タイトルの俳句は、
ボクサーは汗の果実と思ふなり てふこ
松本てふこさんは、若手俳人として活躍中の方。
文章を書く人について、よく「その人の文体」という言い方をしますが、てふこさんにもてふこさん独特の俳句の体があるように思います。俳体とでも名づけましょうか。
ほぼ、有季定型でありながら、古くささがかけらもない。時に定型を崩しているけれど、そこにはリズムが存在する。
触れ合ひしところからもの黴びにけり
包帯を洗ふ八月十五日
夏風邪のひとの物欲しさうな目よ てふこ
肉感的。
風邪ひいている人を見てこんな句が作る。熱くて冷静な目を持っていなくては、できません。
このような目で見ている世界は、私が見ている世界とは、ちょっとずれているのではという気もします。そして、その世界をこの句集は見せてくれます。
観光パンフのような絵はがきのような、AIだって作れそうな俳句があふれている世の中で、このような句集に出会えて、嬉しい。
この世界をつきつめていった先には、どんな俳句が生まれるのか。松本てふこから目が離せません。