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お着物Enjoy生活からバレエ・オペラ・宝塚etcの観劇日記に...

イレール・アデュー公演@ParisOpera座

2007-02-18 22:47:46 | BALLET
2月14日、バレンタインデーのソワレ。
バレエ界に革命を起こした天才ルドルフ・ヌレエフの秘蔵っ子であり、現オペラ座のメートル・ド・バレエとしてもご活躍のParisオペラ座の名エトワール、ローラン・イレールをガル二エにてお見送りする日。
そうなのです。来てしまいました、Parisに。恐るべし、イレールの吸引力。



当日は朝から雨・・・。訪問着での観劇を考えていましたのでいささか不安もありましたが、夕方、ホテルからガルニエ宮に向かう7時頃には雨も上がり、流石イレ-ルの為に天も味方をしているのだわ、と一人ゴチながらイソイソと。

今回はLondon在住のバレエ友達Naoko様のお力でチケットを入手。オーケストラ席前から10列目の良いお席でしっかと我が殿の最後の公演を見届けて参りました!

バランシン、ブラウン、フォーサイスという3人のクラシックを基礎としつつモダンな作品を展開する振付家による作品のミックス・プログラム。
このうち、最初の演目、ジョージ・バランシンの「アポロ(Apollon Musagate)」、そして最後にこの夜の特別プログラムとして、マニュエル・ルグリとイレールの2人のために振付けられた、長く封印されていたのをモーリス・ベジャールがルグリとイレールならばと踊ることを許可した作品、「さすらう若者の歌(Le Chant du compagnon errant)」

そのイレール出演の2作品の間には、ルグリ、二コラ・ル・リッシュ、オレリー・デュポンという豪華エトワール3人組によるトリシャ・ブラウンの「O zrozony/O composite」と、アレッシオ・カルボネ、二コラス・ポール、エレオノーラ・アッバニャート、エミリー・コゼット、メラニー・ユレルによるウィリアム・フォーサイスの「精神の不安定なスリル(The VertiginousThrill of Exactitude)」。
そしてバランシンの「Agon」。

バランシンか~と、ちょっと意外に思っていた「アポロ」。
他のダンサーで観ていた印象では、美しく若い男性ダンサーがその太陽のようなアポロニックな魅力をふりまきながら3人の女神たちと戯れる・・・といった展開。ストラヴィンスキーの音楽に合わせてギリシャ風にドレープの施された白い衣装でシンプルな舞台ゆえ、ダンサー個人の魅力なくしては退屈にも思われる作品。
というわけで作品としてあまり印象深いものではなかったので、これをイレールの引退公演に選ぶの?という疑問があったのですが。

いや、裏切られました!ポジティブな方向で。

舞台に出たイレールの美しさたるや。黒髪、美しく弧を描いた眉のりりしさに加え、引き締まった体躯とその一つ一つのポージングのエレガントな美しさ・・・。
43才のはずなのですが、完全に年齢を超越しています。

彼の前に現れる3人の女神=エレガントでちょっとコケティッシュなアニエス・ルテステュのテレプシコーラ、子供のように無邪気なエレオノーラ・アッバニャートのポリニュミネ、お澄まししたおとなしめ美人のエミリー・コゼットのカリオペ。
彼女たちを眺め、リフトし、腕につかまらせて彼を中心に様々な絡みを見せながら、この3人の女神たちを統べるものとしての圧倒的な存在を見せるイレール。
勿論、長身のアニエスを幾度もリフトし続けるシークエンス、2人の女神をそれぞれ片腕に捕まらせた状態で回転する振りなどの直後にはオペラグラスで認められるほどの発汗はありましたが、その後のソロでは、嘘のように涼しげな様子で限界ギリギリのところまで大きな表現を見せ・・・。それなのに反す掌の表情は指先一本に至るまで、完璧なフォルム。
・・・ギリシア神話のアポロ神が、そこには確かに息づいていました。
魅力的なテレプシコーラを見つめる眼光、端正な姿、3人の女神を思いのままに操りながらもふと見せるどこか未知のものへの憧れのような表情・・・。

しょっぱなから魂を抜かれました。
バランシンの「アポロ」に新しい光を当ててみせるダンサー。
これが引退公演だなんて信じられない。あんまりです。


イレールではありませんが、(ジャン・ギーかしら?)「アポロ」の舞台写真を一葉。