うめと愉快な仲間達

うめから始まった、我が家の猫模様。
犬好きな私は、チワワの夢を見ながら、
今日も癖が強めの猫達に振り回される。

煙は掴めない

2023年09月25日 | チャー坊のこと

お彼岸になると、

彼岸花はちゃんと咲くんだから偉いもんだ。

 

おはようございます。

意地悪な防草シートの合間からだって、

いつの間にか咲いている。

 

チャー坊と別れて、2か月が過ぎた。

心に着いた焼き跡は、今だ燻り続け、煙が立ち込めているのに、

たった2か月前の感触が、煙のようにぼんやり消えていく。

私は、その煙を必死に探そうとして、空を見上げている。

あの苦しくて愛おしかったいチャー坊との日々を留めておきたくて、

今だに青空に乞うように泣く。

私は、せめて泣いていたいのだ。

もう逢えないのなら、せめて泣いていたい。

そんな気持ちになるのは、初めてかもしれない。

 

「チャー坊、またね。」

この約束を、君は一度も破らなかった。

一度くらい破ってくれたら、私は君を諦められるだろうに。

罪な男なのよ、君は。


そろそろ、終わり

2023年08月18日 | チャー坊のこと

「終わっちゃった。」

そう呟いたら、ひとりでに涙が零れ落ちた。

 

おはようございます。

それは大型連休のことじゃない。

もちろん来週の月曜日も、

「連休終わっちゃった。」と呟いてさめざめと泣くに違いないのだけれど。

泣こうが足掻こうが、何事も終わりはやって来る。

しみったれた記事を書くのも、そろそろ終わらせなければならない。

ただ、あくまで記録として書き残したいことがある。

昨日で、全て終わったということだ。

 

5月から借りていたアパートの一室を、管理会社へ返した。

手続きの書類に『退室する理由』という項目があり、

私がどう書こうか悩んでいた時、

部屋の状態をあちこち調べていた管理会社の社員が、

「ほとんど、使っておられなかったようですね。」

と声を掛けてきた。

私は書類から目を離して、

「本当は保護した猫と暮らすつもりでしたが、

その猫をここへ移す前に死んでしまったんです。」

と説明をした。

 

チャー坊との二人きりの暮らしは、夢のままで終わった。

私は、それでよかったと思っている。

チャー坊はどう思っていたか分からないけれど、

頑固ジジィの観察眼に見守られ、

どういう訳か、気の合うボケたババァとの暮らしは、

私からみれば、馴染んでいるように見えた。

チャー坊でなければ、ああはならなかったと思う。

 

頑固ジジィは結局、最後までチャー坊を触らなかったし、

チャー坊も触らせようとはしなかった。

ジジィは、

「俺はいつか、そうだなぁ・・・。

2年後には俺にべったりな、もうなんなら布団で一緒に寝るくらいの

関係にしてみせる!」

と野望を抱いていたが、チャー坊は、

「僕とジジィは、ライバルだから!」

と言いたげだった。

そのくせ、チャー坊は腹が空く時に限って、ジジィにご飯をねだるという、

かなりチャッカリした行動に出ていた。

いつも小皿に何某かを盛って差し出してくれるババァにではなく、

本当に何か食べたい時は、かならずジジィに向かう。

 

ババァは、自分が食べて美味いと思った時、チャー坊に、

「お前も食うか?」

と自分の食べ物を小皿に盛って差し出していたが、

豆菓子や煎餅、ホウレン草のお浸しは、チャー坊の好みでは無かったらしい。

それでもチャー坊は、ババァから差し出される小皿には口を付けないまま、

「うん、ババァありがとう。」

と言わんばかりに、ババァに自身の体を触らせてやっていた。

そんな時、ジジィは決まって、見ないふりをしていた。

背中を向け、ババァへの対抗心と野望をメラメラと燃やしていたのだろう。

 

クーラーの利いた涼しい部屋であっても、

チャー坊が

「外を見たい。」

と言えば、頑固なジジィでも、ボケたババァでも、

クーラーを掛けたまま、迷わず窓を開けてやっていた。

ババァは時々、網戸も開けてしまっていたが、

チャー坊は決して、外へ出ようとはしなかった。

そのくせ、よく玄関前に陣取っていた。

それを聞いた私は、

「外へ出ないように気を付けて欲しい。」

とジジィにお願いしたが、ジジィは大丈夫だと笑った。

「こいつは、お前を待っとるんだ。

とにかく、こいつはお前のことばっかり考えとる。

そりゃもう憎らしいくらい、お前のことばっかりだ。」

ジジィは、私に対しては負けを認めていたようだった。

野望は消えなかっただろうけれど。

 

だから、アパートを使わなかったのは、良かったと思える。

時々、様子を見に行っていただけの一室だから、

何の思い入れもなかった。

ただただ、家賃がドブに流れていくだけだったはずなのに、

それがようやく終わった途端、

「終わっちゃった。」

と呟いたら、どうしようもなく淋しくなった。

 

とっくに逝ってしまっているのに、

その時ようやく、チャー坊はもう居ないという事実に直面した気がした。

どれだけ泣いても、チャー坊に会えば、それが救いだった。

どれだけ病に苦しむチャー坊であっても、生きてさえいれば救われた。

けれど今、どれだけ泣いても、もう救いはない。

終わっちゃったんだ。

自分の涙は、いつか、自分で終わらせなければならない。

 

ただ、私は知っている。

泣けば泣くほど、どれほどの幸せを味わったかを思い知らされる。

この涙は、悲劇じゃない。

幸福の証なのだということを、私は知っている。

 

どうしようもなく愛しいと思えた時、

人間は涙を流す生き物なのだ。


永遠の恋?

2023年08月16日 | チャー坊のこと

髪をバッサリ切った。

 

おはようございます。

「短く切っちゃってください。」

そう伝えると美容師は、

「いいの?ショートカットにするって感じですか?」

と心配そうに言ったから、私は照れ笑いしながら、

「失恋しちゃったんですよぉ。失恋。だからバッサリ行っちゃってください。」

と言った。

それを聞いた美容師は、腑に落ちた風に、

「だったら、勢いよく行っちゃいますよ!」

と微笑んだ。

私は、恋する相手を失った。

けれど、それがオス猫だなんて、とても言えなかった。

 

チャー坊が逝った月曜日から、4回目の月曜日。

以前から予約していた美容院へ出かけた。

髪を短く切るつもりは無かった。

予約時間より早く到着してしまい、しばらく車内で待っていると、

服に、茶色の汚れがへばり付いていた。

指でつまんでみると、それは汚れではなく埃だった。

「まさか。あれから3週間も経っているのに・・・」

親指と人差し指の感触で、埃の正体を探る。

慎重に探る。

「これは、チャー坊だ。」

衣服にへばり付いていた埃は、チャー坊の抜け毛だった。

私は、それをティッシュに包んでバッグに入れた。

その時流れてきた曲の歌詞に、私は吹っ切れた気持ちになって、

「よし!」

と、勢いよく車を飛び出した。

 

『 帰り道 アスファルト 立ち尽くす男 「私は私だ」と言いたいのは俺
  ハードボイルドな猫 ここじゃないどこかへ旅に出たのでしょう
  どうか どうか元気で
  永遠について考えるのはいつも 永遠に続かないものに気づく時だけ
  偉いはずの神様も王様も姿を変えていくなら
  運命も奇跡もいつだってこの手の中
  Be-Bop-A-Lura 永遠ってなんだ そりゃ言葉でしかないんだろうね
  Be-Bop-A-Lura 愛しいものがある時は ただそれだけでいいから
  Be-Bop-A-Lura 一瞬でいいんだ 一瞬のために生きてゆける
  Be-Bop-A-Lura 儚い幻の永遠よ
  お前の指図は受けない 馬鹿でいいもんね ルララララ

  もういない君に教わった 大袈裟かな 二度と会えないのだろうか 永遠に
  いや きっといつかどこかで 今はバイバイ

               引用: The cat is Hrd-boiled    by-aflood of circle 』

 

私の恋は、まだ続く。


真夏のタンポポ

2023年08月09日 | チャー坊のこと

チャー坊が逝って7日が過ぎた翌朝、

実家の前にタンポポが1輪だけ咲いた。

 

おはようございます。

本当に、1輪だけ、1日だけ咲いた。

出会った頃は2月の寒い時期だった。

冷たい風が吹く中、鮮やかな黄色のタンポポを一緒に眺めた。

「チャー坊、タンポポが咲いたね。

君はタンポポがよく似合う。そうだ、タンポポは君の花だ。」

チャー坊に、そう話して以来、タンポポはチャー坊の花になった。

だから私は思わず、真夏のタンポポに、

「チャー坊、おはよう!」

と、7日ぶりにチャー坊に朝の挨拶をした。

 

それからまた7日が過ぎた日、

どういう訳か、我が家の床に、小さなアリが集ったソーセージの欠片が落ちていた。

本当に、どういう訳が分からない。

我が家にはソーセージなんて無いし、マンションの2階だし。

一応アリが上ってきているのか確認してみたが、どこにもアリの道なんて見当たらない。

床に、忽然と数匹のアリとソーセージの欠片があるだけだった。

私はしばらくアリが集ったソーセージを眺めながら、

「チャー坊は、こういうのを食べて生きて来たのだろうな。」

と想像していた。

 

不思議なことは、それだけじゃない。

我が家に、見たこともない古いスポンジが落ちていたり、

実家へ行って玄関で脱いだサンダルの上に、

いつの間にか帰る頃には、輪ゴムが置いてあったり、

1日だけ咲いたタンポポが綿毛になっていた朝、

「この綿毛が飛んで行ったら、チャー坊も成仏しちゃうのかな。」

と淋しく思いながら跨いで実家へ入った1時間後、

実家を出た時には、綿毛の茎ごと無くなっていた。

 

怪異現象ですやん?!

 

でも私は、どれもこれも、笑っちゃった。

偶然でもなんでもいい。

「チャー坊だね、君がやったのね?」

そう思うだけで、笑っちゃうんだからそれでいい。

 

チャー坊が患った病の猛威の勢いは、はすさまじく早く、

対処も処置も全く追いつかなかった。

小さな傷一つ、まともに治してやれない中、

私がべそをかくと、チャー坊は決まってハッとした顔で私を見上げた。

それでも止められない涙が、ぼたぼたとチャー坊の顔に落ちると、

チャー坊は、その涙を浴びるようにジッとして動かなかった。

それがまるで、チャー坊も泣いているみたいに見えて、

私は、慌ててチャー坊の顔を拭きながら、

「チャー坊、人間ってね、どうしようもなく愛しい時、

こうやって涙を流す生き物なのよ。」

と言って、笑って見せた。

 

泣き腫らした顔で笑う私の顔は、さぞやブスだったろう。

怪奇現象に見舞られるより、ゾッとする顔だったろうに、

だけどチャー坊は、私が笑うとホッとしたような表情になった気がした。

君は優しいから。

だから今だに時々泣いてしまう私を、笑顔にしてやろうって魂胆なのだろう?

ねえ、チャー坊?

人間ってね、どうしようもなく愛しいと思った時も、

涙を流す面倒な生き物なんだよ。


決死の約束 (追記あり)

2023年07月28日 | チャー坊のこと

これは一体、なんだろう?

 

おはようございます。

クイズです。

この画像の中に、生物が写っています。

さて、どこに、どんな生物が、いるでしょうか?

 

もう一枚

うふふふ。

なんでしょう?

 

やけに目立つ男と出会って、約半年間。

私は、一日も欠かさず泣いている。

本当に、泣かないで済んだ日は一日もない。

 

男はある日、まるで私を「見つけた!」といった風に駆け寄ってきた。

けれど、片目しかない、その目は、傷だらけのビー玉みたいに曇っていた。

私は驚いた。

そして、なぜか嬉しかった。

だけど、切なかった。

気付けば、私の目から涙が落ちていた。

男は駆け寄ってきたくせに、名前も名乗らない。

仕方ないから、私は男に名前を付けた。

「チャー坊。」

ダサい響きだ。

ダサすぎて、それにも泣けた。

 

あの日から今日まで、いまだに毎日泣いている。

これは一体、なんだろう?

きっと私は、恋をしている。

これはきっと、恋だ。

 

私は、チャー坊のことを、もっと詳細に書き残したいと思っていた。

けれど、どうしても言葉が見つからなかった。

心の中は、たくさんの言葉で溢れているのに、一つも浮上しては来ない。

チャー坊を繋ぎとめておくに必死だった。

「チャー坊、またね。絶対よ。」

そんな一方的な約束を押し付けて、繋ぎとめようとしていた。

そのくせ、チャー坊の気持ちが酷く気になった。

どうせ、私じゃなくてもいいんだと自己肯定感を下げてみたり、

チャー坊は、私をどう思っているんだろうと聞いたところで、

チャー坊は無口で、滅多にニャーとも言わない。

それでも、約束通り会えれば自己肯定感まで上がった。

まるで、それは恋だ。

 

そして、チャー坊は私の独りよがりの約束を、最後の最後まで守った。

別れの日の朝、私は苦しそうなチャー坊に、

「チャー坊、またね。また来るからね。」

と声を掛けて、出勤した。

深い意味はなかった。

無意識に口癖みたいに言ったのに、

チャー坊は、それも守り抜いた。

出会ってからあの日まで、チャー坊は一度も約束を破らなかった。

 

だけど、私はまだ言えない。

チャー坊、ありがとうって言えない。

私の恋は、まだ終わっていない。

私は、粘り強いんだ。

粘着質な恋だ。

質の悪い恋だ。

もう、決死の約束なんてしなくていい。

それでも私は今でも、毎日縋るようにチャー坊の画像を見つめている。

チャー坊、私はいつまで、君に恋をし続けるのだろう?

 

ねえ、チャー坊?

 

君は、これで良かったの?