Cape Fear、in JAPAN

ひとの襟首つかんで「読め!」という、映画偏愛家のサイト。

『Cape Fear』…恐怖の岬、の意。

シネマしりとり「薀蓄篇」(119)

2015-05-11 05:49:45 | コラム
くりやまちあ「き」→「き」ちがいぴえろ(気狂いピエロ)

いまも昔も「きちがい」は差別語とされ、放送や表現の世界では「使ってはいけない」ことば、とされている。

どのくらい昔からなのか―というと、
たとえば黒澤の『天国と地獄』(63)では、「あんなキチガイ、素手では手に負えませんよ」という台詞が登場、
本日の主役、『気狂いピエロ』(65)の日本公開は67年のことで、この邦題のままロードショーされたということは、少なくとも60年代は大丈夫だった。

70年代後半に「なにかが」起こり、「なんとなく」始まったのが、いわゆる自主規制、もっといえば「ことば狩り」なのだった。

実際、『気狂いピエロ』はビデオ化の際にタイトルそのものが問題視され、発売延期の憂き目に遭っている。
その余波? であろうか、この映画を「きぐるいぴえろ」と発する識者も少なくないのであった。


自主規制/ことば狩りが最もひどかったのは、80年代後半~90年代。
作家・筒井康隆が断筆宣言をし、漫画家・小林よしのりが現場の苦悩を暴露して脚光を浴びた。
(ひとの手を描く場合、角度的に4本の指しか見えないから4本しか描かなかったのに、ただそれだけのことで担当者からNGが出たそうである)

それと比べれば「やや」ソフトにはなったものの、現在でも「きちがい」は禁止用語の筆頭に挙げられている。

日常会話では、多くのひとが使用しているにも関わらず!
自分より20も若いAくんも、5つ下のB子も「ごく自然に」使っているのに!!

毎週欠かさず聞いているラジオ番組、『有吉弘行のSUNDAY NIGHT DREAMER』。

あれだけ「ちんぽ」とか「アナル」とか連発しているから「なんでもオッケー」だと思っていたのだが、ある日の放送で有吉ちゃんが「きちがい」と発してしまい、その直後に「あっ、いっちゃった。こんなの、久し振りだよ」と呟く。

CM後、アシスタントを務めるデンジャラスの安田さんが「―先ほど、不適切な表現がありましたことをお詫びします」とコメント、
放送全体がふざけているこの番組でもダメなのか・・・とショックを受けたことがある。

「きちがい」という台詞のある映画をテレビ放送する際は「不適切な表現がありますが、作者の意図を尊重し、オリジナルのまま放送します」と、わざわざテロップが入る。

自分のような三流ライターだって同じ。
町の書店に置かれないタイプの鬼畜系成人誌において、ヒトコト「きちがい」を入れただけで、担当者から「それはダメ!」とNGを告げられる。

でも、いまのところブログは大丈夫。
自分は意識的にカタカナのほうの「キチガイ」を自称しているのだが、始めた当初は「お叱り」のコメントやメールをけっこうもらった。
それにいちいち反論していたものだから、そのうちアンポンタンなコメントはなくなった。

継続、やっぱり継続だよねぇ笑

その是非について論じていくと「超」長文になるのでやめておくが、その負の側面も含めて、ことばってひとの歴史だよ―というのが持論です。


・・・って、ここまで映画『気狂いピエロ』について語ってないし!!

でもまぁこれは「薀蓄篇」、自分の経験についてアレヤコレヤ綴ったわけだから、形にはなったかな。

自分が解説するまでもないほどに有名な作品であるし、
映画ファンを数年続けていれば辿り着くであろう傑作であるし、
世界でも屈指のキチガイ監督による、壮大なキチガイ映画―でも意外と分かり易いよ、、、とだけいっておきましょうか。

この手の映画は解説なしで観て、好きは大好き、嫌いは大嫌いという感想でいいような気がするしね。






次回のしりとりは・・・
きちがいぴえ「ろ」→「ろ」しあんるーれっと。

…………………………………………

本館『「はったり」で、いこうぜ!!』

…………………………………………

明日のコラムは・・・

『シネマしりとり「薀蓄篇」(120)』

コメント (3)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする