知らぬ間に、
5月になっていた。
なんと!!
チャー坊が実家猫になって、初めて踏ん張った時の写真だ。
おめでたい、記念すべき日に相応しい背景だなぁ。
ままん、ありがとうございます。
チャー坊がまだ、野良猫だった頃、
私はどうあっても、最後まで世話をすると決めた。
そう周囲に宣言をすれば、待ってましたと言うように続々と苦情が入る。
「駐車場で、猫の糞を踏んじまった。」
「最近、この辺が臭い。多分、うろうろしてる、あの茶色の猫の尿だ。」
「カラスが増えた。猫の残飯目当てだ。」
などだ。
そこで私は、チャー坊が居ついた車庫を、徹底的に掃除し、
ついでに模様替えもした。
見た目のレイアウトを替えてしまうことで、少しでも印象をよくしたかった。
糞尿被害については、コソコソ調査をしてみると、
糞も尿も、おそらくチャー坊の物じゃない。
チャー坊は酷い下痢だったし、
そもそも被害現場は、チャー坊が排泄すると決めた場所では無かった。
チャー坊の排泄場所は、しっかりと決められていたのだ。
ならばと思い、私はチャー坊の排泄場所に、
それはそれは、これ見よがしの人工猫トイレを設置した。
チャー坊のトイレはここですよ~。
ここで、やってますよ~。
と言い続けた。
これで苦情への対応はしやすくなった。
「猫のうんこ、また踏んじまった。」
と言う人とともに現場へ行き、
「ああ、これは犬だね。散歩中の大型犬のフンだ。」
と断言をしたし、
「俺のタイヤに猫がシッコ掛けてやがる。くっせー」
と言う人のタイヤの匂いを確認して、
「ああ、この匂いはね、ここら辺のボスの匂いだ。
キジトラのデッカイ、あいつのだ!」
と断言した。そして毎度、
「だって、チャー坊は猫トイレで済ませてるし。」
を忘れずに付け足した。
実は嘘だ。
清々しいほどの大噓だ。
糞は、本当にチャー坊の物じゃないだろうが、
大型犬のものかは定かじゃないし、
私が、猫のマーキング尿を嗅ぎ分けられる訳がない。
当のチャー坊は、このトイレで排泄したことは一度もなかった。
その横でしていた。
マーキングの有無は分からなかった。
チャー坊は去勢済みだったとはいえ、
外で生きてきた猫だ。
マーキングが治まったとは言い難いと考えていた。
それでも、嘘を言い続けながら、周辺の糞尿探索と掃除を続けた。
何の負担も感じなかった。
嘘を付くのも掃除して回るのも、
首を傾げたまま、私の後を歩いて付いてくるチャー坊との楽しい時間だった。
私達は、自由だった。
バカみたいな嘘も、人目をはばからず不審者みたいな見回りも、
チャー坊と居れば、それは『自由』に感じた。
2月はまだ風は冷たい。
タンポポの咲く陽だまりを探し当て、
枯れ草の上に、躊躇うことなく腰を下ろし、
チャー坊と並んでいると、
「チャー坊、あたしね、
今なら、なんにでもなれる気がするの。」
そんな気分になれたのだった。
それがどうだ。
実家へ保護した途端、
チャー坊は、見事に人工猫トイレにしゃがんだのだ。
そして彼は死ぬまで、一度も粗相しなかったし、
嘔吐さえ、猫トイレに駆け込んで吐いた。
これは、紛れもない事実だ。
断じて、嘘なんかじゃない。
私は、
「チャー坊、凄い、偉い、天才!」
と褒めたが、心の中に小さな切なさが芽生えたのを覚えている。
私達の自由が、終わっちゃう・・・
そんな気がした。
さて、そんな今、
チャー坊が居ついた弊社にやって来る、ママちゃんは、
昨夜・・・
会えたー!
来たーーー!!
餌の袋を揺すって音を立てたら、駆け寄ってきてくれた。
3メートル以内には来ないけれど。
いいのさ、いい。
これで少しは、
「美人のお姉さん」を認識できただろう?
ママちゃん「なに見てんの?へっぽこ不細工雌豚ゴリラめ!」
ああ~、なんか聞いた事あるお言葉~!