『朔と新』で、野間児童文芸賞を受賞された、いとうみくさん、受賞後第一作です!
冒頭、父と二人暮らしだった雨音が、一人になるところから、物語は始まります。父が不慮の交通事故死をしてしまったからです。雨音を引き取る親戚はいません(伯母はとてもいい人なのですが、それができる状況ではありませんでした)。
雨音は、一人で暮らしたいと言います。しかし、伯母は中学生の雨音にひとり暮らしなどさせられないと譲りません。そこにかかってきた一本の電話。
「おこまりでしたら、いっしょに住みますか?」
幼い雨音を置いて家を出た、母でした。
国吉さんというその女性と、不思議な同居生活が始まります。国吉さんは、電話での第一声から察せられるように、変わった人です。
この二人のやりとりが、おもしろくて、少し悲しく、絶妙です。
ストーリーも魅力的ですが、私はいとうみくさんの描写力に、引きこまれました。小説って、こういうもの。学ばなくては! という気持ちにもなりました。
また、中で、一番「うんうん」と思ったのは、雨音が元担任の先生に、「お母さんに遠慮しているのか」ときかれたときに、考えたこと。遠慮なんて、パパにだってしていた。
そうなんです。親子だったら遠慮がない、なんて、そんなことはないんです。人と人が一緒にいれば、お互いのことを思いやっていれば、そこに遠慮が生まれることがあるんです。これを言ったら、悲しいんじゃないかな、いやなんじゃないかな。そう考えるのが普通(そうじゃない人もいるけどね)。
そして、ラストのほうで、雨音は、国吉さんのことを友人に悪く言うシーンもあるのですが、ここでは、「身内だから、甘えている」と言われるのです。身内だから、好きだから、悪口を言える。
そんな微妙な心情が、あちこちでうまく書かれています。
あれ、内容いろいろ書きすぎたかな。大丈夫です。この小説の良さは、読んでこそですから。
いとうみくさんの作品、いつかドラマか映画になると思います。これ、予言ね(笑)。
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