高学年以上
日本児童文学者協会長編新人賞受賞作です。森埜こみちさんは、ちゅうでん児童文学賞を受賞して『わたしの空と五・七・五』でデビュー、児童文芸新人賞をご受賞されています。そしてこれが第2作。
さすがのクオリティです。
ある朝、突然耳鳴りが始まり、片耳が突発性難聴になった主人公結。自然に治るのを待っていたけれど治らず、病院に行ったのは一ヶ月後。治療をしても治らず、結の苦悩の日々が続きます。
友人達の会話が結に聞こえない部分が、本の中でも文字がぼやけて、わかりません。ああ、これ、辛いだろうなと思います。
人には五感があり、普段はそれを当たり前に暮らしているけれど、一度どれかが欠けると、どれだけ辛いか。日常に支障がでるか。森埜さんは、それを五感を使って描写しています。それが、とても文学性の高い作品にしていると思いました。
またしっかりリアリティを持って描くところと、必要のないところは描かないというバランスがとてもよいと思いました。案外描きすぎて読みてには煩わしいということがあるものです。これ、俳句をやってらっしゃることが活きているのかも、なんて思ったり。自分も俳句をやっているけど、これできてるかな? 必要だと思っていろいろ書きすぎていないかなと反省しました。
作家としてデビューした方の2作目は、とても大事なものだと思います。森埜さん、その大きな第2歩をしっかりと踏み出されたなあ。今後に目が離せません。
とにかく、『蝶のはばたき、その先へ』、すばらしい本です。皆様、ぜひお読みください。
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