報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

2度目の正直。

2019-10-26 22:40:36 | 日記
 ケンショーグリーン:「本日の添書登山における大感動は、未だ冷めやらぬものであります。雲羽百三監督はこの度の添書登山において、顕正会では得られなかった感動を得ることができたと述べており、監督はこの感動を胸に顕正会への復帰を強く決意したとハッキリと私めに申されました。これは偏に、顕正会の正しさを証明するものであり……」
 雲羽:「ちょっと待て!誰がそんなこと言った!?マイク返せ!」
 ケンショーグリーン:「嗚呼ッ!御無体な!」
 雲羽:「オマエは無期限出演停止の刑に処す!とっとと帰れ!」 
 ケンショーグリーン:「あ〜れ〜!」
 雲羽:「えー、閲覧者の皆様、大変失礼致しました。取りあえず、写真付きで御紹介しますので、どうぞ気を取り直して御覧ください」

 
(JR身延線313系の車内。東海道線はロングシート車しか存在しないが、身延線ではこのようなボックスシート車も運転されます)

 因みに新幹線の写真はもう既に過去記事で掲載したヤツとほぼ同じだから、割愛させて頂きます。
 前回は高速道路通行止めに伴う一般道大渋滞という悪魔に襲われた為、往路はなるべく鉄道利用で行きました。
 新幹線の“こだま”も空いていたし、運行もスムーズ。
 前回の登山中止は一体何だったのだろうと思うくらいだ。

 
(JR東海313系です。外観だけなら“大魔道師の弟子”で稲生勇太達が乗ったのと同じ。違うのは内装だけ)

 
(新富士駅から富士駅に路線バスで移動し、身延線に乗って下車駅は西富士宮駅)

 因みに今日は富士山が特にきれいに出ていたということで、新幹線では車掌がわざわざ車内放送で案内したほどだ。

 車掌:「写真撮影をされるお客様は、他のお客様への御配慮をお願い致します」

 なんて言ってたな。
 で、それを合図に皆してパシャパシャ撮っている。
 私は半分寝ていたので、その写真は無しw
 西富士宮駅からはタクシーで向かいました。
 田舎道を走行すれば、渋滞なんて関係無し。
 はっきり言って、新富士駅からの登山バスよりも早く着く。
 てか、富士市から富士宮市への移動、車より電車の方が早くね?
 尚、身延線が複線なのは西富士宮駅まで。
 そこから北は単線になり、グッと本数も減る。
 創価学会がもたらしたプラスの影響は、未だに残っているというわけだ。
 因みに作中に出た、富士宮駅構内にあったペンペン草の生えた操車場跡はもう無くなっているので注意。
 創価学会が夢の跡、1つ消える。

 
(奉安堂と富士山です。着山時は雲1つ無かったのだが、私が撮影した時には少し雲が出た)

 
(てやんでぇ!俺っちは日顕上人とはこれっぽっちも縁が無ェから、桜のことなんざ知らねーぜ!……と言いたいところだが、一輪だけ残ってたw)

 とはいうものの、私はやっぱり直接日顕上人の御尊顔を拝したことは無いから、何とも言えないね。
 で、桜に関しても私が登山した時はあのザマだったから、やっぱり何とも言えない。
 多分この2つに関しては顕正会員が法華講員と見たら透かさず突っ込んでくる所なんだろうけど、私個人の答えとしては、「何とも言えない」ってことになるかな。
 もちろん、もう1度理由を言えば、「私は直接見たこと無いから」である。
 ま、私は傍観勢なので……。
 この辺はトチロ〜さんに丸投げ……もとい、お任せってことで。

 
(大石寺14時58分発、“やきそばエクスプレス”号。今や東京駅発着の高速バス会社で、ヒュンダイ使ってるの富士急だけじゃね?この辺は“バスターミナルなブログ”の方達に考察して頂きたい)

 
(15時10分発の新富士駅行き、下山バス。稲生勇太達は14時40分発に乗ったわけだが、車種はこれ。本当にランダムな運用である。ここ最近は高速バス車両が充当されることは無くなっているようだ)

 
(私が乗ったのはこれ。UDトラックス・スペースアロー。古株の部類に入ると思われる。加速力のセレガRに対して、制動力のスペースアローってところか。古株に当たるからか、Wi-Fiは導入されているものの、充電コンセントは無い)

 1つだけ不満があるとすれば、東海道新幹線車内のWi-Fiが弱いということかな。
 繋がりが悪い上、やっと繋がってもすぐ切れる。
 あれはクレームものだね。
 え?どうせ単なる付加価値だろうって?
 もちろん、高速バスにあってはそうだ。
 しかし、新幹線は違う。
 あれだけ高い料金を取っておいて、車内サービスたる車内販売を縮小または廃止にしている。
 その代わりがWi-Fi導入なのだとしたら、少しお粗末なサービスであろうと思う。

 ……と、どうしても話題が登下山中心になってしまうね。
 いや、山内における大感動話は他の信徒さんに丸投げ……もとい、お任せのつもりなので。
 大石寺第二ターミナルでバスの写真を撮っている怪しい男を見かけたら、私だと思ってください。
 とにかく、リベンジは成功した。
 さすがの障魔も、天丼はしたくなかったようだ。
 来月は引っ越しが控えているので、それに備えるとしよう。
コメント (3)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

“大魔道師の弟子” 「魔女達の舞踏会、前日譚」

2019-10-25 19:05:35 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[10月25日18:00.天候:雨 長野県北部山中 マリアの屋敷B1F・機械室]

 マリア:「Restart!」

 ガチャ!ガチャ!
 ブゥゥゥン……!!

 稲生:「あっ、また電気点いた。良かった良かった」
 マリア:「全く。雨が降る度に停電して、再起動させられる身にもなってみろってんだ」
 稲生:「まあまあ。それにしても、あの台風の時から随分と調子が悪くなりましたね」
 マリア:「師匠曰く、『消耗品だからねぃ』だそうだ。今さら取って付けたような理由言いやがって……!」
 稲生:「でもそれは本当のことなんでしょう?それはそれとして、だったら早いとこ新しいものと交換してもらいませんと……」
 マリア:「さすがに師匠も、それは分かってると思うけどね」

 2人の魔道士はそんなことを話しながら、地上階へ向かう階段を登った。

 稲生:「……ックシュ!」
 マリア:「大丈夫か?」
 稲生:「ええ。急に冷えてきましたね」
 マリア:「屋敷内は定温に保たれているはずなんだけど、さっきの停電で冷えたかな。そういえば、私も上着を脱ごうとは思わなかった」

 マリアは相変わらず緑色のブレザーを着ていた。
 シングルだと本当にJKに見えてしまうのでダブルを着ているが、それでも容姿が幼く見えるからか、コンビニなどで酒を買う時はパスポートを出すようにしている。
 その為、イリーナからは、そろそろイリーナのような大人っぽいドレスを着用するように言われているが……。

 稲生:「マリアさん、その服、とても似合いますもんね」
 マリア:「勇太が気に入ってくれなきゃ、私はもっとぞろっとした服を着ていただろうね」

 マリアは目を細めて答えた。

[同日18:30.天候:雨 マリアの屋敷1F・大食堂]

 イリーナ:「ご苦労さん。多分もう今日は停電しないと思うから、あとはゆっくりしよう」

 食堂に行くと既に夕食の用意はできあがっていた。
 イリーナがナイフとフォークを手に取ると、それが食事開始の合図である。

 稲生:「南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経。いただきます」
 マリア:「昔は『天におられる私達の父よ』ってやってたんだけどな……」
 イリーナ:「その『父』に助けてもらえなかったから、ここにいるんじゃない」
 マリア:「まあ、そうですけど」
 イリーナ:「それは私も同じ」
 稲生:「仏様だったら、すぐそこにいらっしゃいますよ。御受誡します?」
 マリア:「しない!」
 イリーナ:「勇太君、あくまでも仏教だけが黙認されているというだけで、大っぴらに許されているわけじゃないんだからね?」
 稲生:「はい、すいません」
 マリア:「何で仏教だけ黙認されてるんです?」
 イリーナ:「それは私達も詳しいことは知らないのよ。『魔女狩りの歴史が無いから』とか、『ダンテ先生がかつて仏教に興味を持たれていたから』とか、色々と噂されているけど……」
 稲生:「もしかして、日蓮大聖人の御前にいらっしゃったことがあったとか?」
 イリーナ:「それは無いわね。その日蓮さんは、インドとかには行ったの?」
 稲生:「いえ、行ってないです。そもそも外国にすら行かれてないです」
 イリーナ:「じゃあ、違うわ。今から800年くらい前の話でしょう?誰も、ダンテ先生が日本に行ったなんて知らないもの」
 マリア:「師匠達ですら大師匠様のお姿を常に追われているわけじゃないんでしょう?実はこっそり日本に行ってたという可能性は?」
 イリーナ:「それも無いわね。あの時はポーリン姉さんなどがダンテ先生の付き人みたいなことをしていたの。もし日本に行ってたら、すぐに分かるわ」
 稲生:「さっき、インドが出て来ましたけど……」
 イリーナ:「インドには行かれたみたいね。でも、そこで仏教に触れたとかいう話は聞いてないわ」
 稲生:「その頃からインドってイギリスの植民地でした?」
 イリーナ:「いや、そんなことないよ。その頃は独立した王国だったわ。もっともその時、ダンテ先生は似たような予言はされたみたいだけど」
 稲生:「なるほど……」
 イリーナ:「ま、いずれにせよ、今はダンテ先生の御好意で仏教徒でいられるんだから、感謝しなさいよ」
 稲生:「も、もちろんですよ」
 イリーナ:「ぶっちゃけ、ガウタマ・シッダールタよりもダンテ先生の方が……あうっ!」
 マリア:「!?」
 稲生:「どうしました?」
 イリーナ:「腰にギアス(呪い)が……!」
 マリア:「また腰痛ですか……」
 イリーナ:「これはきっと、今の話をダンテ先生が聞かれてて……『これ以上は言うな』と……」
 マリア:「はあ?」
 稲生:(大師匠様と仏教、一体何の関係が……?)
 イリーナ:「ア、アタシゃ先に休ませてもらうよ……。ごちそうさま……」

 イリーナはヨロヨロと立ち上がると、魔法の杖を老人の杖代わりに突き、マリアのメイド人形達に支えられて席を立った。

 マリア:「ただの持病でしょ」

 マリアは素知らぬ顔でステーキを口に運んだ。

 稲生:「でも、先生ほどの方なら腰痛くらい魔法で治せそうなものですが……」
 マリア:「だから、その魔法も効かないくらい歳なのよ。あの体、耐用年数が迫っているっていうし」
 稲生:「そんなもんですかねぇ?」
 マリア:「そんなもんよ。魔力が弱かったら、とっくに老衰でくたばってる体だよ、あれは」

 大魔道師の強い魔力で、まだ30代女性の見た目を保っているのだ。
 美魔女どころの騒ぎではない。
 マリアなど、契約悪魔ベルフェゴールの『特典』で、未だに契約当時の18歳のままだ。
 稲生はまだ正式な契約はしていないのだが、既にそれが内定している悪魔から、何らかの『特典』は受けているもよう。
 こうすることで、他の悪魔からの横取りを防いでいるのだという。

 稲生:「なるほど」
 マリア:「それより、今度の『ダンテ先生を囲む会』、日本で開催だからね?この国を拠点としている私達がホストになって、しかも日本人である勇太が率先して会場押さえとかしなくちゃいけないけど、大丈夫?」
 稲生:「あ、はい。あの、『ダンテ先生を囲む会』は、俗称でしょう?多分、令和天皇即位に絡んだ動きではないかと……」
 マリア:「まあまあ。それとも、『魔女達の舞踏会』にする?」
 稲生:「そっちの方がカッコいいかもしれませんね。とにかく、高級ホテルとかは押さえておきますので……」
 マリア:「頼むよ。こういうのが上手く行って、大師匠様の覚えがめでたかったら、勇太もマスターにしてもらえるから」
 稲生:「魔法とかの実力を見られるんじゃないんですか?」

 水晶球の向こうで、大師匠ダンテ・アリギエーリが苦笑していたことは言うまでもない。
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

“アンドロイドマスターⅡ” 「台風19号通過後、更に経過」

2019-10-25 10:26:55 | アンドロイドマスターシリーズ
[10月13日06:30.天候:曇 東京都江東区豊洲 豊洲アルカディアビル18F・敷島エージェンシー]

 井辺が事務所のトイレで顔を洗っていると、敷島が入って来た。

 敷島:「グッモーニーン……」
 井辺:「あっ、社長。おはようございます」
 敷島:「停電、復旧したんだなー」
 井辺:「あ、社長は御存知だったんですね」
 敷島:「俺がトイレから出ようとしたら、バチッと切れやがったからさぁ……」
 井辺:「そうだったんですか。私は恥ずかしながら、爆睡してて気が付きませんでした」
 敷島:「いや、いいんだよ。その方がいい。知らぬが仏って言うからな」
 井辺:「はあ……」
 敷島:「チラッとさっきテレビを見たんだが、どうやら一夜明けても交通機関は復旧しないらしい。早くても、今日の昼頃だそうだ」
 井辺:「やはりですか……。下の被害はどうだったんでしょう?」
 敷島:「それはまだ分からん。だけど、まだしばらくこの事務所にいた方が良さそうだな」
 井辺:「はい」
 敷島:「ま、非常食も飲料水も備蓄してあるから心配すんな」
 井辺:「はい、それはもう……」
 敷島:「じゃ、取りあえず俺はエミリーの体洗って来てやるから。シャワー使う?」
 井辺:「いえ、私は昨夜使わせて頂いたので……」
 敷島:「あ、そう」
 井辺:「初音さんからぼんやり聞いたんですが、昨夜はエミリーさんとお楽しみだったそうで……」
 敷島:「ちっ、ミクにはバレてたか。エミリーのヤツ、凄いよ。タマが空になるまで搾り取られた……」
 井辺:「は、はあ……」
 敷島:「井辺君にも後で貸してあげるからね」
 井辺:「いえ、結構です。遠慮しておきます。レイチェルで懲りましたから」
 敷島:「あ〜、そうか。まあ、いいや。井辺君も昼くらいまで寝てていいよ」
 井辺:「いえ、取りあえず情報収集に当たります」

 井辺がそう言うと、敷島は頷いてエミリーをシャワー室に連れて行った。

 井辺:「あれだけマルチタイプを使いこなす人間は、やはり珍しいのかもしれない……」
 初音ミク:「わたしも、社長は凄い人だと思います」
 井辺:「ですね」
 ミク:「何せ兵器として開発されたわたしを、ボーカロイドとして再生してくれた人ですから」
 井辺:「最初にその機能を発見したのは、平賀教授だということですが……」
 ミク:「平賀博士はわたしの機能を発見して、社長に伝えただけです。博士も、わたしの機能を重視していませんでした」

 ミクの歌唱機能を最大限を発揮すると、人間の脳幹を停止させる大量虐殺兵器に変わる。
 そこを上手く調整したのが平賀と敷島のコンビだ。
 開発者の南里は危険過ぎると海洋投棄したのだが、弟子の平賀がそれを回収してしまった。
 結果的には平賀の判断は正しかったと言える。

 ミク:「エミリーはあの調子ですし、プロデューサーさんの朝ご飯はわたしが用意しますね」
 井辺:「ああ、初音さん。助かります」

 そして、シャワー室では……。

 エミリー:「気持ちいいです。社長、ありがとうございます」
 敷島:「大事な『お人形さん』をきれいにしてやるのも、持ち主の義務だからな」

 もちろんアンドロイドは自分で自分の体を洗うことができる。
 元はテロ用途として製造されたバージョン・シリーズでさえ、そうしようとするくらいだ。
 街角のガソリンスタンドの洗車機を無断使用したことが相次ぎ、大問題となったことがあるくらいだ。
 その度にエミリーとシンディが、どつき回したほどである。
 しょうがないので、洗車機を改造した洗浄機をアリスが開発し、それをバージョン達に使わせることで収束した。

 エミリー:「んっ……ん……!」

 エミリーが下半身に力を入れると、ゴボッと秘所から白濁したドロリとした液が出て来る。
 透かさずそれを洗い流してやる敷島。

 エミリー:「いっぱい出されましたね……。きっと、人間の女性なら妊娠してしまいます……」

 エミリーは恍惚とした顔で言った。
 敷島は後ろからエミリーを抱きしめた。

 敷島:「お前が人間だったらなぁ……。俺はお前と……」
 エミリー:「社長……」

 エミリーは恍惚とした顔で敷島の手を握った。
 が、その顔が一瞬、恍惚の表情からほくそ笑むものに変わった。
 それは人間に支配されるべきAIが、支配してやったという勝ち誇った顔のように見えた。

[同日07:00.天候:曇 敷島エージェンシー事務室・打合せコーナー]

 井辺はミクに用意された朝食を取っていた。
 といってもパック容器の白飯(つまり、サトーのごはん)を電子レンジで温め、おかずは缶詰や真空パックで保存されていたもの、味噌汁はフリーズドライのものを熱湯で戻しただけであった。

 井辺:「本当に非常食ですね。でもまあ、備蓄していて良かったですよ。いただきます」
 ミク:「どうぞどうぞ」

 打合せコーナーの椅子に座り、机の上に並べられた朝食に箸をつける。
 ラジオを点けてそれをBGMとするが、やはり流れて来るのは台風情報である。

〔「……首都圏の鉄道に関する情報です。まず、各新幹線ですが、東海道新幹線のみ始発から運転を再開しました。今後、概ね平常運行を行うとしています。……」〕

 井辺:(やはり在来線の運転再開は昼頃からか……。せめて首都高でも復旧してくれれば……)

 ラジオを聞いていると、それもどうやら昼頃のようである。

 敷島:「あ、井辺君。ここにいたのか」
 井辺:「社長。すいません、先に朝食頂いてました」
 敷島:「いや、いいよ。それで、交通機関の復旧はいつだって?」
 井辺:「やはり在来線も首都高も、昼頃になるようです」
 敷島:「そうか。やはりなぁ……。取りあえず、昼まではゆっくりしよう。復旧したらそれで帰ろう。今のところ、シンディからは何の連絡も無いが、何だか心配になってきた」
 井辺:「そうですね。私もそう思います」
 敷島:「井辺君の実家は岩槻だったか」
 井辺:「そうです。復旧したら車を出していいですか」
 敷島:「いいよ。それで一緒に帰ろう」
 井辺:「はい、分かりました」

 台風が通過した後とはいえ、まだ風の強い豊洲地区。
 ビルに目立った被害は無いようだが、とても今の状態では帰れそうになかった。

 エミリー:「いざとなったら、私がお2人を抱えて飛びますので」
 敷島:「それは頼もしい」
 井辺:「いずれ復旧しますから、それを御遠慮しますよ」

 敷島と井辺は、こうして台風を乗り切ったのである。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

“アンドロイドマスターⅡ” 「台風19号通過後」

2019-10-24 19:37:53 | アンドロイドマスターシリーズ
[10月13日02:00.天候:雨 東京都江東区豊洲 豊洲アルカディアビル18F・敷島エージェンシー]

 社長室内に設置したエアベッドで寝ている敷島。
 それが暴風雨が窓ガラスを叩く音で目が覚める。

 敷島:「ん……。ちょっとトイレ……」

 敷島は手を伸ばして、外したメガネを取ろうとした。
 すると、手に柔らかい物が当たる。

 エミリー:「ふぁ……」
 敷島:「うわっ、ととと!?」

 それは護衛と称して同衾するエミリーの巨乳だった。
 スリープ状態になると人間で言う寝息を立てず、体温も無くなるし、つまりは死体と一緒に寝るようなものだ。
 敷島が胸を掴んだことで、エミリーのスリープモードが解除される。

 エミリー:「どちらへ?」
 敷島:「トイレだ、トイレ」

 敷島はTシャツにハーフパンツをはいている。
 スリッパを履くと、社長室を出た。
 途中の仮眠室では井辺が寝ているから、静かに廊下を進む。
 真夜中にロケ先から到着したり、或いは始発電車が走り出す前からロケに出発したりということも多々ある為、事務所内には仮眠室がある。
 しかし、あえてそこに敷島は寝ようとはしなかった。
 仮眠室の隣にはボーカロイド達の部屋があり、エミリーが放つ電波で彼女らが警戒して充電不良を起こしたことがあったからだ。

 敷島:「マジかよ。ここまで雨音聞こえんぜ……」

 幸いまだ停電はしていない。
 眩しいトイレの明かりに目を細めながら用を足していると、換気ダクトから雨音が聞こえて来た。
 普通は聞こえないのだが、それほどまでに強い雨風なのだ。

 敷島:「全く……」

 用を足した後で手を洗っていると、バチンと照明が切れた。

 敷島:「!……かー、ついにやられたか……」
 エミリー:「社長」
 敷島:「おわっ、びっくりした!」

 エミリーがトイレの中に入って来た。
 片目をライトのように点灯させている。
 それ以外にも真っ暗な中にいるからか、もう片方の目も電源ランプの明かりが漏れて淡く光っている。
 鉄腕アトムなどば両目を光らせているが、現実はLEDの明るい光源がある為、片目を光らせるだけで十分である。
 もっとも、LEDに換装されるまでは彼女らも両目を光らせていた。
 尚、故障時の予備と警告ランプも兼ねて、実はもう片方の目にもLEDは搭載されている。
 つまり、彼女らが両目を光らせている時、その感情は昂っているものと思って良い。

 エミリー:「大丈夫ですか?ついに停電したようです」
 敷島:「そうみたいだな。さすがに想定通りか」
 エミリー:「早く戻りましょう。私が先導します」
 敷島:「ああ、頼む」

 もっとも、非常灯や非常口誘導灯、それに消火栓の赤ランプは点灯していたが、全部予備電源で点灯するものである。

 敷島:「お前もバッテリーを無駄にするなよ?」
 エミリー:「分かっています」

 エミリーはいつもの衣装を脱いで、ビキニスタイルになっていた。
 因みにこの上からアーマーを装着させると、よくRPGとかにいるビキニアーマーの女戦士の恰好をさせることができる。
 そのエミリーも、武器として電気鞭を持っていた。

 敷島:「それにしても参ったな。ここ18階だぜ?エレベーターも止まっただろうし、復旧まで帰れないだろうな」
 エミリー:「その時は私が抱えて緊急離脱します」
 敷島:「その時が来ないように願うよ」

 敷島は苦笑いをした。

 敷島:「ちょっと待て。今のうちに水を飲んでおこう」
 エミリー:「お水ですか?」
 敷島:「冷蔵庫が止まったということは、飲み物も温くなるだろう。今は停電したばっかりだから、まだ冷たいはずだ。冷たいうちに飲んでおきたい」
 エミリー:「かしこまりました。今のうちにお持ちします。社長は先に戻っていてください」
 敷島:「ああ。エミリーも飲んでいいぞ」
 エミリー:「冷却水はまだありますので、その必要はありません」
 敷島:「そうか」

 エミリーは給湯室の冷蔵庫からミネラルウォーターのペットボトルを出すと、それを湯のみに注いだ。
 そしてお盆に乗せて、社長室まで運んだ。

 敷島:「参ったな。非常灯が勝手に点いている」
 エミリー:「そうですね」

 天井に付いている豆電球の明かり。
 大元のスイッチは切っていても、勝手に点灯してしまっている。
 もちろんこれだけでは心許無い明かりではあるが、しかしちょうど敷島のベッドの真上で点灯しているので、さすがにこれは眩しいだろう。

 エミリー:「少々お待ちください。今、ベッドを移します」
 敷島:「いや、このままでいいよ。それよりエミリー、お前にも飲ませてやるぞ」
 エミリー:「冷却水はまだ……」
 敷島:「そう言うなって」

 敷島は自分の水を飲んだ後、再び水を含んでエミリーを抱き寄せ、唇を重ねて彼女の口の中に注ぎ込んだ。
 エミリーは目を閉じて、口移しされた水をこくんこくんと飲み干す。

 エミリー:「ありがとう、ございます」

 エミリーは恍惚な表情を浮かべて敷島を見つめた。

 敷島:「どうせしばらく眠れそうに無い。だったら、お前に相手してもらおうかな」
 エミリー:「光栄に存じます。『50億円のラブドール』、どうぞお楽しみください。……いえ」

 エミリーは着ていたチューブブラやビキニショーツを脱ぎ捨てると、訂正した。

 エミリー:「楽しませて差し上げます」

[同日06:00.天候:曇 敷島エージェンシー・仮眠室]

 井辺の枕元に置いたスマホがアラームを鳴らした。

 井辺:「う……ん……」

 井辺は手を伸ばしてアラームを止めた。

 井辺:「久しぶりに……仮眠室で寝たな……」

 仮眠室は2段ベッドが2つ並んだ4人部屋なのだが、今回は井辺の貸し切りだ。
 下段に寝ていた。
 枕元のスイッチに手を伸ばすと、仮眠室内の照明が点灯する。
 取りあえずワイシャツとスーツのズボンに着替えると、サンダル履きでトイレに向かった。

 初音ミク:「おはようございます。プロデューサーさん」
 井辺:「ああ、初音さん。おはようございます」
 ミク:「昨夜は停電して大変だったんですよ」
 井辺:「え?停電したんですか?気が付きませんでした……」
 ミク:「しょうがないですよ。停電したの、午前2時過ぎですから」
 井辺:「でも今は復電しているようですが?」
 ミク:「5時過ぎに直りました」
 井辺:「そうですか。非常予備電源とかじゃないですよね?」

 それにしては廊下の照明が全点灯しているので、そういうわけでもなさそうだった。

 井辺:「社長は寝ていらっしゃいますか?」
 エミリー:「昨夜はエミリーと『お楽しみ』だったみたいですから」
 井辺:「さすが社長。あんな大嵐の中でもそのような余裕を見せて下さるとは……」
 ミク:「プロデューサーさんもよく眠れたじゃないですか」
 井辺:「いや、さすがに疲れていたようです。ちょっと顔洗って来ますので」
 ミク:「はい」

 井辺はトイレの洗面所で顔を洗っていた。

 井辺:(『50億円のラブドール』とお楽しみか。そういえば俺も、昔はレイチェルに迫られたことがあったな……)

 あくまでも敷島の符丁であって、本当にそう思っているわけではない。
 マルチタイプということもあって、彼女らは何でもできる。
 その何でもできる特技の中に、『夜伽』が入っているだけに過ぎない。
 因みにその機能、ボーカロイドには搭載されていない。
 アイドルの枕営業に真っ向から切り込む為である。

 井辺:(ま、さすがに俺は社長の足元にも及ばない、と……)
コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

“アンドロイドマスターⅡ” 「台風19号通過中」

2019-10-24 10:12:56 | アンドロイドマスターシリーズ
[10月12日20:00.天候:雨 東京都江東区豊洲 豊洲アルカディアビル18F・敷島エージェンシー]

 敷島は巡音ルカのダンスを見ていた。
 手元にはルカの監視端末がある。

 ルカ:「……いかがだったでしょうか?」

 一通りダンスを終えて、ルカが敷島に聞いてきた。

 敷島:「照合率92.28%か。まずまずだとは思うがな」
 ルカ:「でもリンやレンは98%超えです。MEIKOやKAITOでも95%を超えています」
 敷島:「数%の誤差くらい、普通の人間は気付かないよ。それに、そういった誤差は調整だけでどうにかなるものじゃない。もちろん持ち前の性能の関係もあるし、整備状況も関係してくる。うちのアリスが言っていたが、『今の技術では90%を超えれば御の字』だそうだ」
 ルカ:「で、でもっ……!」
 敷島:「とはいえ、100%は無理だとしても、95%超えなら調整で何とかなるか」
 ルカ:「私は……ポンコツなのでしょうか?」
 敷島:「誰がそんなこと言った!お前はダンスに関しては多少性能が劣るだけで、歌唱性能はボカロ全機並べりゃトップなんだぞ?」
 ルカ:「しかし、人間は私達に対して完璧を求めていると聞きます」
 敷島:「それは否定しないさ。ただ、それは『ロボット』に対してであって、ロイドではないと思う」
 ルカ:「?」
 敷島:「ここ最近思うんだが、お前達は動きが完璧過ぎて……そこに新たな問題があるような気がしてならないんだ」
 ルカ:「???」
 敷島:「いや、それはお前は考えなくていい。そういうのは人間に任せてくれ。とにかく、かなりバッテリーを消耗しただろ?停電する前に早いとこ充電しておけ」
 ルカ:「分かりました。ありがとうございました」
 敷島:「じゃあな」

 敷島はレッスン室を出ると、事務室に向かった。

 敷島:(『動きが完璧過ぎてつまらない』とか、『ロボットのようだ』とか、そういう批判の声もあるんだよなぁ……。かといってあまりファジィ過ぎると、今度は『ロイドである必要が無い』とかなるし……。うーむ……)

 そして事務室に入る。

 井辺:「あっ、社長。レッスン室から音楽が聞こえてきましたが?」
 敷島:「ルカが自分のダンス性能を気にしてたんだよ」
 井辺:「歌唱性能を重視する余り、身体能力が劣ってしまったということですが……」
 敷島:「それでも照合率は90%超えだったよ。俺的にはそれで十分だと思うんだ。今の技術では、彼女らの体で100%は無理だし」
 井辺:「近づければ近づけるほど、『ロボットみたいだ』とか言われるんですよね」
 敷島:「まあ、『ロボットみたい』なんだけどな。俺的には95%前後がちょうどいいと思ってる」
 井辺:「ですよねぇ……」
 敷島:「それで、イベントの調整はどうなった?」
 井辺:「あ、はい。一応、ほとんどが11月に延期ですね。今月中だとまた台風が発生して接近して来る恐れがありますし、あと『即位の礼』とカブる恐れがありますので」
 敷島:「あ、そうか。もっとも、11月だって台風が来る時ゃ来るけどな」
 井辺:「しかし10月よりは確率は低いです」
 敷島:「まあな。1番いいのは12月だと思う」
 井辺:「12月はクリスマスイベントやら年末特番やらで稼ぎ時です」
 敷島:「ライブだってそうさ。さすがに12月ともなれば台風はまず発生しないし、それに……」
 井辺:「それに?」
 敷島:「地球温暖化のおかげで、まず12月に東京で大雪が降ることは無いから、それでイベント中止とかは無い」
 井辺:「仰る通りです。そもそも雪自体が降らないです」
 敷島:「だな!ドラマとかアニメとかじゃ、都合良く東京で12月24日や25日に雪が降って、『ホワイトクリスマスぅ〜w』とか言ってるが、実際は無ェぞ?」
 井辺:「だから撮影の時は人工の雪を降らせるんですよね」
 敷島:「札幌の雪ミクイベントを東京でやろうとした時は大変だったな」
 井辺:「またやります?」
 敷島:「……やるか?」
 井辺:「本社がまた嫌な顔するでしょうけど」
 敷島:「問題無い。そのイベントで大黒字(おおもうけ)できりゃ、叔父さん達のうるさい口を札束で封じることができるよ」
 井辺:「さすが社長。発想が違います」
 敷島:「だろォ?」

 その時、室内の照明がブレた。
 ブレたというのは明暗を繰り返したという意味だ。

 敷島:「な、何だ何だ?」
 井辺:「瞬低とか瞬電とかいうヤツですかね?どうやら、冗談抜きで停電フラグが立っているようです」
 敷島:「それはヤバいな。今のうちに停電対策グッズ用意しておこう」
 井辺:「あっ、社長。私がやりますよ。社長は休んでてください」
 敷島:「いや、いいよいいよ。井辺君こそ、そろそろシャワーとか使って寝る準備しておけよ。停電したらシャワーも使えなくなるぞ」
 井辺:「あ、はい」

 敷島はまた社長室に戻った。
 時折、窓ガラスを激しい暴風雨が叩き付けている。
 それが分かるくらい大きな音だ。

 エミリー:「社長、ベッドの用意ができました」
 敷島:「おっ、ありがとう」

 エミリーはエアで膨らませるタイプのベッドを用意していた。
 これだけで大きさはセミダブルくらいある。
 敷島的にはシングルサイズで良かったのだが、エミリーやシンディが反対した。
 同衾したいからである。
 そこはアリスも止めなかった。
 他の人間の女を同衾させるくらいなら、まだ自分の祖父の作品(シンディ)やその姉妹品(エミリー)を同衾させておいた方が良いという考えだ。
 その為、ダブルサイズも販売していたのだが、そこは何故か阻止され、折衷案としてセミダブルとなったという経緯がある。

 エミリー:「先ほど電気系統にトラブルが発生したようです。停電する前にお休みになられた方がいいと思います」
 敷島:「そうだな。井辺君が先に休んだら、俺もそうするよ」
 エミリー:「井辺プロデューサーは仮眠室を利用でしたね」
 敷島:「そう」
 エミリー:「それでは私は仮眠室で井辺プロデューサーのベッドを用意して参ります」
 敷島:「あ、それがいいな。頼むぞ」

 エミリーは社長室を出ていった。
 敷島は室内の応接セットのソファに座ると、またテレビを点けた。

 敷島:「何度見ても東京直撃は確定か。……俺も帰りゃ良かったかな?……まあいいや」
コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする