maria-pon

お着物Enjoy生活からバレエ・オペラ・宝塚etcの観劇日記に...

東京バレエ団 「ラ・バヤデール」 ④

2009-09-28 01:20:48 | BALLET
第2幕。影の王国。



導入部、豪華なソファーに横たわり、苦悩ゆえに夜も眠れぬソロル。
マグダヴェーヤが心配して阿片を進めます。
まもなく眠りに落ちたソロルの夢の中では、ニキヤの白い姿が増幅し・・・。
25人のニキヤを演じるコールド・バレエがアラベスク・パンシェの角度から脚の高さまで
ピタッと揃っていて圧巻。
世界的にもここまで揃ったコールドは珍しいかも・・・。
一人ずつ登場したコールドが揃った瞬間しばし拍手が鳴り止まなかったのもわかります。

ニキヤの幻影から覚めやらぬソロルのもとに友人たちが迎えに来ました。
いよいよ結婚式です。



第4幕。
この大きな仏像の前に黄金の仏像が・・・。
暗めの照明にピカピカと映える金色にペイントした松下さん。
ジャンプの大きさよりも回転の素早さで魅せる戦略は彼には合っていたと思います。
テクニック自慢のソリストの見せ場。

ガムザッティとソロルがこの階段の上、大僧正の取り仕切りで夫婦の誓いをたてるのですが
ソロルの前に、彼だけに見えるニキヤの精霊が右から左から現れては横切って、
そのたびに翻弄されて追いかけてしまうソロルです。



ついに二人は(ソロルにとっては)偽りの結婚の誓いを立てるのですが、
事の成り行きに怒った神のイカヅチで、仏像が後に倒れ、天から瓦礫が降り注ぎます。
寺院崩壊。すべては瓦礫の下に封じ込められていくのです・・・



その中にあって、スッと立ち上がる二つの魂。
ニキヤとソロルの魂がここで出会い、そして結ばれる・・・
長く白いヴェールを使って、二人の絆が象徴的に示されるエンディングが美しい。

このプロダクションはセットと衣装が借り物、ということで、このままの再演は難しいのでしょうか?
得意な群舞の見せ場があり、ヒロインに求められる情感溢れる繊細さも含め
思いがけず(笑)日本のカンパニーにピッタリのこの作品。
是非、バレエ団のレパートリーとして、できれば衣装装置もこのバージョンで
再演もしていただきたいなと思いました






東京バレエ団 「ラ・バヤデール」 ③

2009-09-28 00:35:20 | BALLET
第一幕は盛りだくさん。



虎狩りから戻った勇者ソロル。
聖なるかがり火の前で一人静かに祈りたいと人払いをし、苦行僧マグダヴェーヤを呼ぶ。
ソロルが去った後大僧正が現れてマグダヴェーヤに祭りの準備を言いつける。
苦行僧の火の踊り。
寺院に仕える踊り子たちの登場。
白いヴェールをかぶった一際美しい踊り子がニキヤ。
パッと大僧正がそのヴェールを取ると世にも美しい顔が現れる。
踊り子達が苦行僧に水を運んでいる間に、脇にニキヤを呼び、愛を打ち明ける大僧正に
すかさず辞退するニキヤ。
彼女はマグダヴェーヤに水を与えるふりをしつつ、ソロルからの伝言を受け取る。
冷たいまでの美貌がその瞬間、恋する女の喜びに輝く様は吉岡さんが
ニキヤになりきっている様子が見て取れてこの日の舞台の今後の展開に期待を持たせます。
マグダヴェーヤの高橋竜太は切れの良い踊りに加え、表情が豊かで、この役の演者に多い
只、はいつくばって暗躍する苦行僧ではなく、若々しさと血の通った感情を加えていて
彼らしい味のある役作り。
皆が寺院の中に引き上げた後ソロルが現れます。
喜びのパ・ド・ドゥ。恋に酔うニキヤが美しく、ソロルと抱きあい、彼の頭に手を添えるその
ほっそりと長い指のしなやかな動きが暗い背景に映えてハッとさせられます。
もとから細い吉岡さんですが、この役では腹部が露わになった衣装ゆえ、あばら骨すら見える
絞りようにちょっと驚きますが、フォルムの美しさ、しなやかさは絶品。

木村さんはノーブルな役作り。
勇士、というよりも王子系?あっさりとしたお顔立ちに細身ゆえ、大きくVにくれたドルマンスリーブの衣装が
ちょっと上半身を寂しく見せていますが、ニキヤを思う気持ちは伝わる演技。
ただ、この幕、彼にはとても珍しいリフトの失敗(上手に処理していましたが)があったり、ソロにも
ちょっと精彩を欠いた感じ。
初役なので・・・2幕の最後のヴァリでは調子が戻っていた様子でしたので、今回
1日ずつしか踊るチャンスがないのがなんとも残念。
踊りこんでいけばもっと見せてくれるはず。



2場は宮廷シーン。
ソロルを讃え、王が娘との結婚を許す。
高岸さんのラジャはピッタリ!豪華絢爛黄金が煌く衣装にも決して負けない高岸さんの
濃さがインドの王様に嵌まっています。美しく成長した娘が自慢のどこか悠々とした雰囲気の漂うラジャ。
王の娘ガムザッティの田中さんは、すっきりとしたプロポーションに線の強いアジアン・ビューティで
こういう役どころに嵌まる容姿。


テクニックも強く、特にアティチュードで決めるポーズがピタッと止まる様は歌舞伎役者の見得さながらで
観ていて気持ちがいい。拍手も多かったです。
ただ、その後のニキヤとの対決シーンでは、懐柔策が上手くいかず、
ニキヤに逆襲された後の冷たさ、落ち着きっぷりがやや単調?
そのあたりの役の掘り下げについては今後に期待です。

吉岡さんのニキヤは楚々とした風情から、激情にかられて刃物を手にして振りかぶるところまでの
情念の爆発が自然。視線がちょっと定まらないくらい美しいガラス玉のような瞳のニキヤに
パセティックな秘めた情熱、というのは吉岡さんの資質に合っていて説得力がありました。

ニキヤを消さねば・・・と決心するガムザッティ。
先の宮廷シーンで、あのソロルは実は・・と注進に及んだ大僧正。
嫉妬ゆえライバルを陥れるつもりが、ラジャの出した結論は意に反してニキヤを消すこと。
父娘してコワイですね。

第3場は婚約式。
赤い衣装のニキヤは祝宴の踊りを踊る役目。
悲しみに沈む彼女は短調のメロディーでメランコリックな踊りを披露。
しきりに話しかけて微笑みかけるガムザッティに答えつつも眼はいつしかニキヤに吸い寄せられ・・
惑うソロル。
そこに召使アヤが花篭を持って耳打ちをします。
ソロルからの贈り物ですよ。
希望が胸に宿り、一転して喜びの踊りを踊り始めるニキヤが花の香りを吸い込もうと
カゴに顔を近づけた瞬間!毒蛇が!
解毒剤を!とことの次第に責任のある大僧正が薬を手に駆け寄りますが、サッと席を立つ
ガムザッティについていくソロルの眼は必死にすがるニキヤの視線と合いません。
絶望したニキヤは薬を拒否して息を引き取ります。

一幕にこれだけのコンテンツ!
スピーディな展開は現代向きかもしれませんが、パリ・オペラ座のヌレエフ版やロシアのバレエ団では
楽しめる、婚礼での壷の踊り、太鼓の踊り、そしてたっぷりと踊られるニキヤの花篭の踊りが
いっさい省略されているのはなんとも残念。
ロシアのバレエ団ならではのキャラクテールが爆発する太鼓の踊りはムリとしても、
ニキヤのソロはもっとたっぷりと観たい・・・です。