報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“魔女エレーナの日常” 「強制送還」

2020-06-23 19:52:54 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[6月23日16:00.魔界王国アルカディア王都アルカディアシティ上空 視点:エレーナ・M・マーロン]

 西部戦線から東のアルカディアシティに向かうエレーナと王国騎士団のアリス。

 アリス:「どこへ向かってるのだ!?」
 エレーナ:「アンタんちに決まってるぜ!さっさと報酬もらって、人間界へ避難だぜ!」
 アリス:「バカな!このままノコノコと帰れるか!せめて魔王城の前で降ろしてくれ!本部に西部戦線の状況を報告する!」
 エレーナ:「うるさい!だったらこのまま降ろすぜ!」
 アリス:「そしたら報酬は無しだ!」
 エレーナ:「なにぃっ!?」

 エレーナとアリスがそんな言い争いをしている時だった。
 エレーナは下方から強い魔法の気配を感じた。

 エレーナ:「!?」

 エレーナが下を見ると、シティを囲む城壁の上に黒いローブを纏った魔道士がこちらに向けて両手を挙げているのが分かった。
 ローブのデザインに見覚えが無く、しかもフードを深く被っているので顔は分からないが、どうやらダンテ一門の魔道士ではないことが分かった。
 で、こちらに両手を挙げているということは、今まさにこちらに向かって魔法を放つ直前だということである。

 エレーナ:「やっぱ降りろ!避け切れない!」
 アリス:「きさま!裏切るか!」
 エレーナ:「仲間になった覚えは無いぜ!騎士様なら、あとは自分で何とかするんだぜ!」

 だが、時既に遅し!
 2人は黒い光に包まれてしまった。
 その衝撃でアリスはホウキから振り落とされてしまった。

 エレーナ:「や、やっぱ待て!100万ゴッズ……じゃなかった!騎士様よォ!」

[6月23日16:00.埼玉県蕨市 JR蕨駅 視点:エレーナ・M・マーロン]

 黒い光に包まれ、一瞬闇の中に閉じ込められたエレーナだったが、急に視界が開けた。

 エレーナ:「! ここ、どこだ!?」

 パァァァァン♪パァァァァァァ♪(E231系の電子警笛)

 エレーナ:「うわっ!?」

 エレーナは蕨駅の横、通常時速100キロ以上で走行する宇都宮線の線路の上に送還されていた。
 エレーナが呆気に取られていると、上野東京ライン直通の電車が今まさにその速度でエレーナに突っ込もうとしていた。

 エレーナ:「くっ!」

 慌ててホウキを西に向ける。
 と、今度は……。

 ピィィィィィィッ♪(EH200形電気機関車の警笛)

 エレーナ:「でぇぇぇっ!?」

 湘南新宿ラインを走行する貨物列車にぶつかりそうになる。
 何とか避けたエレーナ、コンテナを乗せる貨車の上に着地した。
 貨車の上全てにコンテナが置かれているわけではない為、空いている所に着地したというわけだ。

 エレーナ:「あー、死ぬかと思った……ぜ」

 貨物列車は大宮方面に向かって走っている。

 エレーナ:「すぐにでも離陸したいが、ちょっと落ち着こう……」

 エレーナは貨車の連結器まで移動すると、そこの手すりに掴まりながら、手持ちの電子タバコを取り出した。
 意外なことに、エレーナは喫煙者。
 但し、IQOS派である。

 エレーナ:「何なんだ、あいつ……」

 エレーナがあいつ呼ばわりした相手はアリスではなく、黒いローブを羽織った正体不明の魔道士であった。
 列車がさいたま新都心駅に差し掛かる頃、エレーナは再びホウキに跨って離陸した。
 架線に引っ掛からないように気をつけながら……。
 で、左耳に付けたインカムで発信する。

 エレーナ:「あー、こちらポーリン組のエレーナ。門内各組に連絡するぜ……じゃなかった。連絡します。アルカディアシティ内において、他門の魔道士による攻撃を受けました。攻撃内容は、『強制送還』だと思われます。この攻撃により、私はアルカディアシティから日本国……えーと……どこだ、ここ?……さいたま新都心?って所に飛ばされました。尚、同行者として王立騎士団のアリス・リンクスという若い女騎士が一緒でしたが、現在行方不明です。発見した方は100万ゴッズ……もとい、エレーナまでお知らせください。尚、敵の魔道士の正体は不明。性別も不明ですが、恐らく男だと思われます。魔界在住で男嫌いの魔女の皆さんは、是非とも見つけ出してボコし……倒してください。以上、エレーナからの速報を終わります」

 エレーナはさいたま新都心駅近くの高層ビルの裏手に着地した。

 エレーナ:「ここ、あれじゃね?稲生氏んちの近所じゃね?凄い縁だぜ」

 エレーナはGPSを取り出した。

 エレーナ:「取りあえず、ワンスターホテルに戻ろう。さすがに今の魔界は危険過ぎるぜ」

 ここからワンスターホテルまでの座標を割り出すと、再びホウキに跨って離陸しようとした。

 エレーナ:「あ、待てよ。私がこうして人間界に飛ばされたってことは……アリスもこの世界に飛ばされてんじゃね?」

 アリスはどう見てもこの世界の出身ではない。
 今の魔界もなかなか近代化が進んだスチームパンク的な世界になっているが、まだまだ『剣と魔法のファンタジー』が幅を利かせる世界ではある。
 そこに生きている者が、いきなりこんな文明の進んだ世界の、それも先進国のど真ん中に送り込まれたら……。
 明治~大正時代の人間が現代にタイムスリップしたようなものである。

 エレーナ:「やっべーな、おい。えー……どうするよ?何の手掛かりも無ェよ」

 一切の手掛かりが無い状態で、水晶玉で捜し出せるほどエレーナの魔法はまだ高度ではない。

 エレーナ:「……取りあえず、帰るぜ」

 エレーナはホウキに跨って、一路ワンスターホテルに向かった。

 エレーナ:「100万ゴッズ、惜しかったぜ……」

 と、何度も呟きながら。
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“魔女エレーナの日常” 「戦局悪化」

2020-06-23 14:34:43 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[6月23日15:00.魔界王国アルカディア西部 西部戦線 視点:エレーナ・M・マーロン]

 エレーナ:「くそっ、見つかったぜ!」
 ミッドガード兵A:「いたぞ!ダンテ一門の魔女!」
 ミッドガード兵B:「捕まえろ!」

 エレーナはホウキに跨って、瓦礫と化した町の上空に舞い上がる。
 だが、ミッドガード共和国は科学に特化した兵器を持っている。

 エレーナ:「あぁっ!?」

 エレーナの目の前に戦闘ヘリコプター、アパッチが現れた。

 エレーナ:「『剣と魔法のファンタジー』の世界に、そんなもん持ち込むんじゃねーよ、コラ!」

 ダダダダダダダ!(戦闘ヘリ、エレーナに向かって機銃掃射)

 エレーナ:「アタシゃ、この町に配達に来ただけだっつーの!」

 エレーナ、高度飛行をしていると狙い撃ちにされると見て、低空飛行に入るが……。

 ミッドガード兵C:「いたぞ!撃てっ!撃ち落とせ!!」
 エレーナ:「ちくしょう!」

 地上で待ち構えているミッドガード兵がライフルやマシンガンで攻撃してくるのだった。

 エレーナ:「ん!?あれは……!」

 その時、エレーナは時計台を見つけた。
 この町の市庁舎に設置された時計台だ。
 もちろん今はミッドガード共和国の攻撃を受け、時を刻むのを止めてしまっている。

 エレーナ:「あそこに逃げ込めば……!」

 エレーナは大きな鐘がぶら下がっている所から、時計台に逃げ込んだ。

 ヘリ搭乗員:「あー!あー!マイクテス、マイクテス。そこのダンテ一門の魔女に告ぐ!お前達がアルカディア王国政府と結託し、我が共和国の国家転覆を図ろうとしていたことは明白!無駄な抵抗はやめて、直ちに投降せよ!」
 エレーナ:「とんだ言い掛かりだぜっと!」

 エレーナは下の階に下りる階段を駆け下りた。
 上からは攻撃ヘリの機銃掃射の音が聞こえてくる。

 エレーナ:「パペ、サタン、パペ、サタン、アレッペ!Sun da ga!」

 エレーナ、ヘリのいる側の窓から魔法の杖を突き出し、ヘリに向かって魔法を使った。
 ヘリに雷属性の攻撃魔法が直撃する。
 ヘリは雷攻撃を受けて、火を噴き出しながら地上へ墜落して行った。

 エレーナ:「ざまぁ見やがれ!」

 だが、またヘリのプロペラの音が聞こえて来た。

 エレーナ:「まだいんのかよ!こちとらウクライナ動乱経験してるんだぜ!ナメんな!」

 エレーナ、再び攻撃魔法の呪文を唱え、それを仕掛けようとした。

 エレーナ:「食らえ!」
 ???:「待て、危ない!」

 窓から手を出そうしたエレーナを強引に引き込む者がいた。
 そのせいで魔法がキャンセルされてしまう。
 が、窓の外から一斉に機銃掃射された。
 もし引き込めてくれる者がいなければ、エレーナは蜂の巣になっていただろう。

 エレーナ:「いってェ……!誰だぜ?」
 ???:「アルカディア王国西部騎士団、アリス・リンクス。ここは1つ、協力してここから脱出しよう」
 エレーナ:「あぁ?何だって、騎士団がこんな所にいるんだぜ!?つか、騎士団の装備じゃ、外のアパッチに勝てねーぜ!?」
 アリス:「だから、あなたの魔法が必要なんだ」
 エレーナ:「他の奴らは?騎士団なんだから、部隊展開してるんだろ?」
 アリス:「どうやら、全滅してしまったようだ。生き残っているのは私だけ。隊長も隊員も全て……」
 エレーナ:「あぁ!?何やってるんだぜ!?いくらアパッチでも、向こうじゃザコ扱いだぜ!?そいつら相手に……」

 と、外からまた機銃掃射される。

〔「無駄な抵抗は止めて、直ちに投降せよ!」〕

 というパイロットからの通告がヘリのスピーカーから聞こえてくる。

 エレーナ:「やなこった!私はとっとと人間界に帰るぜ!」
 アリス:「ならば、私はここで自害するのみ。……御免!」
 エレーナ:「あー、分かった分かった!助けてやるから、命を粗末にするんじゃないぜ!ったく、何でこうサムライとかナイトとかはすぐに自害したがるかねぇ!」
 アリス:「かたじけない」
 エレーナ:「後で報酬はもらうぜ!騎士団に所属してるってことは、アンタもいい所の御嬢だろ?」
 アリス:「リンクス家の爵位は子爵だ」
 エレーナ:「……1つの村か町の統治を任されてるってところか。あ?もしかしてこの辺か?」
 アリス:「いや、アルカディアシティの西南だ」
 エレーナ:「おっし!あの辺は比較的裕福な層の住んでいる村か町だな!報酬は100万ゴッズだ!分かったな!?」
 アリス:「ひゃ、ひゃくまん……!?わ、分かった。父上に相談してみる……」

 エレーナの法外な報酬の要求に、アリスは素っ頓狂な声を上げた。
 その声からして、歳はかなり若いと思われた。
 もしかしたら、騎士団に入ってそんなに日が長くないのではなかろうか。
 ていうかむしろ、まだ10代かもしれない。
 アルカディア王国では騎士団の入団資格は厳しいが、性別に制限は無い。
 基本的に貴族の子弟が入団することが多い。
 中・下層の一般市民が入隊する国防軍とはまた違う。
 アルカディア王国の西南部は、東京都の西南部である世田谷区や大田区などの富裕層の住む地域と同じである。

 エレーナ:「じゃあよ、あのヘリの上空にテレポートするからよ、その魔法の剣で、プロペラぶった切ってくれ。その上等な剣ならできるはずだぜ」
 アリス:「わ、分かった。やってみる」

 アリスは兜をかぶり直した。
 兜の下は後ろに束ねた赤毛が特徴だ。
 中世の騎士のそれと違い、フルフェイスの兜ではなく、装飾が派手なカジュアルな兜だった。

 エレーナ:「よし!それじゃ、ホウキの後ろに乗ってくれ!」

 エレーナはアリスをホウキの後ろに乗せた。
 アリスはスラッとした背丈であるが、体重は軽いようだった。
 恐らく男の騎士がなる重騎士ではなく、機動力を生かした軽騎士かもしれない。

 エレーナ:「パペ、サタン、パペ、サタン、アレッペ!」

 エレーナは瞬間移動の魔法を唱えた。

 エレーナ:「lu ra!」

 次の瞬間、エレーナ達はアパッチの真正面にいた。
 びっくりしてエレーナ達を見つめる搭乗員達。

 エレーナ:「今だ!ぶった切れ!!」
 アリス:「はーっ!」

 アリスはヘリに飛び掛かると、鋼鉄で頑丈なプロペラに斬りかかった。
 具体的には本体とプロペラを繋ぐ部分。
 剣から青白い光が放たれ、アリスはそれを本当に斬り飛ばしてしまった。
 プロペラを失ったヘリコプターは制御不能になり……。

 エレーナ:「おおっ!?」

 仲間のヘリと激突!
 2機共に地上へ墜落して行く。
 そして、真下に展開していたミッドガード軍の地上部隊を巻き込んで大爆発した。

 エレーナ:「やったぜ!ボーナスポイント、ゲットだぜ!!」

 エレーナは急降下して、自由落下中のアリスを助け出した。

 アリス:「す、凄い作戦だった……!これは勲章ものだぞ!」
 エレーナ:「そりゃどうもだぜ!とにかく、さっさと離脱するんだぜ!」

 エレーナはアリスを再び乗せると、戦場と化した町から離脱した。
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