100年に一度のバレリーナ、シルヴィー・ギエムの、
インド古典舞踊の名手、アクラム・カーンとのコラボレーション
題して「聖なる怪物たち Sacred Monsters」日本公演初日、
2009年12月18日(金)19:00~東京文化会館に行って参りました。
ところで、わたくし、今年は何度この劇場に足を運んだことかしら・・・。
バレエにOPERA,過去のよきものはほとんど全てここで観ている気がします。
19時から、ということで普段なら会社帰りに予定するところですが、この演目は
休憩なしの75分間。遅刻したらもう入れない・・・というのに恐れをなして(^^;)、
会社を休んで駆けつけました。
それにしても。ギエムのツアーにしては弱冠日数が少ない(東京3日間)こともあってか
この日も大入。やはり人気に陰りはないのですね。
作品自体は実にナチュラルでチャーミングなもの。
舞台の上にはベージュ、しろ、グレー、墨黒、紺といったナチュラルカラーのTシャツとパンツ姿の
歌い手、パーカッショニスト、弦楽器奏者、などがゆるやかに囲む中で、
ベージュの地模様のようにタックの入ったコンパクトなTシャツに黒のワイドパンツのシルヴィーと
ナス紺かダークパープルを含んだようなチャコールのTシャツとパンツのアクラムが。
白とグレーで斜めに空間を切り裂いたような針生康の美術が、
ヨーヨーマのシルクロードプロジェクトのようなちょっとエスニックな無国籍風の音楽隊に
現代的なセンスを添えています。
冒頭、ベリーダンスのダンサーがつけているような鈴の音が、二人の動きにつれて聴こえるのは、
アクラムのアンクレットとシルヴィーが縄跳びの縄のように持っている、鈴の綱から・・・。
舞踊公演としては特異なことですが、台詞とともに進行する舞台。
シルヴィーのクラシックダンサーとしてのジレンマ、
そして、豊かな髪のクリシュナを演じるのに後退する髪の悩みと言う自らのジレンマを語るアクラム。
本質を踊るのに外見上の相似は必要ない、という結論を語る彼に向かってシルヴィーは言います。
"Akram, I think you are a beautiful bald Krishna."
テキストでみるとどうってことはないのですが、このbald(禿げ)にかすかに力をこめる
彼女の語り口は訥々とした中にユーモアを滲ませていて思わず笑いが。
アクラムの、低く落ち着いた、聞き取り易い英語と、
ちょっと神経質で、でもユーモアのあるシルヴィーの台詞。
それは、驚くほどスピーディで求心力のあるアクラム・カ-ンのダンスと、
巧みにコントロールされた、それでいて常人離れしたエクステンションを持つシルヴィーのダンスとの
実に興味深いハーモニーと対比をなぞっているようでもあり・・・。
シルヴィーのパート、アクラムのパートのそれぞれのソロ。
シルヴィーはアクラムのソロの間、舞台の後方で、一枚のタオルを首にかけ、もう一枚で腹部を覆い
汗をかいた身体を冷やさないようにしている模様。
ギエムが舞台前方でひじをついて寝そべり、少しずつポキポキと関節を空いているほうの手で折るような仕草で起き上がりながら、以下のダイアローグを語ります。
イタリア語を習おうと思ったとき、ミラノの本屋で「Peanuts」のイタリア語版を見つけ、
チャーリー・ブラウンの妹サリーに共感した話。
ここで、自分が英語のレッスンを受けていたクラスでサリーと呼ばれていた、という彼女に
アクラムが、自分はシュブーと呼ばれたと。
「美しい」という意味だよ。という彼に、ひと呼吸おいて、”Anyway"と自分の話を続けるシルヴィー。
ここも笑えました。
サリーがついさっきまで、スキップして人生を楽しんでいたのに次の瞬間、全てがむなしく感じる・・・という感じ、良くわかる・・・と。
そして「エマーヴェイユ」という感動を表すフランス語をアクラムに説明するために言葉を尽くす彼女。
クリスマスツリーに瞳を輝かせる小さな子、を引き合いに出すと、
アクラムは「ぼくはイスラム教徒だから・・・」わからない、と。
もういいわ、じゃぁ、踊りましょう、などとイタリア語でまくし立てるシルヴィー。
アクラムがわからないよ~と言っているのにマイペース。
最後の方で、シルヴィーがタオルの一枚をアクラムに投げて、彼がそれで汗をぬぐおうとすると
「あなたのためじゃないのよ、アクラム。すべるとあぶないから、ほら」と
自分は自分でタオルを足で動かして床掃除。
”It's not for you,Akram"の辺りはテキスト(基本の台詞は対訳付のテキストで
HPでも紹介され、日本語プリントが当日配布され、舞台には字幕がでました)にはなく
アドリブっぽかったのですが、場内では大うけ。
その割りに、二人で踊り始めると、アクラムが幹、シルヴィーはそこから伸びた枝のように、
脚を絡ませ、上体を自由に使って、双頭の生き物のように自在に踊ります。
何もかもがあまりに自然なので、それが如何にテクニック的に難しいことか
観ていて忘れてしまいそうになるほど・・・
全ての肉体的条件が対照的な二人ですが、東西のそれぞれ古典舞踊を共通言語として持つ
コラボレーションは意外なほど自然でスムース。
ずれているようで、ユーモアを湛えた穏やかな調和を見せるフレンドリーなコミュニケーションのあり方も含め、
へブンリーな幸福感を最後に残したパフォーマンスでした。
インド古典舞踊の名手、アクラム・カーンとのコラボレーション
題して「聖なる怪物たち Sacred Monsters」日本公演初日、
2009年12月18日(金)19:00~東京文化会館に行って参りました。
ところで、わたくし、今年は何度この劇場に足を運んだことかしら・・・。
バレエにOPERA,過去のよきものはほとんど全てここで観ている気がします。
19時から、ということで普段なら会社帰りに予定するところですが、この演目は
休憩なしの75分間。遅刻したらもう入れない・・・というのに恐れをなして(^^;)、
会社を休んで駆けつけました。
それにしても。ギエムのツアーにしては弱冠日数が少ない(東京3日間)こともあってか
この日も大入。やはり人気に陰りはないのですね。
作品自体は実にナチュラルでチャーミングなもの。
舞台の上にはベージュ、しろ、グレー、墨黒、紺といったナチュラルカラーのTシャツとパンツ姿の
歌い手、パーカッショニスト、弦楽器奏者、などがゆるやかに囲む中で、
ベージュの地模様のようにタックの入ったコンパクトなTシャツに黒のワイドパンツのシルヴィーと
ナス紺かダークパープルを含んだようなチャコールのTシャツとパンツのアクラムが。
白とグレーで斜めに空間を切り裂いたような針生康の美術が、
ヨーヨーマのシルクロードプロジェクトのようなちょっとエスニックな無国籍風の音楽隊に
現代的なセンスを添えています。
冒頭、ベリーダンスのダンサーがつけているような鈴の音が、二人の動きにつれて聴こえるのは、
アクラムのアンクレットとシルヴィーが縄跳びの縄のように持っている、鈴の綱から・・・。
舞踊公演としては特異なことですが、台詞とともに進行する舞台。
シルヴィーのクラシックダンサーとしてのジレンマ、
そして、豊かな髪のクリシュナを演じるのに後退する髪の悩みと言う自らのジレンマを語るアクラム。
本質を踊るのに外見上の相似は必要ない、という結論を語る彼に向かってシルヴィーは言います。
"Akram, I think you are a beautiful bald Krishna."
テキストでみるとどうってことはないのですが、このbald(禿げ)にかすかに力をこめる
彼女の語り口は訥々とした中にユーモアを滲ませていて思わず笑いが。
アクラムの、低く落ち着いた、聞き取り易い英語と、
ちょっと神経質で、でもユーモアのあるシルヴィーの台詞。
それは、驚くほどスピーディで求心力のあるアクラム・カ-ンのダンスと、
巧みにコントロールされた、それでいて常人離れしたエクステンションを持つシルヴィーのダンスとの
実に興味深いハーモニーと対比をなぞっているようでもあり・・・。
シルヴィーのパート、アクラムのパートのそれぞれのソロ。
シルヴィーはアクラムのソロの間、舞台の後方で、一枚のタオルを首にかけ、もう一枚で腹部を覆い
汗をかいた身体を冷やさないようにしている模様。
ギエムが舞台前方でひじをついて寝そべり、少しずつポキポキと関節を空いているほうの手で折るような仕草で起き上がりながら、以下のダイアローグを語ります。
イタリア語を習おうと思ったとき、ミラノの本屋で「Peanuts」のイタリア語版を見つけ、
チャーリー・ブラウンの妹サリーに共感した話。
ここで、自分が英語のレッスンを受けていたクラスでサリーと呼ばれていた、という彼女に
アクラムが、自分はシュブーと呼ばれたと。
「美しい」という意味だよ。という彼に、ひと呼吸おいて、”Anyway"と自分の話を続けるシルヴィー。
ここも笑えました。
サリーがついさっきまで、スキップして人生を楽しんでいたのに次の瞬間、全てがむなしく感じる・・・という感じ、良くわかる・・・と。
そして「エマーヴェイユ」という感動を表すフランス語をアクラムに説明するために言葉を尽くす彼女。
クリスマスツリーに瞳を輝かせる小さな子、を引き合いに出すと、
アクラムは「ぼくはイスラム教徒だから・・・」わからない、と。
もういいわ、じゃぁ、踊りましょう、などとイタリア語でまくし立てるシルヴィー。
アクラムがわからないよ~と言っているのにマイペース。
最後の方で、シルヴィーがタオルの一枚をアクラムに投げて、彼がそれで汗をぬぐおうとすると
「あなたのためじゃないのよ、アクラム。すべるとあぶないから、ほら」と
自分は自分でタオルを足で動かして床掃除。
”It's not for you,Akram"の辺りはテキスト(基本の台詞は対訳付のテキストで
HPでも紹介され、日本語プリントが当日配布され、舞台には字幕がでました)にはなく
アドリブっぽかったのですが、場内では大うけ。
その割りに、二人で踊り始めると、アクラムが幹、シルヴィーはそこから伸びた枝のように、
脚を絡ませ、上体を自由に使って、双頭の生き物のように自在に踊ります。
何もかもがあまりに自然なので、それが如何にテクニック的に難しいことか
観ていて忘れてしまいそうになるほど・・・
全ての肉体的条件が対照的な二人ですが、東西のそれぞれ古典舞踊を共通言語として持つ
コラボレーションは意外なほど自然でスムース。
ずれているようで、ユーモアを湛えた穏やかな調和を見せるフレンドリーなコミュニケーションのあり方も含め、
へブンリーな幸福感を最後に残したパフォーマンスでした。