報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「こだま637号」

2019-05-26 20:36:02 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[5月13日07:43.天候:晴 東京都千代田区丸の内 JR東京駅・東海道新幹線ホーム]

〔まもなく14番線に、7時56分発、“こだま”637号、新大阪行きが到着致します。安全柵の内側まで、お下がりください。この電車は、各駅に止まります。グリーン車は8号車、9号車、10号車。自由席は1号車から7号車までと13号車、14号車、15号車です。……〕

 ホームに落ち着いた感じの中年女性の声の自動放送が流れる。
 東北新幹線ホームと違うのは、英語放送が付いていないことだ。
 この理由については、今も分からない。

〔「14番線、お下がりください。7時56分発、“こだま”637号、新大阪行きの到着です。安全柵から離れてお待ちください」〕

 但し、駅員が肉声で英語放送はする。
 ただ、お世辞にも上手いと言えるかどうかは【お察しください】。
 しばらくして、列車が入線して来る。
 16両編成という長編成で、自由席のある前の車両が停車する所で待っていると、結構高速で入線してくる感じだ。
 大井車両基地から整備済みの車両を回送して来たのか、既に座席は進行方向を向いている。
 つまり、回送で来る時には座席は反対方向を向いているわけだ。
 これは逆もまたしかり。
 東京到着の列車が回送で大井基地まで戻る時は、いちいち座席は回転させずに回送する。

 稲生:「N700だ」
 鈴木:「ぶっちゃけ今、普通の700系って走ってるんですか?」
 稲生:「JR西日本のだったらあるかもね」

 尚、鈴木は稲生にルーシー達を紹介された。
 鈴木は外国語が喋れないのだが、そこは富裕層。
 ポケトークを使って、瞬時に日本語をイギリス英語に通訳する。
 もちろんそれで通じたのだが、ルーシーは自分達は魔法で通訳できるからと使用を拒否られた。
 握手もまたルーシーが険しい顔をして応じたのだが、ゼルダとロザリーは応じなかった。

 列車が停車し、安全柵のドアが開く。
 その際に鳴り響くメロディは“乙女の祈り”。

〔「14番線、ドアが開きます」〕

 車両のドアが開いて、稲生達は自由席車両に乗り込んだ。
 “のぞみ”や“ひかり”の自由席は車両が少ないせいか混んでいるが、“こだま”は空いている。

 鈴木:「向かい合わせにしましょうか?3人席も向かい合わせに……」
 マリア:「いや、いいよ。ルーシー達はこっちの3人席に座って。私は前の席に座る」
 ルーシー:「分かった」

 マリアが3A、稲生が3B、鈴木が3C、ゼルダが4A、ロザリー4B、ルーシーが4Cといった席順。

〔ご案内致します。この電車は“こだま”号、新大阪行きです。新大阪までの各駅に停車致します〕

 席に座ると、駅の売店で買った弁当やお茶をテーブルの上に出す。

 鈴木:「車だとこういう楽しみがありませんからねぇ……」
 稲生:「サービスエリアに途中寄って食べる感じ?」
 鈴木:「そうです。何だかその時間が勿体無いと思いましてですねぇ……」
 稲生:「情緒はあるけど、あまり御登山の往路で情緒に拘ると、後でガチ勢に何言われるか分かんないからなァ……」
 鈴木:「いや、全くです」

[同日07:56.天候:晴 東海道新幹線637A1号車内]

〔「レピーター点灯です」〕

 発車の時間が迫り、ホームに発車メロディが鳴り渡る。
 これはかつて、“のぞみ”用の300系電車で車内チャイムとして流れていたものだ。

〔14番線、“こだま”637号、新大阪行きが発車致します。ドアが閉まります。ご注意ください。お見送りのお客様は、安全柵の内側までお下がりください〕
〔「ITVよし!乗降よし!14番線、ドアが閉まります。ご注意ください」〕

 ブー!というけたたましい客終合図のブザーが聞こえて来る。
 これでもって、車掌がドアを閉めるのである。
 と、同時に安全柵のドアが再び“乙女の祈り”を流しながら閉まる。
 そして、列車がスーッと走り出した。
 14番線と15番線ホームは元々東北新幹線用のホームとして用意されていたものなので、東北新幹線ホームと並行している。
 その分、他の東海道新幹線ホームよりも曲がっている。
 それが発車時の速度制限に影響があるのか分からないが、ポイント通過の関係もあるのか、ある程度の速度まで達した所で加速が止まった。

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。今日も新幹線をご利用くださいまして、ありがとうございます。この電車は“こだま”号、新大阪行きです。新大阪までの各駅に停車致します。次は、品川です〕

 JR東海の車両における車内チャイムは、TOKIOの“AMBITIOUS JAPAN”。
 始発と終点ではイントロ部分が流れる。
 途中停車駅の場合は、サビの部分らしい。

 稲生:「マリアさん。新富士駅からバスがありますので、これで……」
 マリア:「分かった」

 稲生はマリアにバスの乗り場や時刻を教えてあげた。

 稲生:「これで帰りはまた新富士駅で待ち合わせして、また皆で東京に戻ればいいと思います」
 マリア:「そうだな」

[同日09:07.天候:晴 静岡県富士市 JR新富士駅]

 新横浜〜小田原間は駅間距離が長いので、“こだま”でも最高速度の285キロで走行する。
 また、地平区間でもあるので、結構なスピード感もある。
 初めて高速列車に乗ったルーシー達は、このスピードに驚喜した。
 ホウキでもここまでのスピードは出せない。
 ドラゴンで飛行する場合は、新幹線並みのスピードなのだそうだ(ドラゴンの種類による)。
 そして、右手の車窓に富士山が見えてきた時、空いている2人席の窓から写真を撮るルーシーの姿があった。
 この辺は普通の外国人観光客のようである。

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。まもなく、新富士です。新富士の次は、静岡に止まります〕

 東京駅から1時間ちょっとで下車駅に近づく。
 本当はもっと早く到着できるのだろうが、いかんせん、通過線のある駅では必ず後続列車に抜かれるダイヤになっている為、それで遅くなるのだ。
 後続の“のぞみ”や“ひかり”が高速で追い抜いて行く様についても、魔女達には新鮮さがあったようだ。

〔しんふじ、新富士です。しんふじ、新富士です。ご乗車、ありがとうございました〕

 副線ホームに入る為にポイントの通過があり、それで列車が少し揺れる。
 ドアが開いて稲生達が降りると、すぐに後続列車が高速で通過していく。
 秒単位の時刻の正確さは、日本の新幹線の大きな売りの1つである。
 それでも5分停車ということだから、けして抜かれるのは一本だけではないということ。

 マリア:「駅の外に出れば、もっと富士山がよく見えるよ」
 ルーシー:「そう」

 階段を下りて改札口を出る。
 富士山口と呼ばれる北口に行くと、バスターミナルがあった。

 稲生:「ここで一旦お別れですね。また夕方、このバスターミナルで会いましょう」
 マリア:「うん。先導ありがとう」
 稲生:「いえいえ」

 しかし、後にアクシデントが起ころうとは、この時点ではまだ誰も気づかない。
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“大魔道師の弟子” 「大宮から東京へ」

2019-05-26 16:29:40 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[5月13日06:28.天候:晴 埼玉県さいたま市大宮区 JR大宮駅・京浜東北線619B電車1号車内]

〔おはようございます。本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。2番線に停車中の電車は、6時28分発、各駅停車、大船行きです。発車まで、しばらくお待ちください〕

 稲生とマリアは大宮駅から京浜東北線の電車に乗った。
 この路線なら多少時間は掛かるものの、電車は必ず当駅折り返しとなる為、着席は確実である。

〔この電車は京浜東北線、各駅停車、大船行きです〕
〔This is the Keihin-Tohouku line train for Ofuna.〕

 どんどん座席は埋まって行き、ついには満席となる。
 通勤客の多さから、今日が平日であるということを見せつけられる。

〔「京浜東北線各駅停車、大船行き、まもなく発車致します」〕

 後続列車が入線してきて、それと行き違えるかのように発車の放送が車内に響いた。
 この時点で立ち客も出ているほど。
 2番線で流れる発車メロディは、朝からパンチの効いたもの。
 これは大宮アルディージャの応援ソング、“Vamos Ardija”が原曲である。

〔2番線、ドアが閉まります。ご注意ください。次の電車をご利用ください〕

 一回再開閉をした後で、やっとドアが閉まる。
 スーッと走り出して、ポイントを渡る為に電車が揺れた。

〔JR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。この電車は京浜東北線、各駅停車、大船行きです。次はさいたま新都心、さいたま新都心。お出口は、右側です〕
〔This is the Keihin-Tohouku line train for Ofuna.The next station is Saitama-Shintoshin.The doors on the right side will open.〕

 稲生:「ふと気づいたことがあるんですが……」
 マリア:「なに?」
 稲生:「ルーシーさん達、ホテルから東京駅に向かうじゃないですか」
 マリア:「そうだな」
 稲生:「鈴木君もあの近くに住んでるんですよ。東京駅で紹介することになってるのに、あそこの時点で鉢合わせになったりしないかなぁ……と」
 マリア:「それは大丈夫だろう。あの3人、ホテルからタクシーで行くと言ってる。鈴木が何で来るか知らないけど、まさか同じタクシーに同乗してはこないだろう」
 稲生:「それならいいんですけどね」

[同日07:22.天候:晴 東京都千代田区丸の内 JR東京駅]

 途中、浦和駅では、今度は浦和レッズの応援歌が原曲の発車メロディが流れる。
 但し、大宮駅は始発駅なのでフルコーラス流れる確率が比較的高いが、途中駅の浦和駅では【お察しください】。
 だったら南浦和駅の方が2〜3本に1本は始発駅になるのでフルコーラスの確率が高くなるのだが、そこではレッズのホームから離れているというジレンマ。
 もっとも、本来のレッズのホームグラウンド最寄り駅は浦和みs【バキューン!】。

 電車は都心に近づく度に、車内の乗客を増やしていく。
 1つ手前の神田駅もオフィス街なのか下車客が多く、場合によってはそこで車内に余裕が出る(空席が出るほどではない)。
 あとは大手町や丸の内の高層ビルを左右に見ながら、京浜東北線の中間地点である東京駅に向かう。

〔「ご乗車ありがとうございました。まもなく東京、東京です。車内にお忘れ物の無いよう、お降りください」〕

 そして電車がホームに滑り込む。

〔とうきょう〜、東京〜。ご乗車、ありがとうございます。次は、有楽町に止まります〕

 ここで降りる乗客は多い。

 稲生:「降りますよ」
 マリア:「ああ、分かった」

 稲生はマリアの手を取って電車から降りた。
 向かい側のホームでは、山手線の電車が発車していく所だった。
 山手線から降りて来た乗客も合わせ、ホームは多くの人出で賑わう。
 その為か、基本的にはホームは広めに造られている。
 初心者が面食らうのは、ホームではなく、その下のコンコース。
 平日・休日問わず、こちらはカオスな状態である。
 特に京葉線に向かう南口側は上級者向けかもしれない。
 稲生はマリアを手を握って、対向してくる乗客を右に左に交わしながら八重洲南口へと向かった。

 マリア:「相変わらずの人の多さ。人形を使って薙ぎ払いたくなる」
 稲生:「やめてくださいよ。せっかく今、電車がダイヤ通りに走っているんですから」
 マリア:「うん。時刻の正確さは凄い」

 で、八重洲南口改札を出る。
 すぐ左には東海道新幹線の八重洲南口があるわけだが、ここでルーシー達と合流することになっている。

 ルーシー:「マリアンナ」
 マリア:「ルーシー」

 ルーシー、ゼルダ、ロザリーはすぐにやってきた。
 ルーシーにあってはTシャツの上にパーカーを羽織り、下はジーンズをはいていた。
 普通の服も持って来ていたようである。

 ルーシー:「その恰好で山登りするの?」

 ルーシーは相変わらずブレザーにプリーツスカートをはいたマリアの服装を見て言った。

 マリア:「別に、バスで五合目までは登れるみたいみたいだし、本当に山頂まで登るわけじゃないんだから、これでいいと思う」
 ルーシー:「まあ、別にいいけど」
 マリア:「ゼルダとロザリーも、いつもの服みたいだけど?」

 そして、いつものローブを羽織っている。

 ゼルダ:「私もバスで登れる所まで行って、その周辺を散策してみるだけだから」
 ロザリー:「私も……」
 ローシー:「それで?私達は集まったけど、稲生さんの知り合いは?」
 稲生:「そろそろ来るはずなんですけど、ちょっと確認してみます」

 稲生はスマホを取り出した。

 マリア:「ルーシー達はまだ新幹線のキップを買っていないでしょう?こっちで買おう」
 ルーシー:「そうね」

 マリア達は南口にあるJR東海の出札窓口(『JR全線きっぷ売り場』と書かれている)に入った。
 ここは何か改修工事中らしく、券売機が無かった。
 仕方ないのでカウンターで直接買うことになる。
 マリアが今はだいぶ上手くなった日本語で、新富士駅までの新幹線のキップを注文した。
 だいぶ上手くなったと言っても、エレーナと比べれば、まだ発音やイントネーションに(日本人が聞いて)不自然さがある。

 鈴木:「先輩、おはようございます!」

 マリア達がJR全線きっぷ売り場にいる間、稲生は外で待っていた。
 そこへ鈴木が息せき切って走って来た。

 稲生:「鈴木君、遅かったじゃないか」
 鈴木:「すいません、寝坊しちゃって……!いやあ、間に合った間に合った!……あ、大丈夫です。ちゃんと朝の勤行はやって来ましたんで!」
 稲生:「じゃあ、マリアさん達が窓口から戻って来たら紹介するからね」
 鈴木:「お願いします!」
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