢みたいなこと言うな!とにかく、荷物を置いたら会場の下見に行くぞ。今、設営やってるはずだから」
 アリス:「私はトニーと街中でも歩いてるわ。ディナーの時間まで戻って来てね」
 敷島:「分かった分かった。取りあえず、リン達と合流だ」

 敷島は部屋の内線電話を取ると、すぐ隣の部屋に出発の合図を入れた。
コメント (1)
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