会社に出勤してみれば、
大きな声で泣き叫ぶ猫の声が聞こえた。
あれは、肌寒い秋の朝の事だった。
おはようございます。
拾ってみれば、やたら白くてフワフワで、
ちょっと戸惑うほどに、可愛らしい子猫だった。
実家の母さんに見せたら、
「ペルシャや、この子はペルシャネコや」と喜び、
父さんは、抱いたら最後、離せない状態だった。
とりあえず動物病院に連れて行くと、
院長は、「女の子だね。」と診断を下した。
またメス猫かと思って家に連れ帰ると、
玄関には、いつものように、うめが待っていた。
普段なら、ドアを開けたとたん、
私の顔も見ずに、真っ先に台所へ走って行くのだが、
猫を拾って帰る日は、どういう訳か、必ず、
うめは悟ったような顔で、玄関の前で静かに座っていた。
さあ、その子を見せてごらんなさい。
と言わんばかりの素振りのうめを見ると、
私は、毎回決まって、
「またお世話かけますが、お願いします。」
と言って、子猫をうめの前に差し出すのだ。
我が家のネコ達は、みんな、
まず、うめの歓迎を受けてから、
飼い猫としての暮らしが始まっていった。
ところが、その白い子猫の時だけは、少しだけ違った。
いつもなら、無条件に体を舐めてやる、うめが、
この時だけは、やたら子猫の尻を確認する。
いつまで経っても、尻の確認が終わらない。
ずっと、小さな尻を見たり嗅いだり。
やっと、顔を上げて私を見たうめの顔は、
「この子、男の子よ」
と、言わんばかりだった。
メス猫だらけの我が家に、やってきたオス猫、
それがおたまだった。
さて、どんなオス猫に育つのだろうかと思っていたら、
ご飯は、自力で食べないオスに育ち、
抱っこすると、だいたい
パカーンと開くオスに育ち、
お気に入りは、だいたい
自分の側に並べておくオスに育ち、
近付くメスは、だれかれ構わず
接吻するオスに育ち、
接吻されるメスは、
「私って、こんな顔で接吻するんだ」と恥ずかしくなり、
「私って、こんなタコみたいな口で?」と、
過去にまで遡って、赤面するのだった。
おたま「おらは、こんな顔でチューするぞ」
きく「ほんと、どーでもいいよね」
そうですね、
ほんと、どーでもいいですよね。