来た!
来た来た来た!!
ポンまま作うちの子カレンダー。
今年は、愉快な仲間達ではなく、
チャー坊とたれ蔵のカレンダーを作って頂いた。
1月は、チャー坊だぁ。
私がチャー坊と出会ったのは、寒い2月だった。
彼は、枯れた草の上で寝ていた。
「チャー坊!」
名前を呼ぶと駆け寄ってくる彼は、まるで飼い猫みたいだった。
そのくせ、被毛は酷く汚れ、体中傷だらけだ。
さぞや危険な状況に置かれてきただろうに、
彼はいつだって悠然としていた。
そんな野良猫に、私は毎日、
「ねえ、チャー坊?
どこへも行かないで、お願いよ。また、明日!」
と縋るように約束をするようになった。
そして、私はついに、彼の家を会社の車庫内に作った。
車庫の奥に捨てられていた段ボール箱だ。
「こんな箱に入ってくれるだろうか?」
私は気後れしたが、彼はスルッと入り、嬉しそうに私を見た。
それなのに、私が立ち去ろうとすると、彼は急いで箱から出てきた。
「寒いんだから、中に入っておいで。また明日来るから。」
毎日、私が立ち去る度、彼は私を途中まで追いかけた。
私がくるっと車庫へ戻ると、彼は踊りながら箱へ誘った。
私と彼は毎日、何度も踊りながら箱へ戻った。
チャー坊は淋しいという感情を持っていた。
猫には淋しいという感情が無いと聞くが、
「そんなの嘘だ。」
彼は、私と共に生きることを望んでいた。
それを痛感しながらも、私は彼を車に乗せて連れ去ることを躊躇っていた。
「チャー坊、家の中ってね、
貴方が大好きな陽だまりの草むらも、爪を研ぐお気に入りの木もないのよ。
香しい風も、果てしない青空も、自由に歩く道も無いんだよ。
飼い猫になるってことは、そういうことなのよ。」
2023年、3月19日、この日は日曜日だった。
チャー坊は、車庫にはいなかった。
私は嫌な予感がした。
数日前から、彼は食欲を失っていた。
まさかと思い、私は大きな声で叫んだ。
「チャー坊!どこ?チャー坊!!」
彼は、車庫から逆の方向からゆっくり歩いてきた。
けれどこの時は、
悠然とではなく、必死に足を引きずるように歩いてきた。
もうご飯など食べられる状態ではなかった。
それでも彼は、「また、明日」の約束を守った。
「チャー坊、明日まで待って。準備するから。
いいかい、チャー坊?貴方の生活がガラッと変わっちゃうからね。」
次の日、
彼の生活は、本当に一変した。
テレビにビビりながら、
それでもやっぱり、「チャー坊!」と呼べば、
彼は籠城するソファーの下から出てきて、踊っってくれた。
これがなんと、飼い猫初日のことだった。
私は、まだまだチャー坊に驚かされていく。