fromイーハトーヴ ーー児童文学(筆名おおぎやなぎちか)&俳句(俳号北柳あぶみ)

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『汗の果実』松本てふこ(邑書林)

2019年11月28日 | 俳句


 タイトルの俳句は、

 ボクサーは汗の果実と思ふなり   てふこ     

 松本てふこさんは、若手俳人として活躍中の方。

文章を書く人について、よく「その人の文体」という言い方をしますが、てふこさんにもてふこさん独特の俳句の体があるように思います。俳体とでも名づけましょうか。

 ほぼ、有季定型でありながら、古くささがかけらもない。時に定型を崩しているけれど、そこにはリズムが存在する。

  触れ合ひしところからもの黴びにけり

  包帯を洗ふ八月十五日


  夏風邪のひとの物欲しさうな目よ てふこ   

  肉感的。
  風邪ひいている人を見てこんな句が作る。熱くて冷静な目を持っていなくては、できません。
 
  このような目で見ている世界は、私が見ている世界とは、ちょっとずれているのではという気もします。そして、その世界をこの句集は見せてくれます。

  観光パンフのような絵はがきのような、AIだって作れそうな俳句があふれている世の中で、このような句集に出会えて、嬉しい。
  この世界をつきつめていった先には、どんな俳句が生まれるのか。松本てふこから目が離せません。