[5月8日11:00.アルカディアシティ南端村 サウスエンド監獄 視点:マリアンナ・ベルフェゴール・スカーレット]
普通の処刑が行われていたであろう場所に出た。
マリア:「Ah...what’s this?」
どうやら囚人を寝台に寝かせ、その上から処刑器具でプレスするというものらしい。
しかし、本当にそんな単純なものなのだろうか。
稲生:「この機械、死体を挟んだままですよ。気持ち悪い。……ん?でも、何か死体以外にも何か挟まってる。これ、上げられないかな?」
茶取:「電源が切れてるみたいです。……ここが電源スイッチの鍵らしいですね」
稲生:「待てよ。鍵ならさっき、事務室でいくつか取って来たな……。この鍵かな?」
稲生が小さな鍵を穴に差し込むと、ピッタリ合った。
それを回すと電源が入った。
UPと書かれたボタンを押すと、器具が上昇する。
無数の針が付いているので、いわゆる“鉄の処女(アイアン・メイデン)”の類だろうか?
マリア:「フランツ・カフカの中に出てくる看守長のセリフの機械じゃないか、これ?」
稲生:「『これから処刑する囚人に罪状を伝える必要は無い。何故なら、直接その体に刻み込むからだ』でしたっけ」
マリア:「そう」
挟まれていた死体は完全に白骨死体になっており、本当にそのような死刑が行われたのか、確認する術は無い。
死体と一緒に挟まっていたのは、何かの歯車。
直径30cmくらいはある。
稲生:「これだけ大きいんだから、何かの機械の部品だろう。持って行きましょう」
歯車を持って更に奥へ進む。
アンデッドA:「アァア……」
アンデッドB:「ウゥウ……」
途中で何回か囚人のアンデッドと遭遇するが、マリアの魔法で焼き払ったり、茶取が手足を斬り取って行動不能にしたりした。
さすがに首を一気に刎ね飛ばすのは無理だったようだ。
稲生:「見取図によると、その先が運動場です」
大きな鉄扉によって閉ざされている。
どうやらこれも電動であるようだが、電力は手動で復帰させることができた。
レバーを操作すると、機械の動く音はする。
が、鉄扉はうんともすんとも言わない。
アンデッドC:「アァア……」
アンデッドD:「ウゥウ……」
機械の音でアンデッド達が集まってくる。
早いとこ開けないと、キリが無い。
稲生:「そうだ!さっきの歯車……」
稲生はドアの横にある点検口を開けた。
その中を覗き込むと、歯車が1個無くなっているのが分かった。
稲生:「これだ!」
稲生は持っていた歯車を嵌め込んだ。
すると……。
マリア:「It’s open!」
稲生:「急いで!」
運動場に出る。
すると、鉄扉が閉まった。
鉄扉の向こうから、アンデッド達がドンドンとドアを叩く音が聞こえるが、ブチ破れそうにない。
で、この運動場兼公開処刑場にも白骨がごろごろと転がっていた。
稲生:「ここに中世の騎士風の亡霊が?」
マリア:「……らしいね」
茶取:「……いませんね」
空はどんよりと曇っている。
そして、時折雷鳴が聞こえて来た。
稲生:「このまま現れなかったら……」
しかし、そんな稲生の懸念を払拭するように、雷光と共に落雷の音が轟き、その中からそいつは現れた。
茶取:「出た!」
コウモリの翼が生えた黒馬に跨り、甲冑に身を包み、鎗を持った中世の騎士風の亡霊が現れた。
茶取:「た、確かに剣は当たりそうにない!」
馬を駆っている為か、その動きは素早い。
まずは稲生達の周りを時計回りにグルグルと回る。
今度の獲物がどんな奴らなのかを確認しているかのようだ。
マリア:「パペ、サタン、パペ、サタン、アレッペ!Fi ga!」
マリア、杖から火炎を発射する。
が、亡霊には効いていない。
稲生:「南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経……」
亡霊:「!」
亡霊は馬を止めると、鎗を空に向けた。
すると、雷がその鎗に落ちる。
自殺行為ではないか?
いや、違った。
稲生:「ぎゃっ!!」
飛び散った雷電をまともに受けた稲生。
マリア:「勇太!」
マリアが走り出す。
茶取:「スカーレットさん、危ない!」
亡霊が雷電攻撃を繰り広げてくる。
マリア:「Fuck you!こんなの聞いてない!」
茶取:「ボクも初耳です!まさか、こんな攻撃してくるなんて……危ない!」
茶取がマリアを突き飛ばす。
直後、茶取は亡霊の攻撃で感電した。
茶取:「くっ……ぐぐぐ……!」
動けなくなった茶取に対し、今度は亡霊が鎗を向けて突進してくる。
鎗は茶取の胸を狙っている。
茶取:「……くそっ!」
鎗が突き刺さる瞬間、茶取は体をよじった。
茶取:「ぎゃっ……!」
鎗は茶取の心臓を外れたものの、貫通した。
マリア:「ぱ、ハペ、サタン、パペ、サタン、アレッペ。召喚!ベルフェゴール!」
マリアは咄嗟に契約悪魔、ベルフェゴールを呼び出した。
キリスト教における7つの大罪の悪魔1つ、怠惰を司る悪魔である。
ベルフェゴール:「ハーイ」
マリア:「め、命令だ。あの亡霊を何とかしろ」
ベルフェゴール:「あれは亡霊じゃないよ、マスター」
マリア:「え……?」
ベルフェゴール:「あれはゴエティアの悪魔、エリゴスさ」
マリア:「エリゴスだって!?」
そこへ稲生との契約が内定している悪魔、アスモデウスも現れる。
ベルフェゴールが英国紳士のような恰好をしているのに対し、アスモデウスはキャバ嬢といった感じである。
ベルフェゴール:「ゴエティアの公爵様がこんな所で何をやっているんだい?いくら契約者がいなくてヒマだからといって、これはちょっと暇人過ぎるんはじゃないのかい?」
アスモデウス:「私の将来の契約者をケガさせた落とし前、付けてもらうよ?」
亡霊……いや、ゴエティアの悪魔エリゴスは狼狽していた。
そして、この場からの逃走を試みようとしたのだが……。
アスモデウス:「逃がさないよ!」
ベルフェゴール:「ボクはアスモと違ってキミに恨みは無いけど、契約なんでね。『何とか』させてもうよ」
とはいえそこは怠惰の悪魔、殆どはアスモデウスに任せっきりだった。
最後は手持ちのステッキをエリゴスに投げつけ、
ベルフェゴール:「落雷!」
そこに雷を落とし、エリゴス自身を感電させた。
アスモデウス:「悪魔界の風上にも置けないね!」
ベルフェゴール:「後で悪魔裁判を受けてもらおう」
悪魔界でも重鎮クラスにいる2人の悪魔により、エリゴスはしょっ引かれることとなった。
ベルフェゴール:「もっと早くこいつの正体を見極め、ボク達を召喚してくれたら良かったのにね」
マリア:「くっ……」
ベルフェゴール:「ああ、追加料金はサービスしておくよ。ゴエティア側から取れそうだから」
アスモデウス:「それもそうね」
悪魔達が立ち去ると、マリアは稲生に駆け寄った。
マリア:「勇太、しっかりして!」
稲生は意識こそ無かったが、生きてはいた。
マリア:(良かった……生きてる……)
茶取:「早いとこ、ここから脱出しましょう」
茶取が刀を杖代わりにして、よろよろと近づいてきた。
マリア:「ちょっと待って。師匠に助けを求める」
マリアはローブの中から水晶玉を取り出した。
マリア:「師匠、師匠。こちらマリアンナです。応答願います」
イリーナ:「あいよ。戦いの様子は見てたよ。今、迎えに行くから」
このクエストは果たして、達成という扱いでいいのだろうか。
とにかく一応、ここで悪さをしていた悪魔を退治することはできたが……。
普通の処刑が行われていたであろう場所に出た。
マリア:「Ah...what’s this?」
どうやら囚人を寝台に寝かせ、その上から処刑器具でプレスするというものらしい。
しかし、本当にそんな単純なものなのだろうか。
稲生:「この機械、死体を挟んだままですよ。気持ち悪い。……ん?でも、何か死体以外にも何か挟まってる。これ、上げられないかな?」
茶取:「電源が切れてるみたいです。……ここが電源スイッチの鍵らしいですね」
稲生:「待てよ。鍵ならさっき、事務室でいくつか取って来たな……。この鍵かな?」
稲生が小さな鍵を穴に差し込むと、ピッタリ合った。
それを回すと電源が入った。
UPと書かれたボタンを押すと、器具が上昇する。
無数の針が付いているので、いわゆる“鉄の処女(アイアン・メイデン)”の類だろうか?
マリア:「フランツ・カフカの中に出てくる看守長のセリフの機械じゃないか、これ?」
稲生:「『これから処刑する囚人に罪状を伝える必要は無い。何故なら、直接その体に刻み込むからだ』でしたっけ」
マリア:「そう」
挟まれていた死体は完全に白骨死体になっており、本当にそのような死刑が行われたのか、確認する術は無い。
死体と一緒に挟まっていたのは、何かの歯車。
直径30cmくらいはある。
稲生:「これだけ大きいんだから、何かの機械の部品だろう。持って行きましょう」
歯車を持って更に奥へ進む。
アンデッドA:「アァア……」
アンデッドB:「ウゥウ……」
途中で何回か囚人のアンデッドと遭遇するが、マリアの魔法で焼き払ったり、茶取が手足を斬り取って行動不能にしたりした。
さすがに首を一気に刎ね飛ばすのは無理だったようだ。
稲生:「見取図によると、その先が運動場です」
大きな鉄扉によって閉ざされている。
どうやらこれも電動であるようだが、電力は手動で復帰させることができた。
レバーを操作すると、機械の動く音はする。
が、鉄扉はうんともすんとも言わない。
アンデッドC:「アァア……」
アンデッドD:「ウゥウ……」
機械の音でアンデッド達が集まってくる。
早いとこ開けないと、キリが無い。
稲生:「そうだ!さっきの歯車……」
稲生はドアの横にある点検口を開けた。
その中を覗き込むと、歯車が1個無くなっているのが分かった。
稲生:「これだ!」
稲生は持っていた歯車を嵌め込んだ。
すると……。
マリア:「It’s open!」
稲生:「急いで!」
運動場に出る。
すると、鉄扉が閉まった。
鉄扉の向こうから、アンデッド達がドンドンとドアを叩く音が聞こえるが、ブチ破れそうにない。
で、この運動場兼公開処刑場にも白骨がごろごろと転がっていた。
稲生:「ここに中世の騎士風の亡霊が?」
マリア:「……らしいね」
茶取:「……いませんね」
空はどんよりと曇っている。
そして、時折雷鳴が聞こえて来た。
稲生:「このまま現れなかったら……」
しかし、そんな稲生の懸念を払拭するように、雷光と共に落雷の音が轟き、その中からそいつは現れた。
茶取:「出た!」
コウモリの翼が生えた黒馬に跨り、甲冑に身を包み、鎗を持った中世の騎士風の亡霊が現れた。
茶取:「た、確かに剣は当たりそうにない!」
馬を駆っている為か、その動きは素早い。
まずは稲生達の周りを時計回りにグルグルと回る。
今度の獲物がどんな奴らなのかを確認しているかのようだ。
マリア:「パペ、サタン、パペ、サタン、アレッペ!Fi ga!」
マリア、杖から火炎を発射する。
が、亡霊には効いていない。
稲生:「南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経……」
亡霊:「!」
亡霊は馬を止めると、鎗を空に向けた。
すると、雷がその鎗に落ちる。
自殺行為ではないか?
いや、違った。
稲生:「ぎゃっ!!」
飛び散った雷電をまともに受けた稲生。
マリア:「勇太!」
マリアが走り出す。
茶取:「スカーレットさん、危ない!」
亡霊が雷電攻撃を繰り広げてくる。
マリア:「Fuck you!こんなの聞いてない!」
茶取:「ボクも初耳です!まさか、こんな攻撃してくるなんて……危ない!」
茶取がマリアを突き飛ばす。
直後、茶取は亡霊の攻撃で感電した。
茶取:「くっ……ぐぐぐ……!」
動けなくなった茶取に対し、今度は亡霊が鎗を向けて突進してくる。
鎗は茶取の胸を狙っている。
茶取:「……くそっ!」
鎗が突き刺さる瞬間、茶取は体をよじった。
茶取:「ぎゃっ……!」
鎗は茶取の心臓を外れたものの、貫通した。
マリア:「ぱ、ハペ、サタン、パペ、サタン、アレッペ。召喚!ベルフェゴール!」
マリアは咄嗟に契約悪魔、ベルフェゴールを呼び出した。
キリスト教における7つの大罪の悪魔1つ、怠惰を司る悪魔である。
ベルフェゴール:「ハーイ」
マリア:「め、命令だ。あの亡霊を何とかしろ」
ベルフェゴール:「あれは亡霊じゃないよ、マスター」
マリア:「え……?」
ベルフェゴール:「あれはゴエティアの悪魔、エリゴスさ」
マリア:「エリゴスだって!?」
そこへ稲生との契約が内定している悪魔、アスモデウスも現れる。
ベルフェゴールが英国紳士のような恰好をしているのに対し、アスモデウスはキャバ嬢といった感じである。
ベルフェゴール:「ゴエティアの公爵様がこんな所で何をやっているんだい?いくら契約者がいなくてヒマだからといって、これはちょっと暇人過ぎるんはじゃないのかい?」
アスモデウス:「私の将来の契約者をケガさせた落とし前、付けてもらうよ?」
亡霊……いや、ゴエティアの悪魔エリゴスは狼狽していた。
そして、この場からの逃走を試みようとしたのだが……。
アスモデウス:「逃がさないよ!」
ベルフェゴール:「ボクはアスモと違ってキミに恨みは無いけど、契約なんでね。『何とか』させてもうよ」
とはいえそこは怠惰の悪魔、殆どはアスモデウスに任せっきりだった。
最後は手持ちのステッキをエリゴスに投げつけ、
ベルフェゴール:「落雷!」
そこに雷を落とし、エリゴス自身を感電させた。
アスモデウス:「悪魔界の風上にも置けないね!」
ベルフェゴール:「後で悪魔裁判を受けてもらおう」
悪魔界でも重鎮クラスにいる2人の悪魔により、エリゴスはしょっ引かれることとなった。
ベルフェゴール:「もっと早くこいつの正体を見極め、ボク達を召喚してくれたら良かったのにね」
マリア:「くっ……」
ベルフェゴール:「ああ、追加料金はサービスしておくよ。ゴエティア側から取れそうだから」
アスモデウス:「それもそうね」
悪魔達が立ち去ると、マリアは稲生に駆け寄った。
マリア:「勇太、しっかりして!」
稲生は意識こそ無かったが、生きてはいた。
マリア:(良かった……生きてる……)
茶取:「早いとこ、ここから脱出しましょう」
茶取が刀を杖代わりにして、よろよろと近づいてきた。
マリア:「ちょっと待って。師匠に助けを求める」
マリアはローブの中から水晶玉を取り出した。
マリア:「師匠、師匠。こちらマリアンナです。応答願います」
イリーナ:「あいよ。戦いの様子は見てたよ。今、迎えに行くから」
このクエストは果たして、達成という扱いでいいのだろうか。
とにかく一応、ここで悪さをしていた悪魔を退治することはできたが……。