[6月9日20:00.岩手県岩手郡雫石町 旧国鉄橋場線・橋場駅跡 視点:マリアンナ・ベルフェゴール・スカーレット]
マリア:「It heart...」
列車は右に45度ほど傾いた状態で止まった。
イリーナ:「皆……生きてる……?」
稲生:「何とか……」
マリアはその時、車両の後ろに気が付いた。
マリア:「師匠、燃えてます!早く、列車の外に!」
稲生:「窓の外から出られます!」
客室の割れた窓から列車の外に避難する。
後ろの車両を見ると、3号車から後ろは無かった。
亜空間トンネル内で連結が外れて取り残されたか、或いは他の出口から出てしまったのかもしれない。
マリア:「とにかく、早く逃げましょう」
イリーナ:「ちょっと待って。パペ、サタン、パペ、サタン、アレッペ!……Care lu la!」
イリーナは回復魔法を掛けて、マリア達のHPを回復させた。
これで車内での戦いや、今の事故の衝撃によるケガが回復する。
直後、ボンッ!という小爆発と共に、先頭車の1号車にも引火した。
というか、列車の周りは山林のようで、そこにも火が燃え移っている!
漏れ出した軽油に引火しているらしい。
マリア:「ここから離れましょう!ここがどこだか知りませんけど!」
イリーナ:「ここがどこだか分からないと、ルゥ・ラが使えないわ!勇太君、大至急検索して!」
稲生:「わ、分かりまし……」
ボーンッ!
稲生:「うわっ、また爆発した!」
マリア:「取りあえず、あそこから逃げましょう!」
マリアは朽ち果てた石段を指さした。
イリーナ:「冥鉄の列車は鉄道以外の所に出るわけが無いのに、これは一体どういうことなのかしら!?」
マリア:「分かりませんよ!だいぶ前の時みたいに、廃線跡に出たんじゃないんですか!」
石段を駆け下りる。
だが、マリアの言う通り、本当に廃線跡なのだろう。
石段自体がボロボロになっていて、足を乗せる度に崩れてしまう。
稲生:「逆に危ないですって、これ!」
マリア:「そんなこと言ったって……!」
その時、マリアはふと気づいた。
マリア:「師匠!あれですよ!あの魔法があったでしょ!?フライ・ルゥ・ラ!」
イリーナ:「その手があった!」
フライ・ルゥ・ラというのは瞬間移動魔法たるルゥ・ラの亜種で、要はセルフ・テレキネシスのことである。
つまり、瞬間移動するのではなく、自分の体を浮遊させる魔法である。
それでもそこそこ難しい魔法なのか、ある程度階級の高い魔道士が見せびらかす移動を楽する為に使用することが多い。
イリーナ:「Fly ru ra!」
稲生:「おおっ!?」
イリーナが魔法を唱えると、3人の体が宙に舞う。
稲生:「わっ、とととと!」
マリア:「落ち着いて!」
稲生は突然自分の体が宙に舞い上がったことで、半分パニックになった。
マリアが落ち着かせようとすると、マリアに抱き着いてしまう。
マリア:「ちょ、ちょっ……!もう……」
イリーナ:「あなた達、上空でイチャつかないの」
マリア:「……だってさ。勇太、離れて」
稲生:「びっくりしたぁ……」
イリーナ:「それより、あれ見て」
イリーナはさっきまでマリア達がいた事故現場を指さした。
赤々と列車が燃え、引火した山林が燃え上がっている。
近くの道路に消防車が何台もやってきた。
で、気づいたことがある。
稲生:「すっごい田舎ですね……」
マリア:「あ、逆にここなら安全だ。勇太、ここがどこだか検索して」
稲生:「あ、はい」
稲生はスマホを取り出した。
これでグーグルマップを立ち上げ、現在地を検索する。
稲生:「岩手県岩手郡雫石町!?マジかよ……」
マリア:「遠いの?屋敷から?それとも勇太の家から?」
稲生:「どっちもです!じゃあ、あの場所って、田沢湖線の旧線かな?確かそこの終着駅の橋場駅って所が廃止になったって聞いたけど……」
マリア:「私の予想が当たりなら、きっとそこだよ。で、この近くに駅は?旧線がそれなら新線があるでしょ?」
稲生:「もちろんです。えーと……この近くだと……赤渕駅って所ですね」
イリーナ:「その駅はここから遠い?賑わってる?」
稲生:「ここから約1.5キロってところです。ここから1.5キロ行ったところで、栄えているとは思えませんね。……ああ、やっぱり無人駅みたいです」
イリーナ:「よし。だったら、そこに舞い降りても大丈夫ね。方角は?」
稲生:「この下の道路……恐らく、国道46号線ですね。その沿道にあるので、この道沿いに行けばすぐです」
イリーナ:「よし、そこまで行くわよ。……いえね、人の多くいる場所に舞い降りたら大騒ぎなるからね」
マリア:「そりゃそうだ」
市民達に不思議がられてはいたものの、“魔女の宅急便”のキキの、コリコシティ内における低空飛行はもっと大騒ぎになる事態であったはず。
稲生:「で、問題がまだあります」
イリーナ「なぁに?」
稲生:「こういうローカル線、終電がメチャクチャ早かったりするんですが、果たしてもう終電の時間じゃないのかなーって……」
イリーナ:「……取りあえず駅に行ってみましょう」
[同日21:00.同町内 JR田沢湖線・赤渕駅 視点:稲生勇太]
稲生:「取りあえず、買って来ました!」
イリーナ:「ああ、ありがとう」
稲生は買って来た飲み物をイリーナとマリアに渡した。
駅周辺に民家は立ち並んでいたので、けして寂し過ぎる場所ではない。
家々には明かりが灯っているし、そもそも駅前の国道自体が岩手県と秋田県を結ぶ動脈ということもあって、特に長距離トラックが多く行き交っている。
しかし、それ以外は確かに寂しい。
駅前に駐輪場はあるものの、数えるほどしか自転車は止まっておらず、無人駅ということもあってか、駅舎は無いし、キップ売り場も改札口も無い。
そして、そもそも自動販売機すら無かった。
誰もいないホームから周辺を見渡している時、ようやく見える場所に自動販売機を見つけたので、稲生が急いで買いに行ったのである。
で、肝心の電車の方はどうなのかというと……。
稲生:「21時9分発の盛岡行き最終、そろそろ来るんじゃないですか?」
近くで踏切の警報機の音が聞こえた。
稲生が駅の前後を見る限り、上り方向の出発信号機は赤になっている。
しかし、下り方向の出発信号機も赤になっていた。
これは下り電車がこの駅に到着して、折り返し上り電車になることに他ならない。
だから、下り場内信号機は黄色信号1つの『注意』または2つの『警戒』になっているはずである。
稲生:「おおっ、あの電車だ」
無人駅だからだろうか、接近放送などは無く、上り方向から『ワンマン』『赤渕』と表示された普通列車がゆっくりとホームに入線してきた。
稲生:「これが折り返し、上りの最終電車になるはずです」
イリーナ:「良かったわねぇ。終電間に合って……」
マリア:「まだ21時過ぎなのに……」
降りて来た乗客は思ったよりもいた。
恐らく駅前の駐輪場に自転車を止めている乗客もいるし、よく見ると駅前広場に車が何台か止まっているから、迎えの車だろう。
地方ではよく見られる光景だ。
稲生:「ていうか先生、これ絶対、盛岡市内で一泊しないといけないパターンだと思います」
イリーナ:「大至急、今夜泊まれるホテルを検索して予約して。条件は問わないわ」
稲生:「了解しました」
稲生の目論見通り、電車は『ワンマン』のままであったが、行き先を『盛岡』に表示を変更した。
マリア:「It heart...」
列車は右に45度ほど傾いた状態で止まった。
イリーナ:「皆……生きてる……?」
稲生:「何とか……」
マリアはその時、車両の後ろに気が付いた。
マリア:「師匠、燃えてます!早く、列車の外に!」
稲生:「窓の外から出られます!」
客室の割れた窓から列車の外に避難する。
後ろの車両を見ると、3号車から後ろは無かった。
亜空間トンネル内で連結が外れて取り残されたか、或いは他の出口から出てしまったのかもしれない。
マリア:「とにかく、早く逃げましょう」
イリーナ:「ちょっと待って。パペ、サタン、パペ、サタン、アレッペ!……Care lu la!」
イリーナは回復魔法を掛けて、マリア達のHPを回復させた。
これで車内での戦いや、今の事故の衝撃によるケガが回復する。
直後、ボンッ!という小爆発と共に、先頭車の1号車にも引火した。
というか、列車の周りは山林のようで、そこにも火が燃え移っている!
漏れ出した軽油に引火しているらしい。
マリア:「ここから離れましょう!ここがどこだか知りませんけど!」
イリーナ:「ここがどこだか分からないと、ルゥ・ラが使えないわ!勇太君、大至急検索して!」
稲生:「わ、分かりまし……」
ボーンッ!
稲生:「うわっ、また爆発した!」
マリア:「取りあえず、あそこから逃げましょう!」
マリアは朽ち果てた石段を指さした。
イリーナ:「冥鉄の列車は鉄道以外の所に出るわけが無いのに、これは一体どういうことなのかしら!?」
マリア:「分かりませんよ!だいぶ前の時みたいに、廃線跡に出たんじゃないんですか!」
石段を駆け下りる。
だが、マリアの言う通り、本当に廃線跡なのだろう。
石段自体がボロボロになっていて、足を乗せる度に崩れてしまう。
稲生:「逆に危ないですって、これ!」
マリア:「そんなこと言ったって……!」
その時、マリアはふと気づいた。
マリア:「師匠!あれですよ!あの魔法があったでしょ!?フライ・ルゥ・ラ!」
イリーナ:「その手があった!」
フライ・ルゥ・ラというのは瞬間移動魔法たるルゥ・ラの亜種で、要はセルフ・テレキネシスのことである。
つまり、瞬間移動するのではなく、自分の体を浮遊させる魔法である。
それでもそこそこ難しい魔法なのか、ある程度階級の高い魔道士が
イリーナ:「Fly ru ra!」
稲生:「おおっ!?」
イリーナが魔法を唱えると、3人の体が宙に舞う。
稲生:「わっ、とととと!」
マリア:「落ち着いて!」
稲生は突然自分の体が宙に舞い上がったことで、半分パニックになった。
マリアが落ち着かせようとすると、マリアに抱き着いてしまう。
マリア:「ちょ、ちょっ……!もう……」
イリーナ:「あなた達、上空でイチャつかないの」
マリア:「……だってさ。勇太、離れて」
稲生:「びっくりしたぁ……」
イリーナ:「それより、あれ見て」
イリーナはさっきまでマリア達がいた事故現場を指さした。
赤々と列車が燃え、引火した山林が燃え上がっている。
近くの道路に消防車が何台もやってきた。
で、気づいたことがある。
稲生:「すっごい田舎ですね……」
マリア:「あ、逆にここなら安全だ。勇太、ここがどこだか検索して」
稲生:「あ、はい」
稲生はスマホを取り出した。
これでグーグルマップを立ち上げ、現在地を検索する。
稲生:「岩手県岩手郡雫石町!?マジかよ……」
マリア:「遠いの?屋敷から?それとも勇太の家から?」
稲生:「どっちもです!じゃあ、あの場所って、田沢湖線の旧線かな?確かそこの終着駅の橋場駅って所が廃止になったって聞いたけど……」
マリア:「私の予想が当たりなら、きっとそこだよ。で、この近くに駅は?旧線がそれなら新線があるでしょ?」
稲生:「もちろんです。えーと……この近くだと……赤渕駅って所ですね」
イリーナ:「その駅はここから遠い?賑わってる?」
稲生:「ここから約1.5キロってところです。ここから1.5キロ行ったところで、栄えているとは思えませんね。……ああ、やっぱり無人駅みたいです」
イリーナ:「よし。だったら、そこに舞い降りても大丈夫ね。方角は?」
稲生:「この下の道路……恐らく、国道46号線ですね。その沿道にあるので、この道沿いに行けばすぐです」
イリーナ:「よし、そこまで行くわよ。……いえね、人の多くいる場所に舞い降りたら大騒ぎなるからね」
マリア:「そりゃそうだ」
市民達に不思議がられてはいたものの、“魔女の宅急便”のキキの、コリコシティ内における低空飛行はもっと大騒ぎになる事態であったはず。
稲生:「で、問題がまだあります」
イリーナ「なぁに?」
稲生:「こういうローカル線、終電がメチャクチャ早かったりするんですが、果たしてもう終電の時間じゃないのかなーって……」
イリーナ:「……取りあえず駅に行ってみましょう」
[同日21:00.同町内 JR田沢湖線・赤渕駅 視点:稲生勇太]
稲生:「取りあえず、買って来ました!」
イリーナ:「ああ、ありがとう」
稲生は買って来た飲み物をイリーナとマリアに渡した。
駅周辺に民家は立ち並んでいたので、けして寂し過ぎる場所ではない。
家々には明かりが灯っているし、そもそも駅前の国道自体が岩手県と秋田県を結ぶ動脈ということもあって、特に長距離トラックが多く行き交っている。
しかし、それ以外は確かに寂しい。
駅前に駐輪場はあるものの、数えるほどしか自転車は止まっておらず、無人駅ということもあってか、駅舎は無いし、キップ売り場も改札口も無い。
そして、そもそも自動販売機すら無かった。
誰もいないホームから周辺を見渡している時、ようやく見える場所に自動販売機を見つけたので、稲生が急いで買いに行ったのである。
で、肝心の電車の方はどうなのかというと……。
稲生:「21時9分発の盛岡行き最終、そろそろ来るんじゃないですか?」
近くで踏切の警報機の音が聞こえた。
稲生が駅の前後を見る限り、上り方向の出発信号機は赤になっている。
しかし、下り方向の出発信号機も赤になっていた。
これは下り電車がこの駅に到着して、折り返し上り電車になることに他ならない。
だから、下り場内信号機は黄色信号1つの『注意』または2つの『警戒』になっているはずである。
稲生:「おおっ、あの電車だ」
無人駅だからだろうか、接近放送などは無く、上り方向から『ワンマン』『赤渕』と表示された普通列車がゆっくりとホームに入線してきた。
稲生:「これが折り返し、上りの最終電車になるはずです」
イリーナ:「良かったわねぇ。終電間に合って……」
マリア:「まだ21時過ぎなのに……」
降りて来た乗客は思ったよりもいた。
恐らく駅前の駐輪場に自転車を止めている乗客もいるし、よく見ると駅前広場に車が何台か止まっているから、迎えの車だろう。
地方ではよく見られる光景だ。
稲生:「ていうか先生、これ絶対、盛岡市内で一泊しないといけないパターンだと思います」
イリーナ:「大至急、今夜泊まれるホテルを検索して予約して。条件は問わないわ」
稲生:「了解しました」
稲生の目論見通り、電車は『ワンマン』のままであったが、行き先を『盛岡』に表示を変更した。