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宮城県角田市在住作家、どじょうさんこと堀米薫さんの新刊です。
これまでも何度もご紹介していますが、どじょうさんは現役酪農農家です。ご出身は福島。
「家の光」という農協で出している雑誌があるのですが、どじょうさんがそこに載っていた一編の詩を読んだことから、この作品は生まれました。
福島県飯舘村の農家のおかあさん、渡邊とみ子さんが書かれた詩です。
福島県飯舘村。この数年、何度もテレビや新聞で見聞きした町の名前です。そうです。あの東日本大震災のとき、津波の被害には遭わなかったものの、原発事故のため、避難を余儀なくされている人たちの町。とみこさんも、それまで培ってきた農業、そして結いという人との繋がりを一旦断ち切って、避難をします。でも・・・。
とみ子さんは福島県の南部で生まれ育ち、飯舘村へ嫁ぎました。同じ福島でも、そこは言葉も習慣も違う土地。でもとみ子さんは飯舘村で「結」と呼ばれる「きずな」の中で自分を育んで、その土地の人間になって行きます。新種のかぼちゃやじゃがいもの品種改良をしている先生との協力でおいしい作物を作る仕事にも取り組みます。それが実を結んだ頃に襲ってきたのが、東日本大震災だったのです。
その後のとみ子さんのがんばり、「あきらめないの」という気持ちに行き着くまでの姿。ぜひこの本を読んでいただきたいと思います。
本に出てくるおいしそうな食べ物たちが、とみ子さんの生きる力になっている。いいえ、食べ物というのは人に生きる力を与えてくれるものなのだという事も改めて感じることができました。
堀米さん、どうぞこれからも東北の姿を伝え続けてください。