[10月13日02:00.天候:雨 東京都江東区豊洲 豊洲アルカディアビル18F・敷島エージェンシー]
社長室内に設置したエアベッドで寝ている敷島。
それが暴風雨が窓ガラスを叩く音で目が覚める。
敷島:「ん……。ちょっとトイレ……」
敷島は手を伸ばして、外したメガネを取ろうとした。
すると、手に柔らかい物が当たる。
エミリー:「ふぁ……」
敷島:「うわっ、ととと!?」
それは護衛と称して同衾するエミリーの巨乳だった。
スリープ状態になると人間で言う寝息を立てず、体温も無くなるし、つまりは死体と一緒に寝るようなものだ。
敷島が胸を掴んだことで、エミリーのスリープモードが解除される。
エミリー:「どちらへ?」
敷島:「トイレだ、トイレ」
敷島はTシャツにハーフパンツをはいている。
スリッパを履くと、社長室を出た。
途中の仮眠室では井辺が寝ているから、静かに廊下を進む。
真夜中にロケ先から到着したり、或いは始発電車が走り出す前からロケに出発したりということも多々ある為、事務所内には仮眠室がある。
しかし、あえてそこに敷島は寝ようとはしなかった。
仮眠室の隣にはボーカロイド達の部屋があり、エミリーが放つ電波で彼女らが警戒して充電不良を起こしたことがあったからだ。
敷島:「マジかよ。ここまで雨音聞こえんぜ……」
幸いまだ停電はしていない。
眩しいトイレの明かりに目を細めながら用を足していると、換気ダクトから雨音が聞こえて来た。
普通は聞こえないのだが、それほどまでに強い雨風なのだ。
敷島:「全く……」
用を足した後で手を洗っていると、バチンと照明が切れた。
敷島:「!……かー、ついにやられたか……」
エミリー:「社長」
敷島:「おわっ、びっくりした!」
エミリーがトイレの中に入って来た。
片目をライトのように点灯させている。
それ以外にも真っ暗な中にいるからか、もう片方の目も電源ランプの明かりが漏れて淡く光っている。
鉄腕アトムなどば両目を光らせているが、現実はLEDの明るい光源がある為、片目を光らせるだけで十分である。
もっとも、LEDに換装されるまでは彼女らも両目を光らせていた。
尚、故障時の予備と警告ランプも兼ねて、実はもう片方の目にもLEDは搭載されている。
つまり、彼女らが両目を光らせている時、その感情は昂っているものと思って良い。
エミリー:「大丈夫ですか?ついに停電したようです」
敷島:「そうみたいだな。さすがに想定通りか」
エミリー:「早く戻りましょう。私が先導します」
敷島:「ああ、頼む」
もっとも、非常灯や非常口誘導灯、それに消火栓の赤ランプは点灯していたが、全部予備電源で点灯するものである。
敷島:「お前もバッテリーを無駄にするなよ?」
エミリー:「分かっています」
エミリーはいつもの衣装を脱いで、ビキニスタイルになっていた。
因みにこの上からアーマーを装着させると、よくRPGとかにいるビキニアーマーの女戦士の恰好をさせることができる。
そのエミリーも、武器として電気鞭を持っていた。
敷島:「それにしても参ったな。ここ18階だぜ?エレベーターも止まっただろうし、復旧まで帰れないだろうな」
エミリー:「その時は私が抱えて緊急離脱します」
敷島:「その時が来ないように願うよ」
敷島は苦笑いをした。
敷島:「ちょっと待て。今のうちに水を飲んでおこう」
エミリー:「お水ですか?」
敷島:「冷蔵庫が止まったということは、飲み物も温くなるだろう。今は停電したばっかりだから、まだ冷たいはずだ。冷たいうちに飲んでおきたい」
エミリー:「かしこまりました。今のうちにお持ちします。社長は先に戻っていてください」
敷島:「ああ。エミリーも飲んでいいぞ」
エミリー:「冷却水はまだありますので、その必要はありません」
敷島:「そうか」
エミリーは給湯室の冷蔵庫からミネラルウォーターのペットボトルを出すと、それを湯のみに注いだ。
そしてお盆に乗せて、社長室まで運んだ。
敷島:「参ったな。非常灯が勝手に点いている」
エミリー:「そうですね」
天井に付いている豆電球の明かり。
大元のスイッチは切っていても、勝手に点灯してしまっている。
もちろんこれだけでは心許無い明かりではあるが、しかしちょうど敷島のベッドの真上で点灯しているので、さすがにこれは眩しいだろう。
エミリー:「少々お待ちください。今、ベッドを移します」
敷島:「いや、このままでいいよ。それよりエミリー、お前にも飲ませてやるぞ」
エミリー:「冷却水はまだ……」
敷島:「そう言うなって」
敷島は自分の水を飲んだ後、再び水を含んでエミリーを抱き寄せ、唇を重ねて彼女の口の中に注ぎ込んだ。
エミリーは目を閉じて、口移しされた水をこくんこくんと飲み干す。
エミリー:「ありがとう、ございます」
エミリーは恍惚な表情を浮かべて敷島を見つめた。
敷島:「どうせしばらく眠れそうに無い。だったら、お前に相手してもらおうかな」
エミリー:「光栄に存じます。『50億円のラブドール』、どうぞお楽しみください。……いえ」
エミリーは着ていたチューブブラやビキニショーツを脱ぎ捨てると、訂正した。
エミリー:「楽しませて差し上げます」
[同日06:00.天候:曇 敷島エージェンシー・仮眠室]
井辺の枕元に置いたスマホがアラームを鳴らした。
井辺:「う……ん……」
井辺は手を伸ばしてアラームを止めた。
井辺:「久しぶりに……仮眠室で寝たな……」
仮眠室は2段ベッドが2つ並んだ4人部屋なのだが、今回は井辺の貸し切りだ。
下段に寝ていた。
枕元のスイッチに手を伸ばすと、仮眠室内の照明が点灯する。
取りあえずワイシャツとスーツのズボンに着替えると、サンダル履きでトイレに向かった。
初音ミク:「おはようございます。プロデューサーさん」
井辺:「ああ、初音さん。おはようございます」
ミク:「昨夜は停電して大変だったんですよ」
井辺:「え?停電したんですか?気が付きませんでした……」
ミク:「しょうがないですよ。停電したの、午前2時過ぎですから」
井辺:「でも今は復電しているようですが?」
ミク:「5時過ぎに直りました」
井辺:「そうですか。非常予備電源とかじゃないですよね?」
それにしては廊下の照明が全点灯しているので、そういうわけでもなさそうだった。
井辺:「社長は寝ていらっしゃいますか?」
エミリー:「昨夜はエミリーと『お楽しみ』だったみたいですから」
井辺:「さすが社長。あんな大嵐の中でもそのような余裕を見せて下さるとは……」
ミク:「プロデューサーさんもよく眠れたじゃないですか」
井辺:「いや、さすがに疲れていたようです。ちょっと顔洗って来ますので」
ミク:「はい」
井辺はトイレの洗面所で顔を洗っていた。
井辺:(『50億円のラブドール』とお楽しみか。そういえば俺も、昔はレイチェルに迫られたことがあったな……)
あくまでも敷島の符丁であって、本当にそう思っているわけではない。
マルチタイプということもあって、彼女らは何でもできる。
その何でもできる特技の中に、『夜伽』が入っているだけに過ぎない。
因みにその機能、ボーカロイドには搭載されていない。
アイドルの枕営業に真っ向から切り込む為である。
井辺:(ま、さすがに俺は社長の足元にも及ばない、と……)
社長室内に設置したエアベッドで寝ている敷島。
それが暴風雨が窓ガラスを叩く音で目が覚める。
敷島:「ん……。ちょっとトイレ……」
敷島は手を伸ばして、外したメガネを取ろうとした。
すると、手に柔らかい物が当たる。
エミリー:「ふぁ……」
敷島:「うわっ、ととと!?」
それは護衛と称して同衾するエミリーの巨乳だった。
スリープ状態になると人間で言う寝息を立てず、体温も無くなるし、つまりは死体と一緒に寝るようなものだ。
敷島が胸を掴んだことで、エミリーのスリープモードが解除される。
エミリー:「どちらへ?」
敷島:「トイレだ、トイレ」
敷島はTシャツにハーフパンツをはいている。
スリッパを履くと、社長室を出た。
途中の仮眠室では井辺が寝ているから、静かに廊下を進む。
真夜中にロケ先から到着したり、或いは始発電車が走り出す前からロケに出発したりということも多々ある為、事務所内には仮眠室がある。
しかし、あえてそこに敷島は寝ようとはしなかった。
仮眠室の隣にはボーカロイド達の部屋があり、エミリーが放つ電波で彼女らが警戒して充電不良を起こしたことがあったからだ。
敷島:「マジかよ。ここまで雨音聞こえんぜ……」
幸いまだ停電はしていない。
眩しいトイレの明かりに目を細めながら用を足していると、換気ダクトから雨音が聞こえて来た。
普通は聞こえないのだが、それほどまでに強い雨風なのだ。
敷島:「全く……」
用を足した後で手を洗っていると、バチンと照明が切れた。
敷島:「!……かー、ついにやられたか……」
エミリー:「社長」
敷島:「おわっ、びっくりした!」
エミリーがトイレの中に入って来た。
片目をライトのように点灯させている。
それ以外にも真っ暗な中にいるからか、もう片方の目も電源ランプの明かりが漏れて淡く光っている。
鉄腕アトムなどば両目を光らせているが、現実はLEDの明るい光源がある為、片目を光らせるだけで十分である。
もっとも、LEDに換装されるまでは彼女らも両目を光らせていた。
尚、故障時の予備と警告ランプも兼ねて、実はもう片方の目にもLEDは搭載されている。
つまり、彼女らが両目を光らせている時、その感情は昂っているものと思って良い。
エミリー:「大丈夫ですか?ついに停電したようです」
敷島:「そうみたいだな。さすがに想定通りか」
エミリー:「早く戻りましょう。私が先導します」
敷島:「ああ、頼む」
もっとも、非常灯や非常口誘導灯、それに消火栓の赤ランプは点灯していたが、全部予備電源で点灯するものである。
敷島:「お前もバッテリーを無駄にするなよ?」
エミリー:「分かっています」
エミリーはいつもの衣装を脱いで、ビキニスタイルになっていた。
因みにこの上からアーマーを装着させると、よくRPGとかにいるビキニアーマーの女戦士の恰好をさせることができる。
そのエミリーも、武器として電気鞭を持っていた。
敷島:「それにしても参ったな。ここ18階だぜ?エレベーターも止まっただろうし、復旧まで帰れないだろうな」
エミリー:「その時は私が抱えて緊急離脱します」
敷島:「その時が来ないように願うよ」
敷島は苦笑いをした。
敷島:「ちょっと待て。今のうちに水を飲んでおこう」
エミリー:「お水ですか?」
敷島:「冷蔵庫が止まったということは、飲み物も温くなるだろう。今は停電したばっかりだから、まだ冷たいはずだ。冷たいうちに飲んでおきたい」
エミリー:「かしこまりました。今のうちにお持ちします。社長は先に戻っていてください」
敷島:「ああ。エミリーも飲んでいいぞ」
エミリー:「冷却水はまだありますので、その必要はありません」
敷島:「そうか」
エミリーは給湯室の冷蔵庫からミネラルウォーターのペットボトルを出すと、それを湯のみに注いだ。
そしてお盆に乗せて、社長室まで運んだ。
敷島:「参ったな。非常灯が勝手に点いている」
エミリー:「そうですね」
天井に付いている豆電球の明かり。
大元のスイッチは切っていても、勝手に点灯してしまっている。
もちろんこれだけでは心許無い明かりではあるが、しかしちょうど敷島のベッドの真上で点灯しているので、さすがにこれは眩しいだろう。
エミリー:「少々お待ちください。今、ベッドを移します」
敷島:「いや、このままでいいよ。それよりエミリー、お前にも飲ませてやるぞ」
エミリー:「冷却水はまだ……」
敷島:「そう言うなって」
敷島は自分の水を飲んだ後、再び水を含んでエミリーを抱き寄せ、唇を重ねて彼女の口の中に注ぎ込んだ。
エミリーは目を閉じて、口移しされた水をこくんこくんと飲み干す。
エミリー:「ありがとう、ございます」
エミリーは恍惚な表情を浮かべて敷島を見つめた。
敷島:「どうせしばらく眠れそうに無い。だったら、お前に相手してもらおうかな」
エミリー:「光栄に存じます。『50億円のラブドール』、どうぞお楽しみください。……いえ」
エミリーは着ていたチューブブラやビキニショーツを脱ぎ捨てると、訂正した。
エミリー:「楽しませて差し上げます」
[同日06:00.天候:曇 敷島エージェンシー・仮眠室]
井辺の枕元に置いたスマホがアラームを鳴らした。
井辺:「う……ん……」
井辺は手を伸ばしてアラームを止めた。
井辺:「久しぶりに……仮眠室で寝たな……」
仮眠室は2段ベッドが2つ並んだ4人部屋なのだが、今回は井辺の貸し切りだ。
下段に寝ていた。
枕元のスイッチに手を伸ばすと、仮眠室内の照明が点灯する。
取りあえずワイシャツとスーツのズボンに着替えると、サンダル履きでトイレに向かった。
初音ミク:「おはようございます。プロデューサーさん」
井辺:「ああ、初音さん。おはようございます」
ミク:「昨夜は停電して大変だったんですよ」
井辺:「え?停電したんですか?気が付きませんでした……」
ミク:「しょうがないですよ。停電したの、午前2時過ぎですから」
井辺:「でも今は復電しているようですが?」
ミク:「5時過ぎに直りました」
井辺:「そうですか。非常予備電源とかじゃないですよね?」
それにしては廊下の照明が全点灯しているので、そういうわけでもなさそうだった。
井辺:「社長は寝ていらっしゃいますか?」
エミリー:「昨夜はエミリーと『お楽しみ』だったみたいですから」
井辺:「さすが社長。あんな大嵐の中でもそのような余裕を見せて下さるとは……」
ミク:「プロデューサーさんもよく眠れたじゃないですか」
井辺:「いや、さすがに疲れていたようです。ちょっと顔洗って来ますので」
ミク:「はい」
井辺はトイレの洗面所で顔を洗っていた。
井辺:(『50億円のラブドール』とお楽しみか。そういえば俺も、昔はレイチェルに迫られたことがあったな……)
あくまでも敷島の符丁であって、本当にそう思っているわけではない。
マルチタイプということもあって、彼女らは何でもできる。
その何でもできる特技の中に、『夜伽』が入っているだけに過ぎない。
因みにその機能、ボーカロイドには搭載されていない。
アイドルの枕営業に真っ向から切り込む為である。
井辺:(ま、さすがに俺は社長の足元にも及ばない、と……)
午前2時過ぎ、東京駅日本橋口の広場を業務用ルンバが1人で掃除しているのを見ると切なく感じる。
JR関連の清掃会社が導入したらしいが、そのビル内でも試運転していた。
それにしても、セコムやアルソックが警備ロボットを導入して久しいが、私は1度もそれを見たことがない。
この業界に15年ほどいて、未だに実物を見たことが無いのだ。
いずれは業務用ルンバが清掃している横を警備ロボットが巡回するというシュールな絵が拝めると思うのだが、私が現役のうちに拝めるだろうか……。