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お着物Enjoy生活からバレエ・オペラ・宝塚etcの観劇日記に...

「仮名手本忠臣蔵」②

2007-02-04 04:16:45 | きもの
最後11段目は「高家表門討ち入りの場」「奥庭泉水の場」
「炭部屋本懐の場」
ずらりの46士が迫力の表門、剣の名手2人が切り結ぶ泉水、そして発見して自害を促すも最後まで抵抗をする師直の首を討ち取るカタルシスまでを見せます。

雪のチラつく明け方、薄い夜着で右往左往する邸内の男女、女物の打掛を被って脱出を図る高位のものなどリアルな討ち入り場面。
最後、刀を掲げて全員で勝どきの声をあげる場面で、師直の首を片手で掲げた富岡助右衛門役の家橘が片手でどうしても刀を鞘から抜くことが出来なかったのはご愛嬌。



歌舞伎座は、1F席だったせいか、お着物姿の方が多く、訪問着に結髪真珠の簪、という方からシックな小紋にシンプルな紬、と百花繚乱。
わたくしは落ち着いたチェリーピンクにバーガンディで極細い万筋と雪輪柄の小紋にアイボリーと紺で薔薇が全通に染めてある名古屋帯。半衿は縮緬の水色、帯揚げはライトグレー、帯締めは紅梅色。
ぜんやさんのアザラシ鼻緒草履にシルバーの柔らかい革のバッグ、グレーのウールにファーの縁取りのマントを羽織ってのお出かけでした。
着物はともかく、帯が思いのほか短くてあせりましたが、お太鼓の折り返しを多く取れなかったので仮紐を残して帯下に入れ込む技(?)を用い、なんとか着ております



着物の柄はこんな感じです。
万筋が細かいのでモアレになってしまっていますね(^^;)
雪輪は縞と同じバーガンディの濃淡でデフォルメされた柄ですので目立ちにくく、飛び柄の水玉のようにも見えます。最初、色が派手かな?と思ったのですが、意外と馴染む色味で着易いです


3月歌舞伎座「仮名手本忠臣蔵」

2007-02-04 02:18:03 | 伝統芸能
すっかりバレエ頭になっていたわたくしに、会社の先輩が「2月の歌舞伎座にはいつ行かれるの?」
「?」「仁左衛門さんと玉三郎だから行くのでしょう?」「!」

なんと祇園一力茶屋でお軽の玉三郎、寺岡平右衛門が仁左衛門!
慌ててWEBで夜の部一等席をチェックしたところ、思いのほか良いお席をGET.
6列目中央花道寄りのお席で観て参りました。


建て替え前に、名作の通し狂言を豪華配役で!というコンセプトなのでしょうか。
3月は義経千本桜ですし。
夜の部は5段目6段目の勘平が定番、菊五郎。お才は時蔵。
7段目の祇園一力茶屋では、大星由良之助を吉右衛門、お軽が玉三郎で兄、寺岡平右衛門が仁左衛門、斧九太夫は芦燕。
折角の通しですので昼の部も、とちょっと思ったのですが、仁左玉フリークとしては欲張りすぎずに、しっかりと見たいところに集中しようという所存で。



6段目、勘平腹切の場。
10月に仁左衛門の勘平で見たときには、浅葱の礼服が似合う(お着替えを舞台の上でとてもスマートになさったのも印象的)「色にふけったばっかりに」という台詞から運命の流転をくいとめることの出来なかった悲劇の主人公、という強烈な印象だったこの勘平役。
菊五郎さんですと、ハッとことの次第を飲み込んで(誤解して)自らの不孝に動揺する場も、あまりおたおたせず、それはそれとして運命の残酷さを噛みしめている風情。動の仁左衛門、静の菊五郎でしょうか。
お着替えシーンもお軽の玉三郎がかいがいしくお手伝い。
玉三郎は、もと腰元のお行儀のよさを残す控えめな妻の拵えながらも、いいことがあったからもう祇園に働きに出さなくても良いのだよ、と言われて一瞬小躍りする場面、夫婦の別れで「お軽、待て」と言われて「あい」と駆け戻り勘平にすがる場面など、愛情の強さと女心の機微を強く打ち出すお軽でした。

7段目、祇園一力茶屋。目隠し鬼に興じる由良之助は吉右衛門。その相手をする仲居と太鼓もちの大群(20人以上!)が、次々とピンクと水色の斜め麻の葉模様の暖簾を掛け分けて登場する場面は圧巻。
塩冶家に仕えた3人の侍が、由良之助の真意をただしに登場するも、敵を欺くことに徹底する由良之助、なかなか腹を割りません。侍のひとり竹森喜多八役の中村松江は端正な容姿で目を惹きます。しびれを切らした竹森たちが気色ばむのを押しとどめるのが足軽寺岡平右衛門。
平民ながらも主君に忠義を尽くしたいと熱望する好漢で、洗練されてはいないが真っ直ぐな人柄、という役どころ。黒の嵩高い衣装と勢いのある髪型が必ずしも細身の仁左衛門に似合っているとは言えないが、この人の”荒川の佐吉”的、人の良さと下町的なキップの良い人情深さが沁み出して、彼ならではの平右衛門。

顔世御前からの密書を子息力弥から受け取り、密かに広げるも、隣の2階で風に吹かれて酔い覚ましのお軽が手鏡を使って盗み読み。縁の下ではスパイ斧九太夫が密かに上から垂れる文をチェック。
この場面は舞台ならではの面白さ。
落ちた簪の気配でお軽に気づいた由良之助。2階から梯子を使ってお軽を降ろし、じゃらつきながら文を読まれたと知ると身請けを持ちかけ席をはずす。
梯子を怖がる様の色っぽさ、身請けの後は3日で自由にしてやると言われ、恋しい勘平のもとに帰れると有頂天になり、「3日じゃぞえ」と何度も確かめる可愛さ。
6段目の女房姿とは打って変わって薄紫に紅葉の裾模様の着物の襟元の反し襟に覗く紅色が艶っぽく、前で結んだだらりの帯は水色に金糸で破れ麻の葉の刺繍、艶やかで廓の女らしくありながらも勘平一途の心根が垣間見えるお軽。

一人になっていそいそと家族への文を準備するところに、現れたのが平右衛門。久しぶりの兄妹の対面。きれいになって、と良く姿を見せておくれと言う兄に「こうかえ」としゃなりとポーズを決めて見せたり二人の掛け合いの面白さ。由良之助の真意に気づいた兄が妹を手にかけようとする場面、勘平の最後を聞かされてあまりの衝撃に癪を起こして狂乱の玉三郎と介抱する兄。状況を理解し、今度は自ら兄の手にかかって自害する覚悟を固める妹、と息のあった2人の急展開で息をもつかせぬ場面が続き見ごたえのあるシーン。

あわやというところで、事情を見ていた吉右衛門が制止。
お軽の手を取り、縁の下の斧九太夫の成敗に手を貸させ、兄にはかねてから願書を何度もつき返していた東下りの供を許し、忠義ながら悲劇に散った勘平ゆかりの2人に報いる。

密書を受け取って後、それを読むまでに、斧九太夫の誘いの酒宴で、仇討ちの意志を確かめるための一種の踏み絵として、判官の命日の逮夜にあたる日に由良之助が生臭ものの蛸をクチにさせられる場面があるのですが、ここで仲居や幇間が「見立て」遊びを披露。
人間海苔巻きで、「恵方巻き」の見立てが客席の喝采を浴びていました。節分ですものね