
桜木 紫乃(著)
湿原を背に建つ北国のラブホテル。
訪れる客、経営者の家族・・・それぞれの人間模様。
ラブホテルが舞台だからと、妙な期待を持って読み始めるとぎゃふん!となります(笑)
読み進めるうちに、ぐっと胸迫るものがあります。
中盤辺りからどんどんよくなる。
どの人生も生活も平坦なものではなく、
他人から見れば、見過ごしてしまう日常であるけれど、
誰もが一生懸命で、そして、孤独で。
暗い小説ではありません。
だからと言って夢や希望に溢れる、そんなお話でもありません。
生きることに必要不可欠な「諦め」・・・全編にその空気は漂っています。
それを「暗さ」と言う人もいるでしょう。
しかし「諦念」は「暗さ」ではありません。
諦めることで見えてくるものや、わかることはたくさんあります。
言い替えるなら「明日への灯」かもしれません。
この感覚は私くらいの年代になって、多くを振り返りながら得られるものかもしれませんね。
七つの短編の連作になります。
私が好きだったのは「えっち屋」「星を見ていた」
大きな賞を受賞した、と言う前評判はともかくとして、
一つの小説として読んだほうが随分と楽しめそうです。
いつもだけど、いい小説に出会えるなぁ♪