週末は、
母さんを家から連れ出す。
おはようございます。
認知症が進行するにつれ、
母さんは外へ出かける機会を失った。
1人で出かけさせる訳にはいかないし、
せっかちな父さんと一緒に買い物に出かけたって、
ゆっくり店内を見たい母さんは、つまらない思いをするだけだ。
言うまでもなく、ウォーキングや体操のような健康促進運動なんて、
呑んだくれの母さんには、理解できない。
それは認知症のせいじゃない。
アナーキーなかずこのエナジー維持は、昔っから酒と煙草なんだ。
「わし、もうあかんわ。
体中が、ガタガタで上手い事歩けんようになったで、
こりゃ、お迎えが来とるんに違いない。」
二日酔いの母さんは、そうボヤくが、
先週行った健康診断では、パーフェクトな健康体だ。
血管年齢なんて、67歳だ。
それはもはや、私の血管年齢より若い!
死なない。
かずこは、まだ全然死なない。
ならばと、私は週末、
母さんの足腰の運動とストレス発散になればと思い、
母さんを買い物に誘うようにしている。
昨日は、ユニクロへ行った。
母さん初めてのユニクロだ。
ヒョウ柄とラメと毛皮のコートが好きな母さんが、
ユニクロで楽しめるのか不安だった。
店までは、母さんの言うようにヨレヨレとしか歩けなかった。
が、しかし、
店に入った瞬間、母さんは私を追う抜いて、
すすすーっと縦横無尽に店内を見て回る。
楽しそうというより、真剣な眼差しだった。
私はしばらく、そんな母さんの後ろ姿を眺めていた。
「こんな気持ち、昔もあったな。どんな時だったっけ?」
思い出した。
うんこだ。
うんこを保護した当時、うんこは生後4~5日の赤ん坊だった。
そんな赤ん坊を育てるというのに、
私は仕事を抜け出すことなど出来ない環境にいた。
すなわち、うんこを10時間を超える放置状態で育てた。
今の私には考えられないことだ。
最悪な環境だ。
低血糖・低体温・脱水に陥ってもおかしくない環境の中、
それでも、うんこは凄かった。
急いで帰って、まず生存確認だった。
声だけ掛けて、
急いでミルクを作ると
飲みに飲みまくった。
息継ぎ無しで100メートルは泳げる勢いだ。
おかっぱ「この子、すごいね」
うめ「凄まじいわね」
そんな綱渡りみたいな日々を過ごし、
ある日、いつものように息を切らせて帰宅すると
勇ましい立ち姿で、私を待っていた。
うんこが、初めて自立した日だった。
その翌日には
うんこ、初めて歩いた!
プルプルさせながら、ゼンマイ仕掛けみたいにぎこちないが、
うんこは真剣な眼差しで歩く
歩く、歩く!
哺乳瓶まで一直線だ!
笑っちゃった。
私は、笑っちゃったけど泣いていた。
洋服をあれやこれやと見回る母さんの後ろ姿が、
あの時、うんこを眺めた日に、なぜかすごく似ていたんだ。
さて、我が家にも真剣なのがいた!
おたまのご飯を食べたい、あや。
ぶっ飛ばしてでも奪いたい、真剣なあや
おたま「凄まじいだ。おら、どうしたらいいんだ?」
私は急いで、あやにお代わりを出した・・・。
※生後間もない猫は、大変か弱い状態です。
哺乳の間隔を長時間空ける行為は、
子猫の生存確率を著しく下げてしまう、危険な行為です。
断じて、お薦めする行為ではないことを、ご理解ください。