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お着物Enjoy生活からバレエ・オペラ・宝塚etcの観劇日記に...

東京バレエ団「オネーギン」

2012-10-03 05:12:34 | BALLET
記事の順番からしますと、宝塚星組の公演が先なのですが、
直近の東京バレエ団にシュツットガルトのエヴァン・マッキ―を迎えて上演された
2012年9月28日19:00、の初日の
「オネーギン」について、残しておこうと思います。

東京バレエ団
「オネーギン」(全3幕)

ジョン・クランコによる全3幕のバレエ
アレクサンドル・プーシキンの韻文小説に基づく


振付:ジョン・クランコ
音楽:ピョートル・I.チャイコフスキー
編曲:クルト=ハインツ・シュトルツェ
装置・衣裳:ユルゲン・ローゼ
振付指導:リード・アンダーソン、ジェーン・ボーン
コピーライト:ディーター・グラーフェ
世界初演:1965年4月13日、シュツットガルト
改訂版初演:1967年10月27日、シュツットガルト


◆主な配役◆

オネーギン:エヴァン・マッキー

レンスキー:アレクサンドル・ザイツェフ

ラーリナ夫人:矢島まい

タチヤーナ:吉岡美佳

オリガ:小出領子

乳母:坂井直子

グレーミン公爵:高岸直樹

親類、田舎の人々、サンクトペテルブルクの貴族たち:
チャイコフスキー記念東京バレエ団


指揮: ワレリー・オブジャニコフ
演奏: 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団


"Onegin" is produced in association with The Australian Ballet (props and costumes) and Royal Swedish Ballet (scenery)
Costumes manufactured by the Production Division of The Australian Ballet
Properties manufactured by Showworks, Melbourne
Properties painted by Scenic Studios, Melbourne


◆上演時間◆

【第1幕】 19:00 ― 19:45  休憩 20分
【第2幕】 20:05 ― 20:30  休憩 20分
【第3幕】 20:50 ― 21:15

「オネーギン」は過去にルグリの忘れえぬ名演を始め、東バの2大プリンシパル、高岸直樹さんと、
今回もヒロインを務める吉岡美佳さんとの共演も観ていますし、ガラ公演での、ルグリとアイシュバルト、ルグリとモニク・ルディエールの素晴らしい手紙のPDDなど、傲岸不遜を承知で言えば、この作品としてはすでに望むべく配役では観つくしているような気がしておりましたが、今回の上演もまた、非常に味わい深く、この作品の奥行きの深さを感じさせてくれるものでした。


2010年に東京バレエ団での初演を見たとき同様に、
セピア色の紗幕に繊細な月桂樹の葉でリース状に囲まれた「ONEGIN」の金の紋章が。
東京バレエ団の「オネーギン」は、舞台美術、衣装の全てをシュツットガルトから借り受けているので、
ユルゲン・ローゼの繊細で趣味の良いそれらに彩られての意識の高い演技をストレスなく観ることが出来るのです。

<第一幕>



吉岡さんの、夢見がちな文学少女、長女タチアナが舞台上手で空想の世界に浸っています。
下手では、、陽気な妹オリガと母ラーリナ夫人、乳母が楽しげにタチアナの名前の日のお祝に向けての晴れ着の準備をしています。

地方貴族の一家に、村の友人たちが訪れて、男女の群舞。
松下さんや乾さん、田中さんら東バのプリンシパル、ソリストクラスがここで踊っているのを探して観るのが楽しい。
オリガの婚約者レンスキーも登場。
今回、バレフェスで活躍したマリイン・ラドメーカーが急病で降版。
会場の告知によると、9月上旬より高熱が下がらず、9月末のこの公演への出演にドクターストップがかかったとのこと。
長身で甘い風貌の金髪のラドメーカーは詩人レンスキーにぴったりで黒髪のエヴァンとの並びはさぞかしきれいだっただろうと観られないのが残念でしたが、代役のアレクサンドル・ザイツェフは誠実そうな栗色の髪のバネの効いたしなやかな中肉中背のダンサーで、コントロールの行き届いた踊りと演技でレンスキーの焦燥と苦悩を過不足なく演じてくれました。

小柄で丸顔ながら 均整のとれたプロポーションで繊細な手脚を持つ小出さんはオリガにぴったり。
ただ、母になられて落ち着きも風格も増した彼女は、妹や娘役だけでなく、これからはもっとヒロインを堂々と演じていただいても良いのでは、とふと思わせる瞬間が何度かありました。

全体にベージュや若草色を重ねた衣装の地元組とは一線を画す、黒いスーツをリュウと着こなすオネーギン登場。都会から来た、レンスキーの友人です。
190cmの長身で周囲を見下すような微笑みを湛えたエヴァン・マッキ―。タチアナをエスコートして散歩しますが、明らかに彼女には興味を持っている様子はありません。一方タチアナはドラマチックでニヒルな風貌の彼にすっかり心を奪われてしまいます。



場面変わって、タチアナの寝室。
日中のそぞろ歩きを振りかえり、熱心に恋文を推敲するタチアナ。もう寝なさい。はぁい。
でもまた起きだして、手紙の続きを・・・。大きな姿見を覗くと田中さん。いえ、タチアナの影が。
また覗きこむと、そこからオネーギンが飛び出してきて、彼女を翻弄するように踊ります。
思春期の少女の異性への憧れ、目覚めがもたらした幻影・・・なのですが、190cmの長身、どこまでも長い四肢を持つエヴァンが167cmの吉岡さんをリフトして彼女が長い脚を伸ばした状態で大きく回転させる振りのダイナミズムはまさに未体験ZONE。
さすがはオペラ座で共演したオレリー・デュポンが「自由の女神像になったみたい」だったと言及したと言われるマッキーリフト。いやいや、観ごたえがありました!

<第2幕>



翌日はタチアナのための舞踏会。
刺繍を施した晴れ着を着た娘達、若者たち、御老人たち・・・客人が揃い、老若男女が入り混じって親しく踊ります。
そこに登場のオネーギン。田舎の舞踏会か、退屈そのものだな。
話しかけようとする御老人たち(高橋竜太さんを確認。演技が上手くてさすがです)
あからさまに無礼な彼に御老人たち憤慨。
タチアナがお読みいただけましたか?とそっと訪れると、苛立ちを隠すこともなく、手紙を取り出し付き返し、驚き拒むタチアナの背後に回って、彼女の手に破った手紙を押しつける。
傷心のタチアナにラーリナ夫人が従兄のグレーミン公爵を紹介。心ここにあらずの彼女に、明らかに興味を示す(高岸さんの大きな眼がギョロっと・・・^^;)公爵。
退屈しのぎにオリガを誘って踊るオネーギン。
都会から来たイケメンのお誘いに気分が高揚。快活に踊るオリガ。レンスキーが、もういいだろう、とオリガを取り戻そうとすると、却ってオネーギンの悪ふざけはエスカレート。時々心配そうにレンスキーの方を向くけれども、誘われると断れない彼女。一緒になって自分の婚約者を嬲ることになるオリガ。
公爵と静かに踊るタチアナもその様子に気づいて、なにやっているの、ほら、とオリガをたしなめるが、時すでに遅し。
決闘だ!お祝の舞踏会が暗転・・・。

ショールを頭巾のように纏った姉妹がレンスキーを引きとめようとするが彼の決意は固く・・・。
月光の下、哀嘆のソロ。
そして決闘・・・。
嘆くオリガ。オネーギンに向けて、見せたことのない強さで非難のまなざしを向ける憤怒のタチアナ・・・。
それぞれの演者の芝居心が素晴らしく、固唾をのんで見守る2幕、でした。

<第3幕>



この幕開きのグレーミン公爵邸@サンクトぺテルブルクの舞踏会が美しいのですよね・・・。
青年士官と令嬢たちの群舞で始まりますが、女性が全て、センターパーツの耳隠しのシニヨンにして、極々淡いグレー、ベージュ、ピンクのドレスでなんとも優雅。
続いて、すっかり落ち着いた、でも女ざかりの艶やかさをオーラとして振りまく麗しい貴婦人に成長した赤いドレスのタチアナと、屋敷の主人 威厳に満ちたグレーミン公爵がセンターで踊ります。
客人の若者たちが、その互いの愛情と尊敬に満ちた美しい大人のカップルのダンスを憧れ目線でうち眺めるの図。
この、2人のダンスが、なんとも美しく・・。
以前、オネーギンを高岸さん、タチアナを吉岡さんが踊った時にも思ったのですが、この2人の並びは、お互いの美質を引き立て合って2人の美男美女度が素晴らしくUPする組み合わせだと、この時にしみじみと感じ入りました。
饒舌なくっきりとした陽性の持ち味の高岸さんが太陽だとすると、透明感のある美貌の吉岡さんはさながら月。
定番の高岸さん&斎藤友佳理さんですと、情緒的で量感のある肉体性を纏うリアリズムな演技が持ち味の斎藤さんとの組み合わせは相乗効果で重たく思え、吉岡さん&木村和夫さんとですと、情熱的ながら端正な踊りと薄口の容姿の木村さんとクールビューティ―の吉岡さんは互いに線が細く押し出しが弱く見えてしまう・・・と常々残念に思っていたので、大ベテランになられた今、こうして東京バレエ団の主役級として団を牽引してきたお二人が正しい組み合わせ(わたくし的に^^;)で輝いているのを見ると、なんとも胸が熱く・・・・。
ちょっと嬉しい場面でした。
この様子を観て動揺しているのが、10年後のオネーギン。
なんと美しい女性だろうか・・・ハッ、あれは自分が手ひどく振ったあの田舎の少女・・・。
親友を決闘で自ら屠ふり、依然として世の中を見下しながら厭世的な態度で過ごした彼も、口髭を蓄え、髪には白いものが混じる年頃に。



場面変わってその日の夜。
タチアナが自室で、手紙を読み、動揺しています。
お衣装が、若奥様らしい落ち着いた光沢のあるブラウンの長袖ですが、デコルテが大きく開いて、両肩先が出ているデザイン。その肩口に沿って、サーモンピンクのレースがあしらわれて、顔映りを明るくしています。このレースはペチコートにも使われていて、リフトの時に効果的だったりも^^。
オネーギンが過去を悔いて求愛している。
そこへグレーミン公が、急な出立を告げに来ます。行かないで下さい、あなた。どうしたのですか、留守を頼みましたよ。
と、多分、お互いに敬語で話しているであろう距離感の御夫婦です^^。
不安の内容を口にすることも出来ず、1人にして欲しくないと思えども、貞淑な妻らしく、見送るタチアナ。

すぐに、舞台上手から走りこんでの登場、オネーギンです。
気持ちはおわかりいただけましたね。いいえ、いけません・・・とくると昼ドラみたいですが^^;
ここでチャイコフスキーの心震わす音楽と、感情の高まりをダイナミックでスピーディなリフトの連続で魅せるジョン・クランコの振付が合わさると、なんとも、ドラマチックな場面に。
綾なす感情の渦が視覚化されて圧巻です。
恋慕の情をあらわにするオネーギンのすがるような情熱と、それに引きずられそうになりながらも自分を見失わないように勇気をふりしぼるタチアナの強い心の葛藤が、膝まづいて彼女の後ろ手を取り、懇願するポーズと瞬間前に出て彼女をリフトする繰り返しの中、少女の頃の恋慕が思い起こされてか、彼の情熱にほだされてか、ふと、それに応えてしまいそうになる、その感情が高まる一瞬を表す象徴的なリフトがあるのですが・・・。
横たわったタチアナの手を取り、一瞬のうちに引き起こして、大きくジャンプした空中姿勢でタチアナがアラベスクのポーズをとる、という、とてつもなくハードな第3幕の後半ピークの振りで、過去見た、アイシュバルト、ルディエールはそれはそれは高く、きれいにそのポーズを決めていらしたのですが・・・。
感じましたよ、その手を取った瞬間のエヴァンの気合を。
ただ、吉岡さんは体力絶倫タイプではないので、そこが、ちょっと限界だったのでしょうか、リフトがあまり高さとなって現れなかったこと、第一幕、寝室のPDDでのあのダイナミズムを長身のふたりでまた・・・と期待してしまったこともあり、大健闘の2人のほんの小さな瑕疵ですが、感じてしまいました。
崩れそうになる自分と闘い、強さを掻き集めて、心を決め、手紙を突き付け、それを破り、やめてくださいとの哀願もなんのその、彼の手に、そう、あの日されたのと同じように冷酷に、握らせ、後ろ手で出口を指し示す。
彼女の決意を知り、傷心と絶望を胸に走り去るオネーギン。
彼を一顧だにせず、でも、1人になったことを確信して、初めて部屋の真ん中で手で顔を多い、肩を震わせるタチアナ・・・。

幕。

本当に素晴らしい作品だと思います。
役者も揃って、演技・配役的にも観ごたえがありました。
レンスキーはザイツェフでも不足はありませんでしたが、金髪のラドメーカーでの華やかさもちょっと観てみたかったかな、と。またの機会を期待したいです






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4 コメント

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Unknown (まみさん)
2012-10-05 01:28:14
エヴァン・マッキー氏のインタビュー映像を見ました。そこにいるだけで素敵な青年ですね。ほれぼれしました。タチヤナは吉岡美佳ちゃんだったのですね。直接知り合いではないのに友達よばわりです。同郷で同学年なので、ついそういう気持ちになってしまいます。遠くからいつも応援しています。タチヤナは美佳ちゃんの雰囲気にぴったりですね。同じ美佳ちゃんでも、ワタシの姉もバレエをやっていて、オネーギン全幕を地元で踊ったことがあるのですが、本人がどういう人物かよく知っているので、どんなにしおらしい踊りをしてもどうしてもタチヤナとして観ることができませんでした。プーシキンの原作をわたしも読みましたが、エウゲーニイの印象は、最初から最後まで嫌な感じのする人でした。バレエだけを観ていると、主役の男性は皆かっこいいので、観ている方たちもそういう嫌な印象はあまりないのかな、と思いました。
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Unknown (maria)
2012-10-05 06:58:13
まみさん、おはようございます{笑}

なんと!吉岡さんとそのようなご縁がおありとは・・・!
わたくし、もともと日本人バレエダンサーとしては2,3位を争うくらいに好きなバレリーナさんなのですが(1位は吉田都さん)、まみさんとのご縁を伺ってますます応援したくなりました^^
浮世離れした透明感とリリシズム、役柄によってほのみせるパッションや異界感が魅力的なのですよね・・・。
リアルな演技のきれいなバレリーナはたくさんいますが、彼女にしかない味をたくさん持っている吉岡さんは、海外ダンサーも含めて、似たような人が思い浮かばない、貴重な個性を持った方だと思います。

そして、お姉さま、オネーギン全幕を踊られるとは、少なくともプリンシパル級のテクニックをお持ちでなくてはできない難易度なので、プロフェッショナルなダンサーとして活躍されていた(る?)方なのでしょうか・・・
羨ましい限りです{キラリ}

エヴァン、すてきな青年ですよね。
1、2幕の彼は本当に嫌な奴(笑)でしたが、田舎の青年とは別次元のスマートさで、夢見るタチアナが惹かれてしまうのもむべなるかな。。。という説得力に溢れていました(笑)
彼のバックグラウンドは芸術一家で、彼自身早熟なお子さんで、小学生のときに「オネーギン」を観て、古典バレエをは違うドラマをバレエという芸術様式があますところなく表出しているのに感動してバレエダンサーを目指すことにした、という談話がありましたが・・・・^^;
早熟にも程がありますよね~^^;
実際、ダンサーとしても恵まれた資質を存分に見せてくれていますが、「ダンス・マガジン」にバレフェスのレポを記稿したり、振付にも挑戦したり、とその才能を様々な分野で開花されているご様子です。
本人のHPも観てみましたが写真(を撮ること)にも興味がおありのようですね。
今後も眼が離せないダンサーとしてチェックしました{止まるひよこ}


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Unknown (まみさん)
2012-10-06 00:36:36
こんにちは。第3幕のレポートも楽しみです。エヴァンくん(すでにもう「くん」よばわり笑)の写真も見てみました。かっこいいですね。フランクフルトバレエのポスターみたいなのもありましたね。女子のみなさんがクラシックボンをはいてるお稽古中のが好みです。もうひとつバレエでのエピソードがあって、地元のバレエ教室が高岸直樹さんを呼んでジェームズを踊ってもらった時、私は彼の楽屋でお衣装のはずれやすいところを縫う役目でした。ポシェットがぼろっぼろだったのでついでに繕ってあげたのですが、団では自己申告しないと直してもらえないのでしょうか。もしかしたら、今でも私が縫ったまんまかもしれません笑。高岸さん、ワタシが必死で仕事してるあいだじゅう、鏡の前でずっと、いろんな角度でかっこいいポーズ(あの、アゴに手をやっているような)をとってご自分のかっこよさを確認していました。とにかくオモシロオーラのある方でした。
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Unknown (maria-pon)
2012-10-06 06:27:57
まみさん

なんと!貴重なお話をありがとうございました!
あの高岸さんが・・・と想像すると、あまりにもイメージどおりで・・・{笑}

まみさんがつくろって差し上げていらしたポシェットは、キルトを押さえるスポ―ランですね^^
東バのお衣装部さん、そこまで目が行き届かなかったのでしょうか。

高岸さん、日本人離れしているのは容姿だけでなく、ホントに素が関西人で(たしかご出身は京都)
デマチのファンにも気さくに色々とお話してくださっていますよね。
なんとも明るい独特なオーラをお持ちで、東バの白鳥のロットバルトのお衣装が、胸に白鳥のアップリケのついた、バレエファンには微妙に不評?なものなのですが、宮廷の舞踏会にオディールをエスコートして登場するときに、高岸さんが したり顔で胸に一物、、、のワルイ顔でそれを着ているお姿が妙にハマるので、他の方にこのお役を譲るまでは、このお衣装でお願いしたいと、密かに思っております^^;
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