本当は、あたし、
おかっぱじゃないんです。
おはようございます。
ブログを始めた頃は、紛れもないおかっぱだった。
それが今じゃ、『レベル2』だ。
キッカケは、若い美容師だった。
伸びた髪を切りに美容院へ行くと、
指名しない主義の私のその日の担当は、新人美容師だった。
新人とは思えない厳つい格好の男の子だ。
(ああ、彼のファッションのお手本は、イグザイルなんだろうな。)
そう思って以来、私は彼を心の中で「チビザイル」と呼ぶことにした。
しかし、彼の眼は死んでいた。
そして、ぎこちない手つきで、私の髪をチョロッとだけ切った。
「これで、大丈夫でしょうか?」
チビザイルの言葉に、私はえぇぇっ?!と思った。
(どこ切った?ねえ、寝ぐせが治ってるだけじゃない?)
そう思った私は、声を潜めて
「私みたいな歳の女性の髪、切るの怖いですよね?」
とチビザイルに聞いてみた。
すると、チビザイルは私以上に声を潜めて、
「はい、怖いっす。」
と白状した。
本当は、伸びた髪をおかっぱにしたかった。
だけど私は、何かに誘われるように言ってしまったのだ。
「貴方のしたいと思える髪型に切っちゃってもらっていいですか?」
すると、チビザイルは目をまん丸にして、
「えっ?いいんすか?」
と言うから、私は、
「いっちゃって~。思いっきりいっちゃって~。」
と煽った。
こうして、私は思いもよらぬショートヘアへと変身したのだった。
あれから数か月、
「けっこう伸びたな。そろそろ、おかっぱに戻せる長さだ。」
私は、今度こそ、おかっぱへ戻すべく美容院へ向かった。
もちろん、今回も指名はしていないが、
美容院へ入ると、(居た、居た!)
チビザイルは、相変わらず厳つい格好だ。
だけど、なんだか元気なのだ。
なにより、楽しそう。
そして、担当するお客さんのチェックをしつつ流れるように、私を呼んだ。
「おかっぱ様、こちらどうぞ。」
今回の担当もチビザイルだ。
嬉し恥ずかしだ。
この美容院の客層は、30代後半~中年層だ。
他社より少し安価で、気軽なシステムだから、おじさん率も高い。
だから、お洒落命の若者などは、まず見ないなずだ。
ところが、案内された席に座ると、チビザイルは
「ちょっとお待ちいただけますか。ごめんなさい。」
と言うなり、小走りでどこかへ行っていしまう。
そして、高校生くらいの若い男性客を、私の右の席へ案内し、
次に、20代だろう、もう一人の男性客を、私の左の席へ案内している。
右側の高校生の席では、
「いや~思いっきり、いっちゃいましたねぇ。」
「はい、ちょっとはずいけど、こうしてみたかったんです。」
と盛り上がっていた。
その後は、ささっと左側の20代の席へ行き、
「今回も、かなりヤバイっすね。」
「髪が溶けるかってくらい、いっちゃったよね。」
と、さらに盛り上がっていた。
そして、ついにチビザイルは私の背後へ戻ってきた。
「けっこう伸びましたね?
今日は、どんな感じにしましょうか?」
そう話しかけるチビザイルの眼は、あの頃とは、まるで別人だった。
どうやら、チビザイルは、
この美容院で、自分でしか出ない仕事を引っ提げて、
新たな客層を開拓したようだ。
その彼の手は、ひどく荒れていた。
「えっとねぇ・・・。」
さぁ、おかっぱに戻したいから揃える程度でと言え!
私は自分自身に言い聞かせた。
そして、でもまた、言ってしまったのだ。
「お任せで、いっちゃってください!」
「じゃ、いっちゃいまーす!」
そんな訳で、私は人類の進化的に脳内を整理してみた。
『右側の高校生は、いっちゃったパーマデビュー』
彼は、これからどこまで、いっちゃうのだろうか?
楽しみです。
真ん中の席の私は、『いっちゃった第2段階』
今、ここな!
以前より更に短く切ってみたが、
チビザイル曰く
「白髪部分、めっちゃ白くて、いいっすよね。
ブリーチなしで、めっちゃきれいに色入るし」
だそうだ。
彼に白髪染めの概念はない。七色にしたいらしい。
レベル2は、これから色んな事を経験して、
これから飛躍するぞっという手前だろうか。
そして左側は真打ち、チビザイルの作品と言っていいだろう。
きっと、色んな事を経験して、人はこうなるのかもしれない。
『完全にいっちゃった人』
髪は、真っ白のアフロだ。
どうやら、5時間掛かったらしい。
チビザイル、頑張れ!と、
今後は出来れば遠くから見守って行きたいと
思うのであった…。