[7月15日13:00.天候:晴 東京都新宿区新宿 JR新宿駅→湘南新宿ライン1085M列車6号車内]
〔本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。6番線に停車中の列車は、13時ちょうど発、特急“きぬがわ”5号、鬼怒川温泉行きです。発車まで、しばらくお待ちください。次は、池袋に止まります〕
コンコースで駅弁と飲み物を買い、5番線・6番線のホームに向かう。
最大15両編成が停車できる有効長を持つホームであるが、特急“きぬがわ”号は6両編成しか無く、ホームの真ん中に停車している。
勇太:「えーと……6号車だね」
最後尾の車両である。
車両はJRの車両253系で、かつては“成田エクスプレス”として運転されていた車両を改造したものである。
他には長野県の長野電鉄にも、中古車として売られている。
外観の塗装はもちろん、車内の内装に至るまでリニューアルされており、かつてのボックスシートや集団見合いシートは無く、普通の水色のモケットが掛かったリクライニングシートが並んでいる。
全車両指定席なので、指定された座席に座る。
座席そのものが交換されたせいか、1号車から5号車のそれは座席の位置と窓の位置が合わない。
場合によっては窓が小さかったり、窓と窓の間の部分だったりと、景色が殆ど見えない席まであったりする。
しかしながら、6号車にあっては元々グリーン車(元からリクライニングシート)だった為か、そのような当たり外れは無い。
人形の入ったバッグは荷棚に置き、あとは駅弁などはテーブルの上に置く。
車内は空いていて、確かにこれから温泉まで行くのだろうという乗客は見受けられたが、いわゆるインバウンド客は全く見かけなかった。
〔「お待たせ致しました。13時ちょうど発、特急“きぬがわ”5号、鬼怒川温泉行き、まもなく発車致します」〕
ホームからは明るい曲調の発車メロディが聞こえて来る。
東京駅中央線ホームで流れていたのは曲名が無く、単なる記号だが、こちらは“See you again”という曲名が付いている。
勇太がそれをマリアに説明すると、
マリア:「確かに。この駅とは、お別れだ」
という反応。
これから食べる駅弁の方に、関心が高い様子。
そして、電車は定刻通りに発車した。
〔♪♪(車内チャイム)♪♪。本日は特急“きぬがわ”をご利用くださいまして、ありがとうございます。この電車は東武線直通、特急“きぬがわ”5号、鬼怒川温泉行きです。これより、鬼怒川温泉に向かいます。座席は全て指定席となっておりますので、お手持ちの特急券をお確かめください。【中略】次は、池袋に止まります〕
車内チャイムはオリジナルのものだろうか。
一瞬何となく、小田急ロマンスカーの車内チャイムかと思った。
しかし、それにしても地味である。
小田急ロマンスカーの30000系EXEでも6両編成はあるのだが、あれと比べても地味である。
多分、東武スペーシアの車両ならそんな風には思わなかったのだろうが……。
自動放送の声優は、新幹線や他の在来線特急と同じ人。
しかし、何だか言い回しが違う。
他の鉄道会社に乗り入れるからだろうか。
勇太は特急券を取り出した。
勇太:「これで行けば、鬼怒川温泉には15時4分に着く。あとは日帰りできるかどうかだけど……」
温泉が目的ではないので、温泉に浸かって……という気持ちは一切無い2人。
余裕があれば、足湯に入るくらいはするかもしれない。
マリア:「最悪、現地で一泊か……。ただでさえ、師匠は連絡が取れないってのに……」
勇太:「まだダメなんだ?」
マリア:「ダメだね。後でもう1回やってみるけど、交信は無理かもしれない」
勇太:「先生ともあろう御方が……」
マリア:「師匠自身、“魔の者”に狙われて、姿を隠しているのかもしれない」
勇太:「せめて先生のブラックカードが使われているかどうか確認できれば、先生の安否が分かるのにな……」
一時期、都市伝説で『戦車まで買える』と噂されたブラックカードは、色々な意味で特別だ。
戦車が買えるというのはさすがに誇張し過ぎではあったようだが、勇太達が預かっているプラチナカードですら、一般庶民には雲の上の存在だというのに、更にその上を行くブラックカードは、勇太達のような関係者ですら履歴を追うことはできないのである。
マリア:「1つ言えることは、少なくとも経済制裁は受けてないってこと。もしそうなら、プラチナカードも使用不可になるはず」
勇太:「確かに……」
今日はワンスターホテルから東京駅までのタクシー代、東京駅から鬼怒川温泉までのキップ代に使用したが、普通に使えた。
もしイリーナが経済制裁を受けるようなことがあれば、ここまでスムーズではなかっただろう。
最悪、マリアのグリーンカードや勇太のSuicaビューカードまたはdカードを使うしか無くなる。
それを未だに使用せずに済んでいるのは、偏にイリーナのプラチナカードが無事に使えるからである。
因みに今、食べている駅弁も、カードで購入した。
勇太:「すると、やっぱり身を隠す必要があって、そうしているだけなのかも……」
マリア:「そうだといいんだけどな……」
[同日15:04.天候:曇 栃木県日光市鬼怒川温泉大原 東武鉄道鬼怒川温泉駅]
〔♪♪(車内チャイム)♪♪。本日は特急“きぬがわ”をご利用くださいまして、ありがとうございました。まもなく終点、鬼怒川温泉に到着致します。川治温泉、湯西川温泉、会津田島方面は、お乗り換えです。お忘れ物の無いよう、お気をつけください。どうぞ、楽しい旅をお続けください〕
大宮駅まで湘南新宿ライン、大宮駅からJR宇都宮線を走行した列車は、途中の栗橋駅で、東武線に転進した。
栗橋駅は東武鉄道の栗橋駅と併設されており、その橋渡しとなる渡り線が設けられている。
乗務員達は、その渡り線の途中に停車して、交替するのである。
この際、いずれかの駅に停車して客扱いを行うようなことはしない。
あくまでも時刻表上では、通過扱いである。
そして乗務員を交替すると、今度は東武鉄道の線路を進むわけである。
自動放送は相変わらずJRのままだが、やはり言い回しが独特である。
〔「まもなく終点、鬼怒川温泉、鬼怒川温泉です。1番線に入ります。お出口は、右側です。鬼怒川温泉から先、普通列車の新藤原行きをご利用のお客様は、3番線から15時52分の発車です。……」〕
鬼怒川温泉に着く頃には、空が曇って来た。
今すぐ雨が降るといった感じではないのだが、これが自然現象によるものなのか、“魔の者”の恣意的な操作によるものなのかは分からない。
マリア:「例のホテルは、駅から近いの?」
勇太:「歩くと遠いみたいだね。だから、駅前からタクシーで行こう」
マリア:「分かった」
鬼怒川温泉に無事に着いた2人。
果たして2人は、横田理事に会えるのだろうか。
〔本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。6番線に停車中の列車は、13時ちょうど発、特急“きぬがわ”5号、鬼怒川温泉行きです。発車まで、しばらくお待ちください。次は、池袋に止まります〕
コンコースで駅弁と飲み物を買い、5番線・6番線のホームに向かう。
最大15両編成が停車できる有効長を持つホームであるが、特急“きぬがわ”号は6両編成しか無く、ホームの真ん中に停車している。
勇太:「えーと……6号車だね」
最後尾の車両である。
車両はJRの車両253系で、かつては“成田エクスプレス”として運転されていた車両を改造したものである。
他には長野県の長野電鉄にも、中古車として売られている。
外観の塗装はもちろん、車内の内装に至るまでリニューアルされており、かつてのボックスシートや集団見合いシートは無く、普通の水色のモケットが掛かったリクライニングシートが並んでいる。
全車両指定席なので、指定された座席に座る。
座席そのものが交換されたせいか、1号車から5号車のそれは座席の位置と窓の位置が合わない。
場合によっては窓が小さかったり、窓と窓の間の部分だったりと、景色が殆ど見えない席まであったりする。
しかしながら、6号車にあっては元々グリーン車(元からリクライニングシート)だった為か、そのような当たり外れは無い。
人形の入ったバッグは荷棚に置き、あとは駅弁などはテーブルの上に置く。
車内は空いていて、確かにこれから温泉まで行くのだろうという乗客は見受けられたが、いわゆるインバウンド客は全く見かけなかった。
〔「お待たせ致しました。13時ちょうど発、特急“きぬがわ”5号、鬼怒川温泉行き、まもなく発車致します」〕
ホームからは明るい曲調の発車メロディが聞こえて来る。
東京駅中央線ホームで流れていたのは曲名が無く、単なる記号だが、こちらは“See you again”という曲名が付いている。
勇太がそれをマリアに説明すると、
マリア:「確かに。この駅とは、お別れだ」
という反応。
これから食べる駅弁の方に、関心が高い様子。
そして、電車は定刻通りに発車した。
〔♪♪(車内チャイム)♪♪。本日は特急“きぬがわ”をご利用くださいまして、ありがとうございます。この電車は東武線直通、特急“きぬがわ”5号、鬼怒川温泉行きです。これより、鬼怒川温泉に向かいます。座席は全て指定席となっておりますので、お手持ちの特急券をお確かめください。【中略】次は、池袋に止まります〕
車内チャイムはオリジナルのものだろうか。
一瞬何となく、小田急ロマンスカーの車内チャイムかと思った。
しかし、それにしても地味である。
小田急ロマンスカーの30000系EXEでも6両編成はあるのだが、あれと比べても地味である。
多分、東武スペーシアの車両ならそんな風には思わなかったのだろうが……。
自動放送の声優は、新幹線や他の在来線特急と同じ人。
しかし、何だか言い回しが違う。
他の鉄道会社に乗り入れるからだろうか。
勇太は特急券を取り出した。
勇太:「これで行けば、鬼怒川温泉には15時4分に着く。あとは日帰りできるかどうかだけど……」
温泉が目的ではないので、温泉に浸かって……という気持ちは一切無い2人。
余裕があれば、足湯に入るくらいはするかもしれない。
マリア:「最悪、現地で一泊か……。ただでさえ、師匠は連絡が取れないってのに……」
勇太:「まだダメなんだ?」
マリア:「ダメだね。後でもう1回やってみるけど、交信は無理かもしれない」
勇太:「先生ともあろう御方が……」
マリア:「師匠自身、“魔の者”に狙われて、姿を隠しているのかもしれない」
勇太:「せめて先生のブラックカードが使われているかどうか確認できれば、先生の安否が分かるのにな……」
一時期、都市伝説で『戦車まで買える』と噂されたブラックカードは、色々な意味で特別だ。
戦車が買えるというのはさすがに誇張し過ぎではあったようだが、勇太達が預かっているプラチナカードですら、一般庶民には雲の上の存在だというのに、更にその上を行くブラックカードは、勇太達のような関係者ですら履歴を追うことはできないのである。
マリア:「1つ言えることは、少なくとも経済制裁は受けてないってこと。もしそうなら、プラチナカードも使用不可になるはず」
勇太:「確かに……」
今日はワンスターホテルから東京駅までのタクシー代、東京駅から鬼怒川温泉までのキップ代に使用したが、普通に使えた。
もしイリーナが経済制裁を受けるようなことがあれば、ここまでスムーズではなかっただろう。
最悪、マリアのグリーンカードや勇太のSuicaビューカードまたはdカードを使うしか無くなる。
それを未だに使用せずに済んでいるのは、偏にイリーナのプラチナカードが無事に使えるからである。
因みに今、食べている駅弁も、カードで購入した。
勇太:「すると、やっぱり身を隠す必要があって、そうしているだけなのかも……」
マリア:「そうだといいんだけどな……」
[同日15:04.天候:曇 栃木県日光市鬼怒川温泉大原 東武鉄道鬼怒川温泉駅]
〔♪♪(車内チャイム)♪♪。本日は特急“きぬがわ”をご利用くださいまして、ありがとうございました。まもなく終点、鬼怒川温泉に到着致します。川治温泉、湯西川温泉、会津田島方面は、お乗り換えです。お忘れ物の無いよう、お気をつけください。どうぞ、楽しい旅をお続けください〕
大宮駅まで湘南新宿ライン、大宮駅からJR宇都宮線を走行した列車は、途中の栗橋駅で、東武線に転進した。
栗橋駅は東武鉄道の栗橋駅と併設されており、その橋渡しとなる渡り線が設けられている。
乗務員達は、その渡り線の途中に停車して、交替するのである。
この際、いずれかの駅に停車して客扱いを行うようなことはしない。
あくまでも時刻表上では、通過扱いである。
そして乗務員を交替すると、今度は東武鉄道の線路を進むわけである。
自動放送は相変わらずJRのままだが、やはり言い回しが独特である。
〔「まもなく終点、鬼怒川温泉、鬼怒川温泉です。1番線に入ります。お出口は、右側です。鬼怒川温泉から先、普通列車の新藤原行きをご利用のお客様は、3番線から15時52分の発車です。……」〕
鬼怒川温泉に着く頃には、空が曇って来た。
今すぐ雨が降るといった感じではないのだが、これが自然現象によるものなのか、“魔の者”の恣意的な操作によるものなのかは分からない。
マリア:「例のホテルは、駅から近いの?」
勇太:「歩くと遠いみたいだね。だから、駅前からタクシーで行こう」
マリア:「分かった」
鬼怒川温泉に無事に着いた2人。
果たして2人は、横田理事に会えるのだろうか。