8月9日の秋田さきがけ
新聞ウエブ記事です。(一部)
目の前でダンサーが踊り始める。観客はただ一人。見る側と見られる側の間に緊張感が走る。まるで、真剣勝負のような時間が流れていく。
6月14日。秋田市大町のココラボラトリー(通称ココラボ)で小さな公演があった。タイトルは〈ダンス、おひとついかがですか?〉。踊り手は秋田市のダンサー、加賀谷葵さん(29)。
実はこの公演、コロナ禍が生んだ一つの試みだった。
ココラボ代表の後藤仁さんが語る。「決まった開演時間に、集まった人の前で踊るのが通常のダンス公演だと思う。でも今回は違った。お客さんは好きな時間に来て、ダンサーはその人に向けてマンツーマンで踊る。一人のためのダンス公演だったんです」
このダンサーは、私の友人の娘さん。昨年までイスラエルにダンス留学をしていた方です。
この試みを聞いたときも、すごいなあと思いました。今観客席の間を開けての公演、ウエブでの観覧などが行われていますが。このように、1対1でというのは、他に聞いていません。近くだったら、絶対に行きたかったと思います。当然、一人の方のために踊る時間は、短いでしょう。ダンサーにしてみれば、大勢の観客の前で一度に踊るより、ずっと大変かもしれません。
何が素晴らしいって、人と同じことをするのではなく、自分の頭で考えてやっていること。
私の場合、みちのく童話賞を立ち上げたとき、まさか2020年がこんな年になるとは思ってもいませんでした。でも今、本当にやってよかったと思っています。大勢が集まらなくてもできること。これからは、そこを模索する時代なのかもしれません。