[2月19日13:00.天候:晴 東京都江東区豊洲 3号機のシンディ&敷島孝夫]
(シンディの一人称です)
皆さん、こんにちは。
私、ガイノイド・マルチタイプ3号機のシンディです。
今日は社長と一緒に、新事務所の内見に向かっています。
ボーカロイド専門芸能事務所、敷島エージェンシーもおかげさまで業績が上がり、それまでの事務所では手狭になったので、広い所へ引っ越すことになりました。
それに伴い、人間の社員さんの数も増えることになり、社長は大忙しです。
そのボーカロイド専門芸能事務所という触れ込みも、8号機のアルエット(私はアルと呼んでいます)が所属してから矛盾するようになったので、今ではその看板は取り外していますけれども、それでもロイドだけのアイドル事務所ということで、今でも話題になっています。
今、私達は不動産屋さんの車に乗って、新事務所となるかもしれない場所に向かっています。
「……ああ、アリスか。ちょっとゴメン、聞きたいことがあるんだが……」
運転席の後ろに座っている社長がスマホを取り出し、何やら奥様に掛けているようです。
奥様のアリス博士は私の製作者、ウィリアム・フォレスト博士(通称、ドクター・ウィリー)の養孫で、ウィリアム博士からロボット工学の英才教育を受けたこともあり、とても天才です。
今はアメリカ資本の世界的なロボット製造会社、デイライト・コーポレーション・ジャパン(つまり日本法人ですね)の主任研究員として働いておられます。
「いや、実はさ、うちの新しい事務所の予定候補地なんだが、それが東京の沿岸部だったりするんだ。潮風とか、うちのロイド達、大丈夫だったかなぁ……なんて」
ああ、なるほど。
確かに私のGPSでも、車は東京湾に向かっているようになっています。
前期型の私のボディは海水耐性になっていなかったので、どうだったかは分かりません。
が、今の後期型のボディはそういう耐性が施されているので、私の中では特に危険は出ていませんが……。
「……あー、そう?大丈夫?」
どうやら奥様もゴーサインを出したようです。
ていうか何年か前、事務所の皆で海水浴に行ったことがあって、少なくとも私達やボーカロイドの皆は大丈夫だと思うのですが……。
「……あー、そうか。逆に、バージョン連中はいないってか。あっはははははは!」
テロ・ロボット、バージョン・シリーズは逆に海水耐性が施された個体は少なく、それ故、確かに海沿いでは奴らは現れませんでしたね。
「分かった分かった。ありがとう。決めるのはもちろん内見してからだけど、話を聞いてれば、結構良さそうだったからさ。……ああ。ありがとう。それじゃ」
社長は電話を切って、私の方を見ました。
「見くびるなって怒られたよ、アリスに」
「そう。海に入っても大丈夫なんだから、潮風ぐらいで錆びるとは思えないわ」
「まあ、そうだよな」
私と社長でそんな会話をしている間、車がとあるビルの前で止まりました。
「着きましたよ」
運転席の不動産屋さんが言いました。
「おー、ここかぁ……」
「きれいなビルですね」
「ええ。築浅ですから」
私達は車を降りて、ビルを見上げました。
豊洲という町は、比較的新しい町だそうです。
確かに見渡すと、まだまだ建設中のビルがあちらこちらに見られます。
もっとも、そのほとんどは高層マンションだそうですが。
「豊洲駅に近いし、床面積も今の所の何倍もある。きれいで最新式の設備か。うーん……文句の付け所は無いね」
「社長。まだ中に入ってないわよ」
「おっと、そうだった」
それまでのビルは5階建ての小さなものでしたが、このビルはその4倍の20階建てです。
「豊洲センタービルか。名前もシンプルでいいな。何か、昔の財団事務所を思い出すな。財団の本部も仙台支部も、超高層ビルの中にあったからな」
「そうね」
エレベーターに乗り込んで、不動産屋さんが言いました。
「敷島エージェンシー様はワンフロア貸切をご希望だそうですね」
「はい。うちのロイドの整備所なんかも欲しいですし、どうしてもボーカロイドという存在柄、声出しなんかもしないといけません。単なる事務所としてだけではアレなもんで……」
「なるほど。このビルは防音耐性にもなっていますし、その辺りも御心配無いですよ」
「それは助かります。まあ、何より、シンディの自重に耐えられる頑丈さってのもいいですしね」
……私の自重は180キロです。
前は200キロあったんですが、アリス博士が何とか軽量化改造をしてくれて、何とか今は20キロ軽くなりました。
18階でエレベーターを降りると、当然ながら何もありません。
「ふむふむ。ドアは電子ロックか」
「共用部に関しては、地下の防災センターで管理しています」
「そうでしたね。財団のビルもそうだったな」
社長はとても気に入られたようで、早速賃貸契約を交わしました。
[2月20日10:00.天候:雨 埼玉県さいたま市西区(デイライト・コーポレーション・ジャパン) 上記メンバー&アリス敷島]
今日はアリス博士がお勤めになっておられる研究所へお邪魔しました。
もちろん、社長に同行しただけです。
今この研究所は、大掛かりな建て替え工事が進められています。
KR団との戦いで建物が大破したというのもあるのですが、そのテロ組織のせいでロボットやロイドに対するイメージが頗る悪化したことを恐れたDC社が、イメージを挽回する為にロボット科学館を建てる構想を立て、その実現に向けて着々と建設を進めているというわけです。
それまでの研究施設としては、更に埼玉県の奥地に移されたこともあって、ますます秘密の研究所になってしまったようですが、アリス博士はここに残られるようです。
別に、研究室自体が完全に移されるわけではありませんから。
「おー、立派な建物になりそうだな」
「そうね」
「完成したら、シンディにも協力してもらう。お前は愛想がいいからな」
「お役に立てるのでしたら」
旧研究所は仮設の物ですが、そこにはアルが眠っています。
アリス博士が土曜日休みを返上して、アルの修理をして下さっているのです。
アルが修理を受けている特別室は、例え社長であろうと私であろうと入室厳禁です。
外からモニタで見ることができるのみで、これとて顧問研究員の許可が必要になります。
もちろんここで言う顧問研究員とは、アリス博士のことです。
「……あの時、私が後先考えずにアルの装置を引きちぎったから……」
アルに取り付けられたバージョン1000を強制的に遠隔操作する装置。
アルの輸送中に、KR団の密命を受けた7号機のレイチェルが取り付けたものです。
バージョン1000は見た目はバージョン4.0を巨大化させただけのロボットですが、実はほとんど『歩く自爆装置』みたいなもので、福島第一原発と第二原発に、自爆しに向かうところでした。
後で分かった話ですが、他にも別の原発に向かおうとした個体がいたらしく、それは故障して動けなくなっていたのですが、もし奴らの行動が成功していれば、東日本一帯が死の大地になっていただろうと言われています。
「いや、そんなことないさ。お前の判断は的確だ。悪いのはKR団だよ。あと1秒遅かったら、首都圏も放射能まみれで住めなくなっていたんだから」
研究所の掲示板には、その時の新聞記事や雑誌の記事が貼られています。
何だか、私がバージョン1000を止めた立役者みたいな感じになっていて、どう見ても社長やDC社が工作したようにしか見えないのですが、お役に立てて何よりです。
「アルの修理は科学館完成には間に合うのか?」
「天才のアタシに任せなさい。起動テストの期間も含めて、しっかり間に合わせるわよ」
「それは頼もしい。しかし工事中ということもあって、だいぶセキュリティが甘くなった感じだな」
「まあ、そこはマリオとルイージに任せてるからね」
マリオとルイージとは、アリス博士が製作されたバージョン5.0のことで、バージョン・シリーズの最新モデルです。
それまでと違ってスマートな体型になり、動きも人間並みに俊敏で滑らかな動きになっています。
もっとも、私の敵ではありませんがw
喋れるようにはなったのですが、どうしても兄弟漫才をやっているようにしか見えません。
まあ、セキュリティロボットとしてなら使えるかと。
「じゃあ、工事とアルの進捗具合も確認したし、そろそろ帰るか」
「はい。それでは博士、失礼致します」
私はオーナー登録されているアリス博士に別れを告げました。
「シンディ」
「はい?」
「タカオの監視、よろしくね。この前、ギャバ嬢とホテルに行こうとしたらしいからね!」
「ち、違う!キャバクラは、あくまでテレビ・ジャパンの番組プロデューサーさんの付き合いで、あの歌番組はうちのボカロ達も世話になってるし……」
「かしこまりました。この私めに、お任せください」
「頼んだよ、シンディ」
「お、おい!シンディ、俺はお前のユーザーだぞ!?」
「オーナーの命令は絶対、ユーザーの命令は相対だから」
私は大きく頷きました。
生真面目なエミリー姉さんは、ユーザーの命令も絶対だと思っているようですが、物事には優劣がありますからね。
「おい、そりゃないよ!」
「シンディ、あなたの判断は優秀だわ。さすが、じー様が作っただけのことはあるね」
「お褒めに預かりまして」
楽しい日常ですが、この日常をテロから守る為にも私は頑張ります。
(シンディの一人称です)
皆さん、こんにちは。
私、ガイノイド・マルチタイプ3号機のシンディです。
今日は社長と一緒に、新事務所の内見に向かっています。
ボーカロイド専門芸能事務所、敷島エージェンシーもおかげさまで業績が上がり、それまでの事務所では手狭になったので、広い所へ引っ越すことになりました。
それに伴い、人間の社員さんの数も増えることになり、社長は大忙しです。
そのボーカロイド専門芸能事務所という触れ込みも、8号機のアルエット(私はアルと呼んでいます)が所属してから矛盾するようになったので、今ではその看板は取り外していますけれども、それでもロイドだけのアイドル事務所ということで、今でも話題になっています。
今、私達は不動産屋さんの車に乗って、新事務所となるかもしれない場所に向かっています。
「……ああ、アリスか。ちょっとゴメン、聞きたいことがあるんだが……」
運転席の後ろに座っている社長がスマホを取り出し、何やら奥様に掛けているようです。
奥様のアリス博士は私の製作者、ウィリアム・フォレスト博士(通称、ドクター・ウィリー)の養孫で、ウィリアム博士からロボット工学の英才教育を受けたこともあり、とても天才です。
今はアメリカ資本の世界的なロボット製造会社、デイライト・コーポレーション・ジャパン(つまり日本法人ですね)の主任研究員として働いておられます。
「いや、実はさ、うちの新しい事務所の予定候補地なんだが、それが東京の沿岸部だったりするんだ。潮風とか、うちのロイド達、大丈夫だったかなぁ……なんて」
ああ、なるほど。
確かに私のGPSでも、車は東京湾に向かっているようになっています。
前期型の私のボディは海水耐性になっていなかったので、どうだったかは分かりません。
が、今の後期型のボディはそういう耐性が施されているので、私の中では特に危険は出ていませんが……。
「……あー、そう?大丈夫?」
どうやら奥様もゴーサインを出したようです。
ていうか何年か前、事務所の皆で海水浴に行ったことがあって、少なくとも私達やボーカロイドの皆は大丈夫だと思うのですが……。
「……あー、そうか。逆に、バージョン連中はいないってか。あっはははははは!」
テロ・ロボット、バージョン・シリーズは逆に海水耐性が施された個体は少なく、それ故、確かに海沿いでは奴らは現れませんでしたね。
「分かった分かった。ありがとう。決めるのはもちろん内見してからだけど、話を聞いてれば、結構良さそうだったからさ。……ああ。ありがとう。それじゃ」
社長は電話を切って、私の方を見ました。
「見くびるなって怒られたよ、アリスに」
「そう。海に入っても大丈夫なんだから、潮風ぐらいで錆びるとは思えないわ」
「まあ、そうだよな」
私と社長でそんな会話をしている間、車がとあるビルの前で止まりました。
「着きましたよ」
運転席の不動産屋さんが言いました。
「おー、ここかぁ……」
「きれいなビルですね」
「ええ。築浅ですから」
私達は車を降りて、ビルを見上げました。
豊洲という町は、比較的新しい町だそうです。
確かに見渡すと、まだまだ建設中のビルがあちらこちらに見られます。
もっとも、そのほとんどは高層マンションだそうですが。
「豊洲駅に近いし、床面積も今の所の何倍もある。きれいで最新式の設備か。うーん……文句の付け所は無いね」
「社長。まだ中に入ってないわよ」
「おっと、そうだった」
それまでのビルは5階建ての小さなものでしたが、このビルはその4倍の20階建てです。
「豊洲センタービルか。名前もシンプルでいいな。何か、昔の財団事務所を思い出すな。財団の本部も仙台支部も、超高層ビルの中にあったからな」
「そうね」
エレベーターに乗り込んで、不動産屋さんが言いました。
「敷島エージェンシー様はワンフロア貸切をご希望だそうですね」
「はい。うちのロイドの整備所なんかも欲しいですし、どうしてもボーカロイドという存在柄、声出しなんかもしないといけません。単なる事務所としてだけではアレなもんで……」
「なるほど。このビルは防音耐性にもなっていますし、その辺りも御心配無いですよ」
「それは助かります。まあ、何より、シンディの自重に耐えられる頑丈さってのもいいですしね」
……私の自重は180キロです。
前は200キロあったんですが、アリス博士が何とか軽量化改造をしてくれて、何とか今は20キロ軽くなりました。
18階でエレベーターを降りると、当然ながら何もありません。
「ふむふむ。ドアは電子ロックか」
「共用部に関しては、地下の防災センターで管理しています」
「そうでしたね。財団のビルもそうだったな」
社長はとても気に入られたようで、早速賃貸契約を交わしました。
[2月20日10:00.天候:雨 埼玉県さいたま市西区(デイライト・コーポレーション・ジャパン) 上記メンバー&アリス敷島]
今日はアリス博士がお勤めになっておられる研究所へお邪魔しました。
もちろん、社長に同行しただけです。
今この研究所は、大掛かりな建て替え工事が進められています。
KR団との戦いで建物が大破したというのもあるのですが、そのテロ組織のせいでロボットやロイドに対するイメージが頗る悪化したことを恐れたDC社が、イメージを挽回する為にロボット科学館を建てる構想を立て、その実現に向けて着々と建設を進めているというわけです。
それまでの研究施設としては、更に埼玉県の奥地に移されたこともあって、ますます秘密の研究所になってしまったようですが、アリス博士はここに残られるようです。
別に、研究室自体が完全に移されるわけではありませんから。
「おー、立派な建物になりそうだな」
「そうね」
「完成したら、シンディにも協力してもらう。お前は愛想がいいからな」
「お役に立てるのでしたら」
旧研究所は仮設の物ですが、そこにはアルが眠っています。
アリス博士が土曜日休みを返上して、アルの修理をして下さっているのです。
アルが修理を受けている特別室は、例え社長であろうと私であろうと入室厳禁です。
外からモニタで見ることができるのみで、これとて顧問研究員の許可が必要になります。
もちろんここで言う顧問研究員とは、アリス博士のことです。
「……あの時、私が後先考えずにアルの装置を引きちぎったから……」
アルに取り付けられたバージョン1000を強制的に遠隔操作する装置。
アルの輸送中に、KR団の密命を受けた7号機のレイチェルが取り付けたものです。
バージョン1000は見た目はバージョン4.0を巨大化させただけのロボットですが、実はほとんど『歩く自爆装置』みたいなもので、福島第一原発と第二原発に、自爆しに向かうところでした。
後で分かった話ですが、他にも別の原発に向かおうとした個体がいたらしく、それは故障して動けなくなっていたのですが、もし奴らの行動が成功していれば、東日本一帯が死の大地になっていただろうと言われています。
「いや、そんなことないさ。お前の判断は的確だ。悪いのはKR団だよ。あと1秒遅かったら、首都圏も放射能まみれで住めなくなっていたんだから」
研究所の掲示板には、その時の新聞記事や雑誌の記事が貼られています。
何だか、私がバージョン1000を止めた立役者みたいな感じになっていて、どう見ても社長やDC社が工作したようにしか見えないのですが、お役に立てて何よりです。
「アルの修理は科学館完成には間に合うのか?」
「天才のアタシに任せなさい。起動テストの期間も含めて、しっかり間に合わせるわよ」
「それは頼もしい。しかし工事中ということもあって、だいぶセキュリティが甘くなった感じだな」
「まあ、そこはマリオとルイージに任せてるからね」
マリオとルイージとは、アリス博士が製作されたバージョン5.0のことで、バージョン・シリーズの最新モデルです。
それまでと違ってスマートな体型になり、動きも人間並みに俊敏で滑らかな動きになっています。
もっとも、私の敵ではありませんがw
喋れるようにはなったのですが、どうしても兄弟漫才をやっているようにしか見えません。
まあ、セキュリティロボットとしてなら使えるかと。
「じゃあ、工事とアルの進捗具合も確認したし、そろそろ帰るか」
「はい。それでは博士、失礼致します」
私はオーナー登録されているアリス博士に別れを告げました。
「シンディ」
「はい?」
「タカオの監視、よろしくね。この前、ギャバ嬢とホテルに行こうとしたらしいからね!」
「ち、違う!キャバクラは、あくまでテレビ・ジャパンの番組プロデューサーさんの付き合いで、あの歌番組はうちのボカロ達も世話になってるし……」
「かしこまりました。この私めに、お任せください」
「頼んだよ、シンディ」
「お、おい!シンディ、俺はお前のユーザーだぞ!?」
「オーナーの命令は絶対、ユーザーの命令は相対だから」
私は大きく頷きました。
生真面目なエミリー姉さんは、ユーザーの命令も絶対だと思っているようですが、物事には優劣がありますからね。
「おい、そりゃないよ!」
「シンディ、あなたの判断は優秀だわ。さすが、じー様が作っただけのことはあるね」
「お褒めに預かりまして」
楽しい日常ですが、この日常をテロから守る為にも私は頑張ります。
新たなスレが・・・。
ところで、厳虎さんのブログのタイトルが「カッパつなぎの論」に見えるのは私だけ?
何だか厳虎さんの記事タイトルがカタカナになっているのは、んっ?さんのような解釈を狙っているかもしれませんね。
ヨドバシアキバの警備班長に顕正会員に注意するようお願いした後、乗ってみることにした。
こっちの浅草駅は他の浅草駅より離れているので、乗り換えには注意が必要だ。
粗探ししたらキリが無いからね。
ただ、体験発表者がプロパーさん達だけってのは寂しかったな。
元顕正会員が功徳を出すのは、それほどまでに難しいということだな。
最後に、初めて覇気のある愛唱歌を歌ったって感じだ。
思わず右手が扇子を振りたくなったよ。
でも、また出たいとは思わないな。
何だか、空回りしてるって感じがした。