うめと愉快な仲間達

うめから始まった、我が家の猫模様。
犬好きな私は、チワワの夢を見ながら、
今日も癖が強めの猫達に振り回される。

誤解の先に、真実ひとつ

2017年01月14日 | 真面目な日記

ひときわ寒い、ある朝の事だった。

会社に向かうため、通り慣れた道を運転していると、

その道の脇に、うずくまる1匹の猫を見つけた。

私は少しだけ減速して、その猫の様子を伺いながら通り過ぎたが、

これは、生きているかもしれない。

そう思い、ハンドルを大きく切って、来た道を戻り、

邪魔にならない場所に車を停めた。

 

走り寄って、覗き込んでみると、

とても大きな体だったが、目立った傷は見当たらない。

しかし、顔の損傷が激しい。

 

一応、声を掛けてみるが、

ピクリとも動かない。

 

脇腹の辺りに触れてみるが、

命ある温もりと柔らかさを、感じない。

 

ダメだと分かり、

せめて、これ以上轢かれないように運ぼうと思ったが、

激しく損傷した顔を目の当たりにして、

私は、両手が素直に出せずに、立ち尽くしていた。

 

しばらくすると、

丁度、その道の真ん前にある一軒家の玄関のドアが開き、

独りの老婦人が、ゴミの入ったゴミ袋を重たそうに持って出てきた。

その老婦人は、私に気づいて、ハッと驚いた顔をしたので、

バツが悪く感じた私は、困ったような顔で軽く会釈をして見せた。

 

すると、老婦人は、持っていたゴミ袋を無造作に置き、

こちらへ足早に向かってくる。

私は、その思わぬ行動に、身を固くした。

 

老婦人は、猫を見て、独り言のように話し始める。

「あぁ、そうか、こいつか。

野良だからアレなんけど、でっかい図体だから・・・

間違いない、こいつだわ。」

 

可哀そうで、どうにかしてやりたいと思うんですが?と言ってみた。

すると、老婦人は厳しい表情で、

「あとは、私が片づけとくから、もういいです。

仕方ないんだから。

もういいですから、行って下さい。」

と言い、手振りを加えて、早く行くようにと、私を急かした。

 

私は、その言動に、少し違和感を覚えたが、

小走りで、停めてある車へと向かった。

その途中、

置き去りのゴミ袋を横目に見たら、

半透明のゴミ袋の中には、

見覚えのあるメーカーの猫用フードのパッケージが、たくさん詰まっていた。

もしやと思い、振り返ってみたら、

老婦人は、猫の亡骸を、大事そうに両手でゆっくり抱き上げていた。

 

それで、すべてが分かり、同時にゾッとした。

 老婦人が世話をしていた猫を、私が轢いたと誤解されているのでは?と。

 

これはいけないと思い、彼女の元へ引き返そうとすると、

猫を抱いた老婦人は、首を振りながら、何か言っている。

距離が少し離れていて、聞こえはしなかったが、

おそらく「もう、いいから。」と言ったのだろう。

その顔は、先ほど見せた顔とは全く違い、

とても優しくて、切なげで、

だから私は、何も言えず、その場で頭を下げ、車へと向かった。

 

とうとう誤解は解けなかったが、

そんな真実は、どうでもいいと思えた。

 

轢いた当人は、

走り去るより、車を停めた方がいい。

さらに可哀そうにと心を痛めていれば、

愛する人にとって、せめてもの幸いだろう。

そして、

愛された猫は、愛する人の手によって弔われた。

 

誤解が生んだ、このひと時が、

真実となればいい。

そう思えたのだった。

 

おたま「ほんとは、そっちがオラの場所なんだぞ」

 

おたま「退いてよ」

あや「やだ!」

 

おたま「ほんとは、オラのなのに」

 

よね「ちょっと待って」

 

よね「じゃ、私の場所は?」

そうねそうね、

おたまの居る場所こそが、

よねの場所なんだよね。