森 絵都 (著)
6つの短編集。
器を探して
仕事と恋愛の板挟みに立ち向かうOLの話。
仕事の大変さ、上司とのやり取り、恋人との温度差。
これを上手くクリアーするために、日夜女は頑張るのです
犬の散歩
行き場所をなくした捨て犬達を保護する為に奮闘努力する主婦の話。
今、地球上では食べるものさえない人間が五万といるのに、
捨て犬の里親探しなんてもってのほかだ、と怒る男性。
この男性の発言が、この作品の隠し味にもなっています。
ボランティアって何だろう。
守護神
大学の提出レポートの代筆を依頼しながらも、
自分の自立の道を探す社会人学生の話。
二宮金次郎の勤勉、真面目、努力・・・
忘れていた日本人の美徳を思い出させます。
どこの小学校にもありましたよね。
薪を背負い、本を読む金次郎の像
鐘の音
仏像に魅せられた仏像修復士の理想と現実との葛藤の話。
仏像は好きですが、そんなに詳しくありません。
でも、翌日図書館で見かけた「日本の仏像」の写真集を、
思わず私の手に取らせた作者は素晴らしい
ジェネレーションX
中年男性と若手社員がそれぞれの世代格差に気付きながらも歩み寄ろうとする話。
爽やかな話でした
一瞬「あれれ
これは石田衣良さんだっけ」
と、思わせるほどの軽さと男っぽさと清々しさです。
男って、いいよなぁ~
風に舞いあがるビニールシート
国連難民高等弁務官事務所に勤める主人公と、そこで出会った夫との話。
打って変わって、重たい重たい作品でした。
難民問題、これまた詳しいことは知りません。
私の知識など上澄み程度でしょう。
同じ地球で暮らしながら、平和ボケしながら生きている私たちと、
どうして彼らの人生はこうも違うのでしょうね。
全部の作品に共通して言えることは、
「諦めないこと
」です。
自分が大切に思っている何かのために、懸命に生きています。
揺るぎない信念の下で生きるということが、どんなに素晴らしいかを私たちに伝えてくれる作品たちです。
作者の力強い文体と言葉が印象的です。
かなり抽象的な要約ですみません
これまで書評に揚げた短編集は「短編集です」としか書かなかったけれど、
そして、これまで読んだ短編集もそれぞれ素晴らしかったけれど、
今回はひとつひとつが私の心に沁みましたので。