fromイーハトーヴ ーー児童文学(筆名おおぎやなぎちか)&俳句(俳号北柳あぶみ)

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「コンビニ人間」(文藝春秋)村田沙耶香

2016年08月19日 | 日記
               

 おもしろかった!
この芥川賞発表の雑誌を買ったことなどないのです。(借りて読むばかり)でも、今回、何か予感がしました。読みたい! と読む前から思わせるものがあった。
 コンビニで買いました。(笑) 単行本も出たようですね。売れるだろうなあ。

 これほど、日本のどこにでも存在するコンビニという場所。日本中どこでも同じ商品が並び、店員がマニュアル通りの接客をする、そこを「聖域」と言う作者だからこそ、書けた作品なのだと思います。コンビニがこれまでと違って見える。これは、すごいこと。
 主人公を丸ごと受け入れたくなる物語でした。
 水も食べ物も、すべてコンビニの商品という主人公は、自分の体はコンビニでできているとも感じています。なるほど。時に、自分はコンビニの一部というような表現も。なるほど。
 幼い頃から普通ではなかった彼女を、周りはなんとか治そうとしますが、そんな周囲の人間を嫌悪することもせず、なんとか普通に見えるように努力するというのも、新しい。そんな普通ではない自分を卑下するわけでも、逆にプライドを持ちすぎるわけでもなく、まっすぐなところ、好感が持てる(っていうと、ちょっと違うかな)
 白羽という、どうしようもない男に対しても、まっすぐ接して、自分の部屋に住まわせる。以前、別の小説でそういう流れのものに、「ないでしょ」と嫌悪感を持ったことがありますが、この小説では、彼女ならありかなと思わせる。その男の義妹が放つ台詞も、彼女に対してひどいんだけど、なにか、まっとうなことを言っている勇気を感じてしまう。
 いやいや、ホントにおもしろかった。映画化されそう。

指紋がないように磨かれたガラスの外では、忙しく歩く人たちの姿が見える。一日の始まり。世界が目を覚まし、世の中の歯車が回転し始める時間。その歯車の一つになって廻り続けている自分。私は世界の部品になって、この「朝」という時間の中で回転し続けている。

 ここがすごーくいいということではなく、なにげに開いた頁に、こういうぐっとくる文章がある。部品というのがキーワードだと思うのですけどね。
 
 自分は何かを修正しなければならないと思った子ども時代。でも両親は懸命に彼女を大切に愛し育てたということを、受け止めている。妹もまた。余計なことを口にしないことで、なんとか成長したと考える。

 主人公の名前は、「恵子」。作者が沙耶香というアイドルのような名前なのに対して、昭和初期かという名前をつけている。また、彼女がコンビニを辞めることいなる原因を作るどうしようもない男の名前は、「白羽」。白い羽……天使か? いや、意味を持たせているわけではないかもしれないが、でも、ネーミングには何か無意識な作用が働くもの。友人には、漢字をつけず、「ミホ」「ユカリ」「マミコ」だ。

 若い感覚の小説だけれど、私くらいの年代でも充分共感できるし、これはコンビニというものが、年代を選ばないのと同じかもしれない。いやー、この数年の中で、かなりの上位に位置するものを読みました。
 
 ほかにもすでに話題作を発表しているようで、期待大です。こういうのを読むと、私は決してこっちの世界には足を踏みいれず、違う分野で頑張ろうと思える。(笑)
 
 我々が日常、普通に接しているものに、別な光を当てることができたら、文学として大成功です。

 とりとめのない感想で、すみません。(書評と違って、これはホントに感想なので)