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お着物Enjoy生活からバレエ・オペラ・宝塚etcの観劇日記に...

「ドナウの娘」②

2006-11-19 02:12:50 | BALLET
恋人役ルドルフは、後藤晴雄。
ブルノンヴィルスタイルの足技に凝った振りも伸びやかに踊り、恋人としての情感溢れる部分もそつなくきれいにこなしていました。

彼女は実は自分の恋人なのです、と打ち明けたことで反逆罪を男爵に問われ、切羽詰った恋人は投身自殺。。。錯乱状態に陥るルドルフ。男爵の制止を振り切り、フルール・デ・シャンの後を追うようにドナウ川に身を投げます。

今回、東京バレエ団はかなり若返り(?)を図り、新しい世代のソリストに重要な役を任せています。

わたくしが嬉しく思ったキャスティングは男爵役の中島周。

長身でこそありませんが、手の表情や足先の裁き方がきれいなエレガントな踊りが目を惹き、容貌にも甘さのあるチャーミングなダンサーです。今回は、フルール・デ・シャンが身を投げるとすぐに舞台の端から身を投げたバルコニーまで目にもとまらぬ素早さで駆け寄り、家臣に制されて戻るもその心に受けた衝撃を真摯に感じさせ、説得力のある演技でした。
この役、1stキャストでは大嶋正樹が踊っているのですが、彼も鍛えぬいた肉体と彫りの深い端正な風貌で、(彼もまた身長がないのが惜しまれますが)群舞の中でもひときわ目を惹くダンサーで、どう演じたか興味あるところです。(伝え聞くところによると粘着質な個性的な演技でとても良かったらしい・・・)


と、一幕は、まずフルール・デ・シャンの住む村での恋人2人の語らいのシーン。
続いて男爵の花嫁探しの舞踏会のシーン。これは丁度「ジゼル」の第一幕と「白鳥の湖」の1~2幕をMIXしたような印象。
続いての第2幕は川底に落ちたルドルフが水の精になったフルール・デ・シャンと再会するも、ドナウの女王に制され、白いヴェールを纏った多くの水の精たちの中から彼女を見分けられるか、という課題を出されます。
ふうわりと揺れるロマンティックチュチュの群舞とそれを仕切る女王、さしずめリラの精のように優しいミルタ、といったところでしょうか。
優しい役ながら、物語の方向付けをする役どころなので、群舞のダンサーとは一線を画する、並外れて美しい、とか包容力が感じられる、といったそのダンサーならではのオーラを要求される役なので、今回の田中結子さんは今後に期待、といったところでしょうか(^^;)
この役ばかりは、1stキャストのベテランにして強力な美女、井脇幸江さんで見たかったなと

水の精の動きは流れるようで、空気の精のシルフィードを彷彿とさせます。斯様にこのバレエ、一応新作と銘打ってはいますが、「ジゼル」+「白鳥の湖」→「ジゼル」+「ラ・シルフィード」といった感じで、どこかで見たあの・・・という印象が付きまといます。
まぁ、実は「ドナウの娘」に影響された後世の作品の方が有名になっている、というのが事実ゆえ、こちらの方がオリジナルだそうなのですが。
もちろんルドルフは彼女を正しく見つけ出し、愛の強さを確認した女王の祝福を得て頭上高く水面を目指して上っていく2人・・・というラスト。

恋の障害、敵役の強さなどにおいて、後世の他の作品に比べて全体的にソフトな感じ。
盛り上がりに欠ける・・・という見方もできますが、ロシアの名門メーカー、グリシュコに特注してラコットさん自らチェックを繰り返した衣装も美しく、全体に現代の作品には観られない幻想的でロマンティックな雰囲気を楽しむ演目なのでしょう。
舞踊史的には瞠目すべき偉業なのでしょうが、また再演を見たいかと問われればちょっと微妙なところです。