[9月28日13:45.天候:曇 静岡県富士宮市上条 大石寺・奉安堂上空]
エレーナ:「おーおー、稲生氏達があの中にいるのが分かるぜ」
エレーナとマリアはホウキに乗って、大石寺上空までやってきた。
尚、ホウキ乗りではないマリアはエレーナの後ろに乗っている。
マリア:「よくあれがそうだって分かったな?私にはどれも全部同じ建物にしか見えないが……」
エレーナ:「そりゃあ、知ってるぜ。昔、あれを爆破テロしようとしたんだからなぁ」
マリア:「あっ、聞いたことある……」
エレーナが前の肉体を使用していた時だった。
そしてその時はイリーナとポーリンが表立ってケンカしていた時でもある。
師匠同士がケンカしているのに、弟子同士が仲良くできるわけがない。
しかも当時のエレーナはまだ見習で、師匠ポーリンに心服していた時だったから、師匠の敵は自分の敵とばかりにマリアと入門が予定されていた稲生を攻撃対象としていた。
もちろん今は師匠同士が表向き和解したこともあり、ケンカする理由が無くなった上、エレーナも個人的には稲生のことが気に入っているから、今は仲良くしているが……。
まだケンカしていた頃、エレーナは稲生が御開扉に参加しているのを知って、奉安堂に爆弾テロをしようとしたことがある。
ところが、それは意外な者に阻止された。
妖狐の威吹である。
妖狐の妖術で完全に姿と気配を消した威吹に、妖刀で背後から体を串刺しにされた。
変わり身の魔法で何とか命が無くなる前に逃げおおせることができたが、前の体は使い物にならなくなってしまった。
威吹は別に護法のつもりでエレーナを攻撃したわけではない。
稲生とは盟約を結んだ仲であった為、エレーナがそれを攻撃しようとしていたのを知って阻止しただけだ。
結果的に奉安堂も本門戒壇の大御本尊も守られたというわけである。
エレーナ:「さーて、ここらでリベンジと行くかぁ!」
エレーナ、中折れ帽の中からTNT爆弾を取り出す。
マリア:「突き落とすぞ、コラ。てか、魔法使いが化学爆弾持って来るな!」
エレーナ:「フム。私が攻撃しようとすると、必ず邪魔が入る。やはりこの中にある物は、ただの物ではない」
マリア:「勇太が中にいるからだろうが!」
ピカッ!
エレーナ:「あ?」
マリア:「!?」
突然、上空から稲光が光った。
その直後、2人の魔女に大粒の雨が当たる。
エレーナ:「うわっ、ゲリラ過ぎる豪雨だぜ!」
マリア:「エレーナ!オマエのせいだぞ!」
ピカッ!
マリア:「早く着陸しろ!落雷するぞ!」
エレーナ:「ちょっと待て!今、着地点を探す!」
2人の魔女は、ほうほうの体(てい)で奉安堂を離脱した。
[同日14:10.天候:晴 大石寺奉安堂内部→境内売店]
執事:「支部総登山を始め、遠ごん各地より深信の当参、願い出により本門戒壇之大御本尊御開扉奉り、【中略】懇ろに申し上げました」
大導師を務めるべきの御法主上人が今回は出て来られず、代わりに執事職の僧侶が代役を務めた。
もちろん、大導師の代役が務まるのだから、相当な高僧であることに代わりは無い。
進行係の僧侶:「退場に先駆けまして、注意事項を申し上げます。……」
壇上の僧侶達が引き上げてから、信徒達の退場が始まる。
鈴木:「あれ?今日は御法主上人猊下とは違う人でしたね?」
稲生:「僕も初めてだ」
藤谷春人:「あー、それはたまにあることだ。猊下様が例えば法要なんかあったりすると、そちらが優先になるから、欠席されこともたまにある。その為、大石寺にはそういった場合の代役を務められる執事様がいらっしゃるんだ」
鈴木:「そうなんですか」
稲生:「猊下様の代役をお勤めになられるんですから、大僧正くらいの地位なんでしょうね」
春人:「御僧侶の階級までは俺は知らんが、もし日如上人様が御退座されるようなことがあった場合、次の猊下として登座される候補者の中にいるのは間違いない」
奉安堂の外に出る信徒達。
鈴木:「あれ?雨が降ったんだ?」
稲生:「そういえば、外から雷の音とか聞こえたような気がする……」
春人:「おい、見てみろ。それで空気が澄んだからなのか分からんが、富士山に向かって虹が掛かってるぜ」
稲生:「本当だ。写真に撮ろう」
鈴木:「スマホで虹、写りますかね?」
稲生:「大丈夫じゃないの?」
稲生と鈴木は富士山に向かって写真を撮った。
稲生:「あとはマリアさん達と合流するだけだ」
鈴木:「エレーナの話だと、大石寺まで飛んで来ると言ってましたが……」
稲生:「さすがは魔法使い。でも、どこにいるんだろう?」
鈴木:「売店のどこかにいるかもですね」
春人:「それじゃ稲生君と鈴木君、気をつけて帰ってくれよ?」
鈴木:「はい、班長。ありがとうございました」
藤谷は報恩坊へと向かった。
恐らく、修理工事の様子を見に行ったのだろう。
鈴木:「俺はエレーナに電話してみます」
稲生:「うん」
鈴木は自分のスマホを取り出すと、それでエレーナに掛けた。
鈴木:「あ、もしもし、エレーナか?御開扉終わった。今どこだ?……ああ、てことは“藤のや”さんだな。今行く」
電話を切った。
鈴木:「雨が降って来たので、喫茶店で休んでいるとのことです」
稲生:「なるほど。それで“藤のや”さんか。あー、そうか。マリアさん達は雨に当たっちゃったのか……」
鈴木:「キリスト教やイスラム教と違って、仏教は心が広いはずですが、さすがに悪魔信仰者は警戒されましたかね?」
稲生:「いや、別に悪魔を信仰しているわけじゃないよ。契約しているだけで」
その時、稲生は昔のエレーナの所業を思い出した。
そして……。
エレーナ:「おっ、稲生氏。御苦労様だぜ」
鈴木:「もしかして、また奉安堂にテロしようとしなかった?」
エレーナ:「さ、さあ。何のことかさっぱりだぜ」
マリア:「ウソつけ、この野郎」
鈴木:「うわ、また外曇ってきた!?」
マリア:「『ウソつき魔女はとっとと出てけ、この野郎』というブッダの警告だな。早いとこ帰ろう」
エレーナ:「じゃ、鈴木。代金よろしくだぜ」(^_-)
エレーナのウインクに……。
鈴木:「はい、喜んで〜」(´∀`*)
デレながら財布を出す鈴木だった。
マリア:「いいよ!私のは自分で出すから!」
嫌いな男の施しは頑として断るマリアだった。
エレーナ:「おーおー、稲生氏達があの中にいるのが分かるぜ」
エレーナとマリアはホウキに乗って、大石寺上空までやってきた。
尚、ホウキ乗りではないマリアはエレーナの後ろに乗っている。
マリア:「よくあれがそうだって分かったな?私にはどれも全部同じ建物にしか見えないが……」
エレーナ:「そりゃあ、知ってるぜ。昔、あれを爆破テロしようとしたんだからなぁ」
マリア:「あっ、聞いたことある……」
エレーナが前の肉体を使用していた時だった。
そしてその時はイリーナとポーリンが表立ってケンカしていた時でもある。
師匠同士がケンカしているのに、弟子同士が仲良くできるわけがない。
しかも当時のエレーナはまだ見習で、師匠ポーリンに心服していた時だったから、師匠の敵は自分の敵とばかりにマリアと入門が予定されていた稲生を攻撃対象としていた。
もちろん今は師匠同士が表向き和解したこともあり、ケンカする理由が無くなった上、エレーナも個人的には稲生のことが気に入っているから、今は仲良くしているが……。
まだケンカしていた頃、エレーナは稲生が御開扉に参加しているのを知って、奉安堂に爆弾テロをしようとしたことがある。
ところが、それは意外な者に阻止された。
妖狐の威吹である。
妖狐の妖術で完全に姿と気配を消した威吹に、妖刀で背後から体を串刺しにされた。
変わり身の魔法で何とか命が無くなる前に逃げおおせることができたが、前の体は使い物にならなくなってしまった。
威吹は別に護法のつもりでエレーナを攻撃したわけではない。
稲生とは盟約を結んだ仲であった為、エレーナがそれを攻撃しようとしていたのを知って阻止しただけだ。
結果的に奉安堂も本門戒壇の大御本尊も守られたというわけである。
エレーナ:「さーて、ここらでリベンジと行くかぁ!」
エレーナ、中折れ帽の中からTNT爆弾を取り出す。
マリア:「突き落とすぞ、コラ。てか、魔法使いが化学爆弾持って来るな!」
エレーナ:「フム。私が攻撃しようとすると、必ず邪魔が入る。やはりこの中にある物は、ただの物ではない」
マリア:「勇太が中にいるからだろうが!」
ピカッ!
エレーナ:「あ?」
マリア:「!?」
突然、上空から稲光が光った。
その直後、2人の魔女に大粒の雨が当たる。
エレーナ:「うわっ、ゲリラ過ぎる豪雨だぜ!」
マリア:「エレーナ!オマエのせいだぞ!」
ピカッ!
マリア:「早く着陸しろ!落雷するぞ!」
エレーナ:「ちょっと待て!今、着地点を探す!」
2人の魔女は、ほうほうの体(てい)で奉安堂を離脱した。
[同日14:10.天候:晴 大石寺奉安堂内部→境内売店]
執事:「支部総登山を始め、遠ごん各地より深信の当参、願い出により本門戒壇之大御本尊御開扉奉り、【中略】懇ろに申し上げました」
大導師を務めるべきの御法主上人が今回は出て来られず、代わりに執事職の僧侶が代役を務めた。
もちろん、大導師の代役が務まるのだから、相当な高僧であることに代わりは無い。
進行係の僧侶:「退場に先駆けまして、注意事項を申し上げます。……」
壇上の僧侶達が引き上げてから、信徒達の退場が始まる。
鈴木:「あれ?今日は御法主上人猊下とは違う人でしたね?」
稲生:「僕も初めてだ」
藤谷春人:「あー、それはたまにあることだ。猊下様が例えば法要なんかあったりすると、そちらが優先になるから、欠席されこともたまにある。その為、大石寺にはそういった場合の代役を務められる執事様がいらっしゃるんだ」
鈴木:「そうなんですか」
稲生:「猊下様の代役をお勤めになられるんですから、大僧正くらいの地位なんでしょうね」
春人:「御僧侶の階級までは俺は知らんが、もし日如上人様が御退座されるようなことがあった場合、次の猊下として登座される候補者の中にいるのは間違いない」
奉安堂の外に出る信徒達。
鈴木:「あれ?雨が降ったんだ?」
稲生:「そういえば、外から雷の音とか聞こえたような気がする……」
春人:「おい、見てみろ。それで空気が澄んだからなのか分からんが、富士山に向かって虹が掛かってるぜ」
稲生:「本当だ。写真に撮ろう」
鈴木:「スマホで虹、写りますかね?」
稲生:「大丈夫じゃないの?」
稲生と鈴木は富士山に向かって写真を撮った。
稲生:「あとはマリアさん達と合流するだけだ」
鈴木:「エレーナの話だと、大石寺まで飛んで来ると言ってましたが……」
稲生:「さすがは魔法使い。でも、どこにいるんだろう?」
鈴木:「売店のどこかにいるかもですね」
春人:「それじゃ稲生君と鈴木君、気をつけて帰ってくれよ?」
鈴木:「はい、班長。ありがとうございました」
藤谷は報恩坊へと向かった。
恐らく、修理工事の様子を見に行ったのだろう。
鈴木:「俺はエレーナに電話してみます」
稲生:「うん」
鈴木は自分のスマホを取り出すと、それでエレーナに掛けた。
鈴木:「あ、もしもし、エレーナか?御開扉終わった。今どこだ?……ああ、てことは“藤のや”さんだな。今行く」
電話を切った。
鈴木:「雨が降って来たので、喫茶店で休んでいるとのことです」
稲生:「なるほど。それで“藤のや”さんか。あー、そうか。マリアさん達は雨に当たっちゃったのか……」
鈴木:「キリスト教やイスラム教と違って、仏教は心が広いはずですが、さすがに悪魔信仰者は警戒されましたかね?」
稲生:「いや、別に悪魔を信仰しているわけじゃないよ。契約しているだけで」
その時、稲生は昔のエレーナの所業を思い出した。
そして……。
エレーナ:「おっ、稲生氏。御苦労様だぜ」
鈴木:「もしかして、また奉安堂にテロしようとしなかった?」
エレーナ:「さ、さあ。何のことかさっぱりだぜ」
マリア:「ウソつけ、この野郎」
鈴木:「うわ、また外曇ってきた!?」
マリア:「『ウソつき魔女はとっとと出てけ、この野郎』というブッダの警告だな。早いとこ帰ろう」
エレーナ:「じゃ、鈴木。代金よろしくだぜ」(^_-)
エレーナのウインクに……。
鈴木:「はい、喜んで〜」(´∀`*)
デレながら財布を出す鈴木だった。
マリア:「いいよ!私のは自分で出すから!」
嫌いな男の施しは頑として断るマリアだった。