報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“アンドロイドマスター” 「大脱出」

2014-09-02 02:30:15 | アンドロイドマスターシリーズ
[8月20日02:00.廃ホテル“シークルーズ”エントランスホール 敷島、アリス、キール、エミリー]

「急げ急げ!」
 再びカジノに戻って来た敷島達。
 ホテルの方はまだ爆発などは起きていなかったが、アラームが鳴り響いているところを見ると、ここも爆発するようだ。
 エントランスホールへ出るため、舵輪型の取っ手を回すと、向こうから何か衝撃音のようなものが聞こえた。
「何!?」
 アリスが緊張した面持ちになった。
「どうやらホテルの方でも、小爆発が始まったみたいだな」
 敷島がそう答えた。
 それでも非常予備電源は止まらなかったのが幸いだった。

 エントランスホールに出ると、まだ爆発は起きていなかった。
 大きな時計台の振り子は、相変わらず大きく左右に振り続けている。
「? さっきの音、どこから……?」
 アリスは首を傾げた。
「それより、早いとこ展望台へ向かおう。眺めを楽しむ余裕も無くなっちまう」
 敷島は展望エレベーターのボタンを押した。
「おっ、動いた。非常予備電源を全部動かした甲斐があったな」
 カゴ内からホール内を見渡せる、ガラス張りのエレベーターだ。
 まあ、このホテルに限らず、ちょっとシャレた観光地のホテルにも似たようなものはあるだろう。
「よし」
 ドアが開いて、早速乗り込む。
「うん、これだ!」
 ボタンには階数表示は書かれておらず、『展望台・大浴場』と書かれたボタンがあったので、敷島はそれを押した。
 すぐにエレベーターのドアが閉まって上昇を始める。
 眼下を見ると、あちこちから煙のようなものが出始めた。
「どうやら、ここも危なくなってきたみたいだな。研究施設の火災が燃え広がってきたのかな」

 ドォーン!(エレベーター内に広がる衝撃。ガラスが割れて、敷島とアリスが危うく転倒しかかったくらい)

「な、何だ!?何かぶつかったぞ!?」
 その衝撃のせいだろうか、エレベーターが止まってしまった。
「気をつけて・ください。何か・います!」
 エミリーが右腕をマシンガンに換えた。
「な、なに!?」
「ガァァァッ!」
 割れた窓の外から覗くは、
「お前は……!」
「ケンショーレッド!?」
 ケンショーイエローと同じく、上半身だけを突き出し、下半身を太った機械に『喰われた』レッドがいた。
「エミリー、キール!とにかく撃て!何かやばそうだ!」
「はい!」
「イエス!」
 エミリーとキールはマシンガンとショットガンに換装した。
 それで応戦する。
「何てこった!ケンショーレンジャーの中で唯一、人畜無害なヤツだと思っていたが、最後で化け物になるとはな!」
 アリスと敷島はドアの前に移動した。
 どうやらレッドがエレベーターを押さえ付けているらしく、こいつを倒さない限り、エレベーターが動くことは無さそうだ。
 レッドはイエローと違い、くたばっているところを『喰われた』のか、意識は無く、口から血を垂らしているだけである(無論、それだけでも十分不気味だが)。
 だから、イエローのようにうわ言を吐くということはない。
 そうこうしているうちに、ホテルの方でも爆発が始まった。
 プロムナードからのドアが吹き飛び、そこから炎が噴き出た。
「最後の最後で邪魔なヤツだ!」
 エミリーはカゴ内に乗り入れて来たレッドに対し、咄嗟に体当たりした。
「グモォォォッ!」
 エレベーターが大きく揺れるが、レッドは時計台の振り子に激突する。
 象徴とも言える大きな振り子は、レッドの爆発により時計台ごと崩れ落ちて行った。
「やったのか!?」

 ガクン!ウィィィ……。

「おっ、動いた!」
 エレベーターが再び上昇を始めた。
「今度はちゃんと展望台まで上がって欲しいな」

[同日02:30.展望台→屋上 敷島、アリス、キール、エミリー]

 大きな吹き抜けのホールが見えなくなり、エレベーターの外は無機質なコンクリートになる。
 またもや止まるが、それはちゃんと到着できたからであり、ドアが開いた。
 ここはまだ爆発も火災も発生していないせいか、アラームが鳴っているだけで煙すら立ちこめていなかった。
「本当なら眺めもいいんだろうに、夜中なのが残念だぜ。で、屋上に出るドアはどれだ?」
「あそこの・ようです」
 エミリーが指差す。
 確かに観音開きの鉄扉があった。『ヘリポート』と書かれている。『屋上テラスへの出口ではありません。東側へお回りください』という表示もあることから、営業中は本当に眺めも良かったのだろうか。
「平賀先生、屋上に到着しました」
 敷島が無線を送ると、
{「了解です。こちらも、まもなく到着します」}
 という無線が返って来た。
「……!」
 屋上へのドアはカードキーでないと開かないようだったが、生前のレッドから頂戴したもので開錠できた。
 さすがにこれは後付けであるらしい。
 キールが開錠操作に当たっていると、エミリーは展望台の片隅に置かれている木箱が気になった。
 スキャンしてみると、エミリーは自分が出したスキャン結果を疑った。
「参事、ドアが開きました!」
「よし!あとは平賀先生の迎えを待つだけだ!」
 既に外は雨がやんでいた。
 ただ、若干風が強いのと、曇り空なのが気になったが。
「ウウ……」
「アア……」
 夜風が気持ち良くなかったのは、この期に及んでヘリポートにクリーチャー・ロボが待ち構えていたからだろう。
 無論、キールが自らに搭載された武器・弾薬で応戦する。
 頭部を狙って、ライフル2発ずつでクリーチャー達はズブズブのゴミと化した。
 リサイクルも分別もできない、迷惑なゴミだ。
「! 何やってんだ、エミリー!?」
 敷島がヘリポートに出ようとしないエミリーに気づいて、問い詰めた。
 既に展望台にも爆発の兆候が表れ、さっき乗って来たエレベーターのドアから煙が出ている。
「敷島さん・これを……」
 エミリーは大きな木箱を運び出した。
 人が1人入れそうな大きさだが……。
「エミリー、何を持ってきたの?」
 アリスもやってきた。
「この箱……」
「開けてみて」
「大丈夫かよ?」
 アリスの命令を受けて、エミリーは木箱の天板部分を開けた。
「ああっ!?」
 中身を見て、敷島達は飛び上がらんばかりに驚いた。

[同日同時間帯 廃ホテル“シークルーズ”付近上空 平賀太一]

「まもなく、目標上空です」
 操縦しているのは平賀ではない。
 パイロットは別にいる。
 そのパイロットに促され、平賀はヘリの窓の外を見た。
「あちゃあ……。いきなり、崩壊寸前か……」
 上空からでもホテルのあちこちから火炎が吹き上がり、爆発で窓ガラスが吹き飛ぶのが見えた。
「屋上のヘリポートはあそこか。……おっ、まだそんなに爆発していない。今のうちだ」
「はい」
 ヘリポート付近に、敷島達の姿を発見した。
 何やら、言い争っているように見えるが……。

[同日02:45.同ホテル・ヘリポート 敷島、アリス、キール、エミリー、平賀]

「だから、危険だっつーの!捨てとけ、こんなの!」
「責任は私が持つわ!これだって、じ―様の大事な遺品よ!」
「その爺さんを殺したヤツじゃないか!」
「あの、迎えに来ました……よ?」
 平賀は首を傾げながら、ヘリを降りた。
「平賀先生、これを見てください!」
 敷島は木箱の中を指差した。
「は?え!?」
 その中にあったのは、
「シンディだ!」
 エミリーと同じマルチタイプにして同スペックの姉妹機、シンディが何故かそこに眠っていた。
「そこにあったんです!こんな殺戮兵器、持って行く必要はない!こいつが暴れ出したらどうなるか知っているだろう!」

 ドォーン!

「うっ!?」
 ついに展望台も爆発が始まった。
「とにかく、判断は財団に任せましょう!エミリー、箱ごとでいいから乗せろ!」
 平賀の命令に、エミリーはパッと顔を明るくした。
「イエス!プロフェッサー平賀!」
 キールも手伝って、木箱をヘリに乗せる。
「どうなっても知りませんよ!」
「すぐに離陸します!」

 ヘリが離陸する。
「見ろ、ホテルが……」
 敷島達の脱出を待っていたかのように、ホテルは何回かに分けて大爆発を起こし、崩壊していった。
「近年に無い大豪雨で、付近の国道の峠で大規模な土砂災害が発生したんです。いきなりヘリで来て驚かれたかと思いますが、つまりもうこれしか手段が無かったわけです」
「よく、ヘリなんてチャーターできましたね?」
「ボーカロイド達が稼いでくれてるおかげですよ」
「これから、どこへ向かうの?」
「財団本部の前に、まずは仙台支部に寄ってからです。それまで、ここで休んでいてください」
「ありがとうございます」

 脱出の直前で思わぬ副産物を手に入れてしまった敷島達。
 このことが吉と出るか凶と出るかは、まだ誰にも分からない。

                                 廃ホテル編 終

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