[5月9日11:00.アルカディアシティ1番街 魔王城新館 視点:稲生勇太]
一般警備兵:「……それでは身分証を御提示を」
稲生:「はい。日本国のパスポートです」
一般警備兵:「拝見します」
稲生は別室に連れて行かれ、そこで警備兵達から身体検査を受けた。
全裸に脱がされて体の中まで調べられるのかというと、そんなことはなかった。
一般警備兵:「それでは手荷物検査とボディチェックを行います。上着を脱いでください」
せいぜい脱がされたのは上着のジャケットだけ。
そのポケットの中などは調べられたが、あとは警備兵に体の上半身から体を触られただけだった。
あとは靴の中とか、その辺は徹底している。
上級警備兵:「どうだ?」
一般警備兵:「特に異常はありません」
上級警備兵:「よし。ご協力ありがとうございました」
稲生:「いえ。マリア……いえ、別の部屋に連れて行かれた2人も同じようにするわけですか?」
上級警備兵:「そうです。何か気になることでも?」
稲生:「いえ、マリアさん達もあなた達にボディチェックを受けることになるのかなぁ……と」
上級警備兵:「そういうことですか。それなら、心配無いです。女性にあっては、うちの女性兵士が行うことになっていますから」
稲生:「あ、何だそうですか。それは良かっ……」
稲生がホッとしかけた時だった。
マリア達が通された隣の部屋から大きな音が聞こえて来た。
上級警備兵:「何だ!?」
一般警備兵:「確認してきます!」
稲生:「ぼ、僕も!」
稲生は一般警備兵に続いて部屋を飛び出し、すぐ隣の部屋に飛び込んだ。
一般警備兵:「何事だ!?」
一般警備兵が手持ちのショットガンを構えて部屋に突入する。
稲生:「マリアさん、何かありましたか!?」
だが、稲生は一瞬で何が起きたか大体分かったような気がした。
マリアもまたローブとブレザーを脱いでいた。
イリーナもローブを脱いで、イブニングドレスのようなワンピース姿である。
そこまでは稲生と同じだったのだろうが、問題はそこから。
マリアが魔法の杖を持って、睨み付けている先を見ると、そこには床に転がっている横田理事の姿があった。
横田:(@_@)~☆
稲生:「何があったんですか!?」
イリーナ:「何でもないさ。いつものことだよ。横田理事が、『それでは不肖この私めが、ボディチェックをば』と言って、手をわきわきさせながらマリアに近寄ったの。あとはまあ、【お察しください】」
マリア:「この変態野郎!」
一般警備兵:「き、気持ちは分かるが、これでもこの方は魔界共和党総務理事。それに対しての暴行は、さすがに罪である!拘束させてもらう!」
マリア:「正当防衛だろ!?」
上級警備兵:「横田理事への暴行容疑で逮捕する!」
マリア:「私こそ、こいつからのわいせつ未遂罪で告発する!」
稲生:「弁護士を呼んでくれ!」
騒然となる検査室周辺。
マリア:「放せ!不当逮捕だ!」
一般警備兵:「こら、おとなしくしろ!」
稲生:「だから弁護士を呼んでくれーっ!」
上級警備兵:「無駄な抵抗はよせ!」
と、そこへ……。
女性騎士:「どいてどいて!こら、見世物じゃないぞ!散れ!道を開けろ!」
近衛騎士団の女性騎士がやってきた。
慌てて畏まる警備兵達。
当然だ。
騎士と兵士では、まるで身分が違う。
兵士が地方公務員なら、騎士は国家公務員のようなもの。
露払いをしに来たのは騎士団の中でも、比較的新人なのだろう。
その後ろにいたのは……。
イリーナ:「おお、魔王軍のトップのお出ましだねぇ……」
安倍が『勇者』だった頃、そのパーティーには『女戦士』がいた。
その『女戦士は』は今どうしているのか?
『勇者』が首相なら、『女戦士』は国防軍の大将である。
当初はどうしても前線で戦いたい一心からか、大佐の地位にしがみついていたが、今では大将となっている。
レナ:「レナフィール・ハリシャルマンだ。覚えているかな?」
稲生:「愛称、レナ大佐……失礼!今は大将とのことですね。その節はお世話になりました……」
稲生が“魔の者”の謀略に遭い、単独でアルカディア王国の端に飛ばされた時の話。
終盤はレナ率いる飛空艇団に救助された。
安倍:「うちの横田がとんだ失礼をした!キミ達、この方達は潔白だ!悪いのは全部横田だ!」
レナ:「またヨコタかい!だいたい、何でこいつがここにいんの!?」
安倍:「全く。また始末書書いてもらうからな!」
レナ:「これで何万枚目?ケンショーカイなだけに、『なんまいだー』ってかw ハハハハハハハッ!!」
マリア:「笑いごとじゃないんですけどねぇ……」
レナ:「ああ、悪かったね」
レナも安倍と年恰好は同じのはずだから、もうアラフォー世代のはずだが、とても衰えを感じさせない。
レナ:「収監するのは横田の方だ。いつもの独房に連れて行きな」
上級警備兵:「で、ですが、この者が理事に暴行を働いたのもまた事実です。これは……」
レナ:「あァ?アベが無罪っつってんだから、無罪放免なんだよ。それとも何か?オマエらも仲良く始末書書くか?」
上級警備兵:「そ、それは……!お、おい!閣下の御命令だ!早いとこ理事をいつもの部屋にお連れするんだ!」
一般警備兵:「は、ははーっ!」
横田:「あ~れ~!れ、レナさん、鞭をプリーズ!ハァハァ……!」(*´Д`)
レナ:「誰がレナさんだ、この野郎!キリキリ歩けーい!」
こうして横田理事は警備兵達と騎士団によって連行されていった。
安倍:「また横田が悪かったね」
マリア:「私にわいせつ行為をしようとして始末書だけですか?首相は女に対する性犯罪を軽く見てるんですか?」
安倍:「いや、そんなことはない。ただ、あれでも役に立つ所はあるんだ。お詫びにほら、これをあげよう」
安倍が持って来たのは冥鉄の乗車証明書だった。
安倍:「私のサイン入りだ。これで優先的に乗車できるよ」
稲生:「優先的にって、そんなに混む列車でしたっけ?」
安倍:「まあまあ、いいじゃないか。それと、これは……うちの女王陛下からの依頼なのだが……」
稲生:「また献血ですか」
安倍:「頼めるかい?」
稲生:「いいですよ」
安倍:「今回はそれにプラス、あなたにも協力願いたい」
マリア:「私ですか?」
安倍:「うちのルーシーは、元々女性の血を欲しがるからね。ま、ルーシーに限らず、女性吸血鬼の大半がそうらしいが」
マリア:「対価はありますか?」
安倍:「今度の冥鉄列車はグリーン車が連結されるという。それのチケットも用意しよう」
マリア:「微妙ですねぇ……」
イリーナ:「まあ、いいじゃないの。今のうちに恩を売っておくのも、悪くはないと思うわ。それと総理」
安倍:「何ですか?」
イリーナ:「私達、魔王城に自由に出入りしてもよろしいですわね?」
安倍:「ああ、それはもちろん」
こうして稲生達は、晴れて堂々と入城することができた。
女王の依頼もあるのだから、当然と言えば当然だが。
一般警備兵:「……それでは身分証を御提示を」
稲生:「はい。日本国のパスポートです」
一般警備兵:「拝見します」
稲生は別室に連れて行かれ、そこで警備兵達から身体検査を受けた。
全裸に脱がされて体の中まで調べられるのかというと、そんなことはなかった。
一般警備兵:「それでは手荷物検査とボディチェックを行います。上着を脱いでください」
せいぜい脱がされたのは上着のジャケットだけ。
そのポケットの中などは調べられたが、あとは警備兵に体の上半身から体を触られただけだった。
あとは靴の中とか、その辺は徹底している。
上級警備兵:「どうだ?」
一般警備兵:「特に異常はありません」
上級警備兵:「よし。ご協力ありがとうございました」
稲生:「いえ。マリア……いえ、別の部屋に連れて行かれた2人も同じようにするわけですか?」
上級警備兵:「そうです。何か気になることでも?」
稲生:「いえ、マリアさん達もあなた達にボディチェックを受けることになるのかなぁ……と」
上級警備兵:「そういうことですか。それなら、心配無いです。女性にあっては、うちの女性兵士が行うことになっていますから」
稲生:「あ、何だそうですか。それは良かっ……」
稲生がホッとしかけた時だった。
マリア達が通された隣の部屋から大きな音が聞こえて来た。
上級警備兵:「何だ!?」
一般警備兵:「確認してきます!」
稲生:「ぼ、僕も!」
稲生は一般警備兵に続いて部屋を飛び出し、すぐ隣の部屋に飛び込んだ。
一般警備兵:「何事だ!?」
一般警備兵が手持ちのショットガンを構えて部屋に突入する。
稲生:「マリアさん、何かありましたか!?」
だが、稲生は一瞬で何が起きたか大体分かったような気がした。
マリアもまたローブとブレザーを脱いでいた。
イリーナもローブを脱いで、イブニングドレスのようなワンピース姿である。
そこまでは稲生と同じだったのだろうが、問題はそこから。
マリアが魔法の杖を持って、睨み付けている先を見ると、そこには床に転がっている横田理事の姿があった。
横田:(@_@)~☆
稲生:「何があったんですか!?」
イリーナ:「何でもないさ。いつものことだよ。横田理事が、『それでは不肖この私めが、ボディチェックをば』と言って、手をわきわきさせながらマリアに近寄ったの。あとはまあ、【お察しください】」
マリア:「この変態野郎!」
一般警備兵:「き、気持ちは分かるが、これでもこの方は魔界共和党総務理事。それに対しての暴行は、さすがに罪である!拘束させてもらう!」
マリア:「正当防衛だろ!?」
上級警備兵:「横田理事への暴行容疑で逮捕する!」
マリア:「私こそ、こいつからのわいせつ未遂罪で告発する!」
稲生:「弁護士を呼んでくれ!」
騒然となる検査室周辺。
マリア:「放せ!不当逮捕だ!」
一般警備兵:「こら、おとなしくしろ!」
稲生:「だから弁護士を呼んでくれーっ!」
上級警備兵:「無駄な抵抗はよせ!」
と、そこへ……。
女性騎士:「どいてどいて!こら、見世物じゃないぞ!散れ!道を開けろ!」
近衛騎士団の女性騎士がやってきた。
慌てて畏まる警備兵達。
当然だ。
騎士と兵士では、まるで身分が違う。
兵士が地方公務員なら、騎士は国家公務員のようなもの。
露払いをしに来たのは騎士団の中でも、比較的新人なのだろう。
その後ろにいたのは……。
イリーナ:「おお、魔王軍のトップのお出ましだねぇ……」
安倍が『勇者』だった頃、そのパーティーには『女戦士』がいた。
その『女戦士は』は今どうしているのか?
『勇者』が首相なら、『女戦士』は国防軍の大将である。
当初はどうしても前線で戦いたい一心からか、大佐の地位にしがみついていたが、今では大将となっている。
レナ:「レナフィール・ハリシャルマンだ。覚えているかな?」
稲生:「愛称、レナ大佐……失礼!今は大将とのことですね。その節はお世話になりました……」
稲生が“魔の者”の謀略に遭い、単独でアルカディア王国の端に飛ばされた時の話。
終盤はレナ率いる飛空艇団に救助された。
安倍:「うちの横田がとんだ失礼をした!キミ達、この方達は潔白だ!悪いのは全部横田だ!」
レナ:「またヨコタかい!だいたい、何でこいつがここにいんの!?」
安倍:「全く。また始末書書いてもらうからな!」
レナ:「これで何万枚目?ケンショーカイなだけに、『なんまいだー』ってかw ハハハハハハハッ!!」
マリア:「笑いごとじゃないんですけどねぇ……」
レナ:「ああ、悪かったね」
レナも安倍と年恰好は同じのはずだから、もうアラフォー世代のはずだが、とても衰えを感じさせない。
レナ:「収監するのは横田の方だ。いつもの独房に連れて行きな」
上級警備兵:「で、ですが、この者が理事に暴行を働いたのもまた事実です。これは……」
レナ:「あァ?アベが無罪っつってんだから、無罪放免なんだよ。それとも何か?オマエらも仲良く始末書書くか?」
上級警備兵:「そ、それは……!お、おい!閣下の御命令だ!早いとこ理事をいつもの部屋にお連れするんだ!」
一般警備兵:「は、ははーっ!」
横田:「あ~れ~!れ、レナさん、鞭をプリーズ!ハァハァ……!」(*´Д`)
レナ:「誰がレナさんだ、この野郎!キリキリ歩けーい!」
こうして横田理事は警備兵達と騎士団によって連行されていった。
安倍:「また横田が悪かったね」
マリア:「私にわいせつ行為をしようとして始末書だけですか?首相は女に対する性犯罪を軽く見てるんですか?」
安倍:「いや、そんなことはない。ただ、あれでも役に立つ所はあるんだ。お詫びにほら、これをあげよう」
安倍が持って来たのは冥鉄の乗車証明書だった。
安倍:「私のサイン入りだ。これで優先的に乗車できるよ」
稲生:「優先的にって、そんなに混む列車でしたっけ?」
安倍:「まあまあ、いいじゃないか。それと、これは……うちの女王陛下からの依頼なのだが……」
稲生:「また献血ですか」
安倍:「頼めるかい?」
稲生:「いいですよ」
安倍:「今回はそれにプラス、あなたにも協力願いたい」
マリア:「私ですか?」
安倍:「うちのルーシーは、元々女性の血を欲しがるからね。ま、ルーシーに限らず、女性吸血鬼の大半がそうらしいが」
マリア:「対価はありますか?」
安倍:「今度の冥鉄列車はグリーン車が連結されるという。それのチケットも用意しよう」
マリア:「微妙ですねぇ……」
イリーナ:「まあ、いいじゃないの。今のうちに恩を売っておくのも、悪くはないと思うわ。それと総理」
安倍:「何ですか?」
イリーナ:「私達、魔王城に自由に出入りしてもよろしいですわね?」
安倍:「ああ、それはもちろん」
こうして稲生達は、晴れて堂々と入城することができた。
女王の依頼もあるのだから、当然と言えば当然だが。